#19未来へ繋ぐ
連投になります。
お楽しみ下さい┏●
不気味な音を響かせ海の底から、奴らが姿を表した。
恐怖を感じる牙、鋭い爪、異形の証である緑の体色と水掻きが付いた四肢。
武器を持たず、ヨダレを垂らしながら口を曲げて、戦士達を睨んでいる。
「怯むことは無い!我らが勝者なのだ!!」
1番体が大きく、戦神の訓練に真剣に取り組んで居た男が叫ぶと、戦士達は武器を掲げ戦闘態勢をとる。
「オマエタチ、タダノショクリョウ。ワレワレニ、クワレル。」
肺呼吸が完璧になっていても、所詮は海の底の生物。言葉は流暢では無い。
「ショクリョウ、ラシク、タダ、クワレロ。」
ジャバジャバと海水を蹴り、ジッと戦士達を見ながら浜辺へと、足を付けた。
「行くぞぉーーー!!」
「コロシテ、タベロ!!!」
両陣営の距離は一瞬で埋まった。
1体に5人程で攻撃し、確実に仕留めようとする人間達。
数の差など関係ないと、目に付く人間の喉を爪で切り裂く奴ら。
浜辺は所々赤く染まり、もの言わぬ者が砂浜に倒れた。
「始まったな。仕上がりはどうなんだ?」
「オレは訓練しただけだ。アイツら次第だな。」
噴水を覗きながら聞くと、サキは冷たい言葉を放った。
まさか、天界に帰って来て数日後に戦争が起こるなんて誰にも予想はつかなかった。
「数では勝っていますが、身体能力が違いすぎますね。」
「やっぱそうだよなぁ。俺達は見ているだけなのがもどかしい・・・」
「アタシは見てるだけで十分だわ。奴らの事なんて知りたくもないし。」
「ヨウコは戦争が終わったら、行きたいな〜。戦士って戦いの後にシたくなるって、ミサキの本に書いてあったから〜。」
ミサキの本は燃やすべきだな。
ヨウコは・・・縛り付けとくか。あいつを降ろすと戦士達が死にかね無いな。
激化する戦争の中、徐々に攻撃が通じなくなっていた。
剣を振るえば折れ、槍は砕け、弓は弾かれた。
「何故だ!我々の武器が通じないだと!?」
「ワレラ、ウミノタミ、タイヨウ、カタクナル。」
奴らが住む海の底には尖った岩や、狭い場所があり、それらを避けるべく海水を皮膚の下に染み渡らせ柔軟な体になっていた。
それが太陽の光によって蒸発して、水分が抜けて硬い鎧のような皮膚に変わった。
「ワレラ、マケナイ。オマエラ、クウ。」
戦士達の奮闘により、数える程しか残っていないが、ここからは苦戦を強いられるだろう。
日が傾き夕暮れに差し掛かった時、その人が叫んだ。
「こんな時に戦神様が居てくれたら!!」
「んだこれ?」
サキの体が光り始め、ゆっくりと噴水の中に近づいて行った。
「ちょっ!あれ?主様、助けてくれ!」
「どうなってるんだ?リン、原因は!?」
「祈りです。あの者が叫んだ言葉は、死を覚悟して最後の願いを込めた、言霊になって天界に届いたんです。」
「つまりは?」
「サキさんが呼ばれた。そう解釈するしかないでしょう。」
え〜と・・・何とかしなきゃって事だな。
取り敢えず時間を止めて・・・
「お?元に戻ったぜ!」
「取り敢えず、奴らをどうにかする方法を考えよう。降りるのはそれからだ。ミサキ、何か手は無いか?」
全員でミサキを見ると、何も無い所から1冊の本を出した。
ページをパラパラして顔を上げる。
「奴らに海水を含ませて、丸焼きが最適だと。」
真剣な顔のミサキって・・・少しウケるな。
あっ。涙目でこっち見た。
「ふやかしてから丸焼きにして、ついでに中まで火を通したら良いんですっ!!」
半ギレだよ・・・俺の事睨んでるし。
後でフォローしないとな・・・
「よっしゃ〜!オレが戦争を終わらせてくるぜ!」
そう言うと人形を取り出し、魂を入れて、噴水に飛び込んだ。
「あったま痛てぇ!まずは奴らを移動させて・・・海に付けとくか。」
手際よく奴らを海まで運び、
「ミサキー!火はどうしたらいいんだー?」
この前のように神を下界に降ろした後、指示や会話が出来ないと不便だと言う意見によって、噴水の横に黒電話を設置していた。
この電話には受話器しか付いてなく、話したい存在を念じるだけで下界に言葉を届けられるようにした。
ミサキは受話器を取り、
「神には、火、水、風、土、を操る事が出来るそうなの〜。だから、奴らが浜辺に来たら周りを囲んで電子レンジみたいにすれば良いよ〜。」
操る事はリンから、電子レンジ等の概念は俺の記憶からだ。
俺が思い出せない事まで、事細かに抜き出したらしい。
「分かったぜ!さっさと済ませて帰るからよ、時間を進めてくれねぇかー?」
俺はボタンを押して、時間の流れを戻した。
「ドウユウコトダ?ワレワレ、ウミニイル。」
「あの方だ!来てくださったぞー!!」
「アノカタ?オマエダレダ?エサカ?」
「かかってこいよ?薄汚ぇ魚。」
「オマエ、エサ。ゼンイン、ヤレ!」
奴らが走りながらサキに向かってくる。
それより早く、サキは最後の1体が海から出た瞬間、奴らを火で囲んだ。
「ナンダコレ?ワレラ、ツヨクナル。」
「戦神様。恐れながら、奴らに火は効きませんが・・・」
「黙って見とけよ?」
サキが手を動かすと、火の輪は狭くなっていき、奴らの皮膚を焦がしていく。
「アツイ!ワレラ、カタイハズ!」
「オサ!ニゲテ、オサ、ダケデモ!」
「焦げろ。そんで絶滅しろ。」
サキの言葉に反応するように、火の勢いは強くなり、輪が小さくなって奴らの姿は無くなった。
「さすがは戦神様だ。俺達の勝利だー!」
「「「「「うぉーーーーー!!」」」」」
「良くやったサキ。」
やる事やって、帰ってきたサキの頭を撫でてやった。
首に痛みが走ったと思ったら、目の前が暗くなって、いい匂いがした。
「もうちょっと普通の挨拶にしてくれよ。ワタシだって・・・その・・・」
諦めて目を閉じていると、唇に変な感触がした。
目を開けると、真っ赤な顔の戦神。もとい、照れた可愛いヴァルキリーが居た。
「あーー!ヨウコもしたいのに〜!」
「唇の感触は知らなかったなぁ・・・アタシもした〜い。」
「創造神様の唇は私が管理します。」
「ワタシのだ!主様の全部、アタシのだ!」
ふむ・・・サキには少し思い込みが激しい部分がありそうだ。
俺の腕を離そうとしないで痛いくらいだ。
変な方向に曲がってるし・・・
あっ・・・抱きついてきた。
身体の中でボキッて音がした。肋骨・・・逝ったな・・・
息・・・吸えないし・・・ヒューヒュー音がする・・・
「あっ・・・主様の心臓、止まっちまった。」
取り敢えず、起きてから考えるか。
今は寝か・・・せて・・・く・・・れ・・・




