安藤
暗い病院の廊下。
這い寄る2つの影
「こちらα目的地に着いた。βと一緒だ」
ここ''日本''ではもう聞きなれた英語で喋っている
「こちらβ対象を確認」
906[空室]と書かれた部屋の前に立ちドアに耳を当てるαと名乗る男。
「警備が微妙だったな、俺ら相手に舐めてんのか」
「バカ。俺らが来るなんて誰も予想しないだろ」
軽口を叩いて怒られているβと名乗る男。
2人とも黒い特殊任務用の装備を纏っている
「扉開けるぞ」
「まてβ、呼吸音が全く聞こえない。偽の部屋で開けたら爆発とかもありえる」
「そんなわけねぇだろ爆弾とか一般人もいる病院で使うはずない」
『それはどうかな?』
2人は即座に扉から離れ声の主を囲んだ
「日本語?病院関係者か?」
「いや、あの暗闇からでも分かる暴力の匂い。同職者」
『ご名答、俺は安藤。そういえばわかるかな?』
「っ…」
2人組の顔に苦痛が浮かぶ
名前に対してなのか、それともいつの間にか漂う毒に対してなのか
「こ、こちらα───」
安藤と名乗る男が上段蹴りでαの首をへし折った
βがその隙にと走り出すが地面へと顔を付ける
『冥土の土産に持ってけ、俺の得意な毒だ。閻魔様に安藤毒永にやられましたってな』
「…」
βは眠るように目を閉じた
『はぁ…寝たふりすんな』
安藤がナイフを投げた
その先、のβは転がり避けた
「わかってたか。」
『俺の毒は特殊でなぁ、αみたいに首がへし曲がるんでな』
「お前が蹴ったんだろ」
スっとナイフが空を切る
安藤はナイフの軌道を読んでるかのように最小限の動きで避ける
『さっきから思ってたけど[ゴリアテ]に居た下っ端君のケルロ・スイダーだよな?』
「なぜ、」
お前の全てを知っていると余裕の安藤
『なぜ?そりゃゴリアテ外されたあとうちの特殊条件殲滅隊みたいなところに来たじゃんか』
「、俺の毒耐性とナイフさばきでわかったってのか」
『いや、東さんが全部書いてた。こうなると思ってね』
「そうか…ローンウルフ相手だったな」
『お仲間さんは死んでるがお前はどうする。昔のよしみで逃がしてやってもいいが』
「知ってるぜ。あんた敵が情けをかけた敵はみんな行方不明になって後日死体で見つかるってな。」
『そりゃ敵さん情報だろ?俺はそんなやつじゃない』
「そうか、」
『それに事情があるんだろ。』
「ッ…」
『αは孤児で独身。お前は違う、養う家族が居るだろ』
「そうだよ…それに息子が死にかけてるんだ。」
『今回の報酬金でいい医療ってか。』
「親はこの為なら悪魔にでも魂を売るもんだろ」
『東さんも娘さんが3人居る。俺にも息子がいる。』
「ッ!!」
『だから分かるさ、』
「俺はここで殺してくれてもいい。ただ家族の安全を頼む」
『あーその話だがな、マスコミに明日あの有名な探偵東一狼入院中に何者かに襲われ死亡ってやる予定なんだな。だからそこは空室』
「そうか…全部あの人の流れに沿って」
『いや、お前らの最初の襲撃は予想外というか最悪ケースで考えたみたいだな』
「俺はどうすればいい」
『向こうに戻って暗殺しましたって言って無事に生還できるなら行けばいい。無理ならここで相打ちって事にしとく。その襲撃者は駆けつけた警備隊に処刑されたってな』
「なぁ、安藤さんや…日本で俺の別人としての国籍作れるか?家族は実は日本に居るから俺も任務が終わったらここで過ごす予定だったんだ」
『あぁ、安心しろ全て根回ししてある』
「あと、安藤さん…俺の…俺の話聞いてくれまずが…」
βいや、ケルロは泣き始めた
『あぁ、このお前さんの元仲間を処分したら飲みに行こうや、朝まで帰らせんぞ』
「ほんとすいません…」
安藤は失業して実家に帰ってきた息子を見るかのような目で彼を見ていた
次の日の2人は安藤家でニュースを見ていた
『昨日の夜22時頃N市立病院で入院中だった東探偵事務所の社長東一狼さんが殺害されました。実行犯2人は駆けつけた警備ロボに処刑されたとの事です。また所持物などから個人的な犯行なのか組織的な犯行なのかを調べています』
「スレイブ、テレビオフ」
安藤の声に全自動家事システムが反応してテレビが切れた
「安藤さん仕事早いっすね」
「まぁなしっかしお前があんな綺麗な嫁さん貰うとはな」
「えへへ、俺のかっこよさですかね」
「チャラいだけだろ」
2人は安藤の部屋でまだ呑んでいた
この業界は昨日の敵は今日の友。
親を殺した相手とでも組むことがある。
安藤は部隊を抜けた後にもそんな事があるのかと余韻に浸っていた