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緑の王さま異世界漫遊記  作者: 太地 文
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50、帝国の進軍と勇者の噂

評価、ブックマークをありがとうございます。(❀ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾

「51話 我がまま姫と囮」は火曜日に投稿予定です。

楽しんでいただけましたら幸いです。



「転移の魔道具だぁ?」

 翌朝、改めてマリオとリョクは此処に来た目的を伝える。

そんな2人にガンズは呆れ返った視線を向けた。

「さっさと言やぁ良かったじゃねぇか」

「いろいろ取り込み中でしたから」

「それを言われちゃ返す言葉もねぇ」


「我が王っ」

 ガリガリと頭を掻くガンズだったが、突然姿を見せたイツキに驚きの目を向ける。

「帝国軍がエルフ国に向かい進軍を開始しましたっ」

 深淵の森を挟んではいるが帝国とエルフ国の距離は近い。

急げば一日で国境に辿り着いてしまうだろう。


「チッ、ついに動きやがったか」

 忌々し気にリョクが呟く横で、どういうこったとガンズが聞いてくる。

「それが…」

 命の実を巡る帝国とエルフ国の関係についてマリオが説明すると。

「そんな事になっていやがったのかっ。分かったっ」

 大きく頷くとガンズは身を乗り出して聞いてくる。

「で、いつ出発するんだ?」

 その顔は隠しようもない期待に溢れている。


「…えっと、まさか」

「一緒に行く気かっ!?」

「あたぼうよっ、此処で大人しく…」

「していて下さいね。これからダークキング酒造は品薄対策で大変なんですから」

 ニッコリ微笑むアレッサだが、その背後にはっきりと怒りの業火が見える。


「だ、だがよ」

「よろしいですね」

「…はい」

 身を縮めて返事をするガンズに、満足げにアレッサが頷く。

「お話が終わりましたらすぐに事務所に来てください。今後の配達先と量を決めないといけませんから」

「分かった。…すまんな」

 出荷量が減った苦情はすべてアレッサが受け持つのだ。


しかしそのことをおくびにも出さず、テキパキと事を進める彼女は実に頼もしい。

「お気になさらず。その分、美味しいお酒を造って下さればいいんです。親方が造るお酒は私の生きがいですから」

 そう言えばあの酒宴で彼女だけが潰れなかったなと、その酒豪ぶりを思い出す。


離れて行く彼女の背を見送ってからガンズはマリオ達に向き直った。

「んっで、どの程度の奴が必要なんだ?」

「どんなものがあるんです?」

 逆に聞き返して来たマリオに、そうさなとガンズが考え込む。

「転移の魔道具は起動は内臓された魔石を使うが、移動に使われるのは使用者が持つ魔力だ。なんで魔力の少ない奴が使うと最悪死んじまうこともある」

「ま、その点は大丈夫だぜ。なんせ使うのは俺かマリオだ」

 リョクの言葉通り、王である2人は魔力の枯渇とは無縁だ。


「後は移動距離と人数だな。最大で大陸の端から端まで、一度に運べるのは五百人ってとこか」

「そんなにっ?」

 驚くマリオに、おうとガンズが自慢げに言葉を継ぐ。

「まあ、さっきも言ったように使いこなせる魔力がなけりゃ宝の持ち腐れだがな。んで俺の手持ちはこの3つだ」

 そう言うとガンズは何もない空間に手を突っ込んで魔道具を取り出す。

「空間魔法…さすがは闇の王さまですね」

 感心するマリオに、まあなと少しばかり得意げに頷いてからガンズは手にした物を台に並べる。

それは懐中時計によく似た形で金、銀、銅色をした魔道具だった。


「こいつがそうなのか?どうやって使うんだ?」

 興味深げなリョクの前でガンズが金色の魔道具を手に説明してくれた。

「まず脇の突起を押す。するとな」

 魔道具の上の空間に2つの大陸が並んだ大雑把な地図が現われる。

「でっ、こうして行きたい座標を決めるんだ」

 指先を地図の上に走らせれば、そこが拡大され表示が詳細になる。

「…もしかしてこれの開発にカトウさんが加わってます?」

 某社の地図ナビに様式が似てるので聞いてみたら、おうとガンズが大きく頷く。


「良く分かったな。なんでもカトウの故郷にあるものを参考にしたんだってよ」

 納得のした様子のマリオに、でなっとガンズが説明を続ける。

「座標が決まったらこの真ん中にある丸いヤツを押す。そうすりゃあっと言う間に目的地に到着だ」

「便利ですね」

「まったくだ。だが扱いにはくれぐれも注意しろよ。座標をちっとでも間違えばとんでもねぇところに飛ばされるうえに使われる魔力も半端ねぇからな。王と言えどしばらくは動けねぇくらいは覚悟しとけ」

「分かりました」

 ガンズの注意に頷くとマリオはリョクを見やった。


「どれを借りてゆく?」

「そりゃ一番いい奴に決まってんだろ。力を出し惜しみして良いことなんざ一つもねぇからな」

 明快な答えに笑みと共に頷くとマリオはガンズに向き直る。

「場合によってはエルフ達を避難させないといけないので高機能なのをお願いします」

「ならこいつを持ってけ。あらゆる場所に導くと言われている魔道具・黄金の羅針盤だ」

 差し出された金色の魔道具をマリオがしっかりと受け取る。


「ありがとうございます。大切に使わせてもらいますね」

「おう、頑張れよ」

「何かあったら影に向かって僕の名を呼ぶといい。そうすればガンズだけでなく水や土の王にも連絡を取ってあげられるから」

 ガンズの影から姿を現した闇の精霊王がそう言ってマリオ達にウィンクを投げる。


「いざとなったらゼムもカリーネも協力は惜しまないってさ」

 どうやら2人に会いに行って話を通してくれたらしい。

「わざわざありがとう、心強いよ」

「んじゃ早速行くとするか」

 立ち上がったリョクとマリオに、餞別だとガンズが酒瓶を投げて寄こす。

「俺が造った最高級酒だ。何かの役に立つだろうぜ」

「おう、ありがたくもらっとく」

「いろいろお世話になりました」

 ペコリと頭を下げたマリオに闇の精霊王が声をかける。


「またリバーシーの相手をしてよ。次は絶対勝つから」

「楽しみにしてます。ロンナさん達にもお礼を言っておいて下さい」

「おう、また来い。そん時ゃ歓迎の宴会を盛大に開いてやるぜ」

「はい」

 微笑みながら頷くとマリオは羅針盤を起動させる。

「座標は緯度:51.507 経度: -0.127…エルフ国へ」

 すぐさま羅針盤から光が溢れ、それが治まった後に彼らの姿は無かった。



「…本当に移動した」

「ミギャ」

「スゲェもんだな」

 感心するマリオとタマ、呆れた様子のリョクが揃って周囲を見回す。

そこは鬱蒼とした森の中で、辺りには人影どころか動物の姿すらない。

「此処は深淵の森の東の端でございます」

 恭しく頭を垂れてイツキが現在地を教えてくれる。


「あの川を越えた先がエルフ国になります」

 幅5m程の川の先を指し示しながらイツキがエルフ国について説明する。

エルフ国の人口は約5万人。

首都であるイリイーズに1万、他は国中に点在している里で暮らしている。

かつては代表者が集まって物事を決める合議制が敷かれていたが、ハイエルフの登場によって議会は完全に力を無くし、有名無実な存在となってしまった。


先王の親族であるハイエルフは、兄の家であるアズリーデと妹の嫁ぎ先のマデリンの2つから成り、兄妹たちは既に亡くなっているがその甥や姪がアズリーデに2人、マデリンに3人。

彼らの子供らを合わせて20名程が緑の王の名を使いエルフ国を好きに支配している。


「国境を目指し進軍中の帝国軍ですが、今のところ斥候が森に入り込むくらいで大きく動く様子はありません」

「なら良かった」

 ホッとするマリオに、ですがとイツキが眉を顰めたまま言葉を継ぐ。

「首都イリイーズは混乱の極みとなっております。ハイエルフと名乗る輩は我先に逃げ出すばかりで民を気にする素振りは一切ございません」

「らしいちゃらしいがな」

 呆れ顔を浮かべてからリョクはマリオを見やった。


「これからどうするんだ?」

「まずはエルフ国を目指そう。他族の僕らじゃ入れてもらえない可能性が高いけど助力くらいは出来ると思うから」

「おう、斥候がいるらしいからな。目立たねぇようにゆっくり行くぜ」

 そのまま歩き出したリョクの後をタマを肩に乗せたマリオが続く。



「ところで我が王」

「何?」

 横にやって来たイツキに歩きながら顔を向けたマリオだったが、伝えられた話に目を見開く。

「確証が得られませんでしたので今までお話しませんでしたが、キリーナ国に勇者の称号を持った者が現われました」

「勇者?」

 怪訝な顔をするマリオに、はいとイツキが頷く。

「しかもその者はどうやら我が王と同じ渡来人のようです」

「え?」

 言われてマリオはエレベーターに乗っていたのが自分を入れて5人だったことを思い出す。


「渡来人だぁ?現われたんなら大騒ぎになってるはずだぜ。何で今まで分からなかったんだ?」

「現われたのは4ヵ月前ですが、魔素酔いのために少し前までほとんど身動きが出来ず。与えられた部屋から出ることが無く情報が得られなかったのです」

 イツキの答えにマリオが小首を傾げる。


「魔素酔い?」

「光の聖女やカトウ殿もそうでしたが、渡来人ならば必ず起こる症例です。我が王がいた世界には魔素が無いとか」

「そうだね。魔法はゲームやアニメみたいな作り物の中だけに存在するものだったから」

「ですので初めて触れた魔素に身体が拒絶反応を示し、頭痛や吐き気といった二日酔いのような症状が長く続くそうです」

「ああ、なるほど。僕の場合は【神気を浴びた健康優良体】の称号のおかげでそんなことにはならなかったけど、それが無いならそうなっても仕方ないね」

 納得の頷きを返してからマリオはその勇者の近況を問う。

それを受けてイツキは眷属たちから仕入れた話を披露してくれた。


勇者の名は那賀川紘也なかがわひろや

高校という学び舎に所属する学生だった。

この世界にやってきて早々、魔素酔いで行き倒れたところを通りかかったキリーナ国の兵に助けられてそのまま王宮で保護されることになった。


だがまだ学生の彼は聖女やカトウのような専門知識を持っておらず、その方面ではまったく使い物にならなかった。

それを知らされた時、ヒロヤはこう叫んだそうだ。

『異世界転移ものの定番、マヨネーズとリバーシーは早い者勝ちかよ。少しは何か残しておいてくれたっていいじゃないかっ』

 知識チートの夢破れた彼が次に目指したのは『俺、強えぇ』だったが、こちらもステータスを見る限りでは人族の平均より少し強いくらいで、剣術のスキルはあったが魔法適正はレベル1の光魔法だけだった為に挫折。


やさぐれて自暴自棄になった彼を一喝したのがキリーナ国主である赤鬼王・ライカムだった。

『男ならば剣を取れっ。取って己を鍛えよっ。さすれば道は必ず開く。お前が進むべき道がっ』

 その言葉に感銘を受けたヒロヤは身体が動くようになると王立の剣士学校に入り、今はそこで鍛錬の日々を送っている。


「そっか良かった。衣食住は保証されているし後見になってくれてる人もいるみたいだし、命の危険はなさそうだね」

  安堵の息をつくマリオに、で?とリョクが聞いてくる。

「そいつに会いに行くのか?」

「うん、いずれね」

「すぐに会いに行かねぇのか?同郷の奴なんだろ」

「そうだけど…でも今は自分の居場所を必死に作っているところだから邪魔をする訳にはゆかないよ。僕と会うことで別の頼りが出来て、それで甘えが出てダメになったりしたらいけないから。こういう時は余所見は厳禁なんだ」

「そう言うもんか?まあ、今はエルフ共をどうにかするのが先だしな」

 リョクの言葉に頷くとマリオは国境である川を渡るべくその傍に歩み寄った。 





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