大恋愛作戦
わたしは不安障害だ。
「不安障害」とは?
と聞かれても、うまく説明できないけれど、
とにかくいつも不安と思い込み、拘りに囚われている
そんな人間です。
そんなわたしが恋をして結婚しました。
旦那さんは「しんちゃん」
なんにしても「まぁなんとかなる」
典型的なB型人間で、単純な人。
そんな正反対な性質をもった2人に共通するところといえば、
生き方が不器用というか、なにをやってもうまくいかないところ・・・。
しんちゃんはわたしのことが大好き、
大好きすぎて束縛が半端ないのだ。
携帯のGPSは当たり前、
どこにあるのかはしらないけれど、
このアパートのどこかに盗聴器もしかけてあるらしい。
どこからどうみても誰にも相手をされることないような容姿のわたし、
歳ももうすぐ40歳を迎えようとしている。
そんなわたしをしんちゃんはいつも心配ばかりしている。
わたしはビールが大好き。
ただ酒癖がよくなくて、酔っ払うと人恋しくなって
何度か浮気したこともあり、
しんちゃんがお仕事に行ってる時はビール禁止の約束がある。
我慢が苦手なわたしはしんちゃんの束縛や、しんちゃんとの約束が
しんどくて仕方ない。
しんちゃんのことは大好きだけど、
いろんな問題が山ほどありすぎて
結婚生活から逃げ出したくなってるわけなのであります。
まず、何よりもの大きな問題はお金がない。
借金もたくさんあって、もうすぐ電気が止められそう。
借金があるくせに、全くお金をためるということができない二人。
わたしはお金の不安で頭がおかしくなりそうなのだが、
ずっと精神的に病んでいたのでまともに働いたことがなく、社会にでることができない。
ため、
しんちゃんの収入だけで生活している。
「しんちゃん、電気止まったら真っ暗でお風呂もはいれないし、ご飯も食べれないよ。」
「大丈夫、なんとかするから。今考えても仕方ないから、なってしまってから考えよう。」
不安がるわたしの頭を撫でながら、しんちゃんは自信ありげにいつもそう言う。
なってからじゃ遅いし、なんとかならないものはどうやっても何ともならないものである。
しんちゃんにそこら辺の常識はない。
わたしはそんなしんちゃんにイライラしてしまうけれど
しんちゃんの根拠のない自信を信じるしかない・・・。
結婚する前の2人は、本当に無茶苦茶だったけれど
誰よりもお互いを求め合い、愛し合って付き合ってきた。
無茶苦茶というのも、付き合ってる当初はしんちゃんも仕事をしておらず、
お互い実家暮らしで、
わたしもしんちゃんも実家での居場所がなかったため、
カードで借金してラブホテルで生活を送ってた。
一緒にいられることが嬉しくて後先考えずやりたい放題。
カードが底を突いて、
マンスリーアパートを借りることができた。
共同お風呂に共同トイレ、
一月光熱費こみの6万。
部屋は6畳くらいで、寮のようなアパートだったけど、
しんちゃんとのちゃんとした同姓生活のスタート、
わたしは幸せだった。
ちゃんとした同棲生活が始まって、
しんちゃんはお仕事をみつけて働きだした。
ずっと仕事をしてなかったしんちゃんにとって働くということがどんなに大変なことだろう。
そもそも続くのだろうか・・・。
5月、わたしの誕生日。
しんちゃんからのプロポーズ。
ずっと夢見ていた結婚、
なかなか結婚に踏み切れずにいたしんちゃんがやっとプロポーズをしてくれた。
わたしはとにかく嬉しくて、嬉しくて
結婚は愛する二人のゴール地点だと思っていたから。
思っていたのだが・・・。
無茶苦茶にしか生きてこなかったわたしとしんちゃんの結婚生活は問題だらけでした。
まずは引越しを考えたのだが、
カードの返済をしていなかったため、しんちゃんはいわゆるブラックで、
入居の審査が通らない。
何件も断られて、
しんちゃんのお父さんの名義をかりて、なんとかアパートを借りることができた。
結婚生活スタート。
わたしとしんちゃんはいつもベッタリ2人くっついて
離れないように、離さないように一緒にいる。
はたからみると、もう40歳も手前にしたおじさんとおばさんが。
そう思われるんだろうけれど、
本人たちにあまり自覚はなくて、基本イチャイチャしている。
わたしは究極の気分やだから、気分の上がり下がりも激しく
しんちゃんはいつもわたしの気分に怯えてたと思う。
「真奈美を喜ばせたい、真奈美のためなら何でもする。」
結婚してからもそう言ってくれるしんちゃん。
わたしはしんちゃんが大好きだ。
気持ちだけならこんなにも自信があるのに。
現実とか社会とか常識が気持ちを突き破って邪魔をする。
そんな邪魔者を無視して同じ気持ちを真っ直ぐに一途に心にとどめることができたなら、
愛は最強なんじゃないかと考えたわたしは、この愛を全力で尽くすと決めたのだ。
とはいえ、電気も今にも止まりそう、
借金は返せど返せど増えていくばかり・・・。
さて、愛をつらぬくために、今わたしがしなければならない一番たいせつなことはなんだろう。
とりあえず、しんちゃんの隣でビールを呑んで酔っ払って寝ることしか思いつかないけれど、
きっとこのわたしの愛最強作戦はうまくいくことを身を持って証明してみせる。
まずは、出会ったときの自分の気持ちを蘇らせることが大切。
あったはずの気持ちなんだからきっと気持ち丸々忘れてしまったということはないだろう。