表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

プロローグ

「朝早くからごめんね。……うん、うん、そうその事について何だけど――」


 誰かが電話をしていた。誰が電話をしていたのか、それはもう覚えていない。ただ、外では豪雨が降っていて、しきりに雷鳴が鳴り響いていたのが印象的な記憶だった。


「うん、だから……そうお願い。この子達もきっとお祖父ちゃんの元で暮らした方が幸せだと思うから。……うん、有難う」


 じゃあね、と言って誰かが電話を切った。その誰かはりょうと涼の妹――一美(かずみを見てこう言った。


「今までごめんね。だけど、これからはきっと幸せな生活が待ってるから――また、会おうね」


 そう言い終ると誰かは泣いてしまった。妹ももらい泣きしたのか泣き始めてしまい、結局は涼も泣いてしまった。

 しばらくして家の前に車が来て、その誰かは妹だけを乗せて、涼を残すと『最後に一言だけ』と言って引き留めてこう言った。


「一美の事守ってあげてね」


 一言だけと言った誰かは、その一言の所為で自分の感情を抑えられなくなったのか、涙をぼろぼろと零しながらその他にも色々と喋ってきた。でも、もう全然覚えていない。ただ、今でも、あの一言――一美の事を守ってあげてね――だけは鮮明に覚えている。

 やがて喋りつくしたのか、感情を抑えられる様になったのか、子供だった涼でも分かる程に無理な笑顔を作って、じゃあね、と言って涼を車に乗せた。

 車に乗ると泣き止んでいた妹が『何て言ったの?』と聞いてきて、何故か再び涼は泣いてしまった。

 涼は振り返って車の中からガラス越しに外を見ると、その誰かは雨に濡れながらも姿が見えなくなるまで何時までも手を振っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ