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幼馴染に男の影だと!

少し短めですが、続きです。

「あ、私だ」


 ハルはテーブルの上に置かれた自分のスマホを取り上げ画面に目を向けた。

 どうやらメールのようだ。

 ついその画面に目を向けそうになったが、プライベートを覗き見るのもどうかと思い、すんでのところで顔を横に向けマナーを守ることができた。


「あ!」


 メールを確認したハルが声を上げた。

 声音が一オクターブ上がったような、テンションが上がったような気がする。

 チラリとハルの表情を見ると、頬がほころんでいた。喜んでいるのか?

 俺の視線に気づいたハルは「あ」と、なんだか気まずそうな表情になった。


「ちょ、ちょっとゴメンね」


 そう言うと、ハルは大事そうにスマホを抱え、そそくさとリビングを出て行った。

 スマホを操作しながら歩いていたらしく、リビングを出るなり電話を掛け、扉が閉まる前に「あ、もしもし……」と聞こえてきた。扉が閉まると、ハルの声はパタリと聞き取れなくなってしまった。

 別に盗み聞きするつもりはないからいいのだが、随分と嬉しそうだったな。法子さんだったら席を立つ必要はないだろうし、友達か? そう言えばハルの友達って知らないな。渡辺か? 渡辺をハルの友達と言っていいのかわからないが。いや、なんだかんだで仲良くやっているから友達と言っていいかもしれない。しかし、渡辺なら別に席を立つ必要もない気がする。それとも俺には聞かれたくない内容なのか? まあ、ハルにだって秘密にしたことの一つや二つあるだろう。俺にもあるんだから当然だな。


「本当! うん! すぐに行くね!」


 扉の向こうからでも聞こえるくらい、ハルの声は大きく弾んでいた。何かいいことがあったようだ。

 電話を終えたハルが笑顔でリビングに戻って来た。


「友達か?」

「え? あ、うん」


 なんだか曖昧な返事だ。少し気になるな。

 しかし、だからと言って追及するのも変な話だ。俺は幼馴染であって、ハルの恋人ではないんだからな。


「ユウ君、私用事が出来ちゃって、少し出掛けて来ていいかな?」


 ハルは申し訳なさそうな表情をしている。

 なんだか俺が束縛してるような言い方だな。俺は一度たりともそんなことはしていないはずなんだが。


「いいよ。折角の日曜なんだし、家事の事は忘れてパーッと遊んでくるといいよ」

「うん! ありがとうユウ君!」


 ハルは嬉しそうにリビングから出て行った。

 ハルもまだ15だからな、慣れない主婦の真似事を一週間もしていればストレスも溜まるだろう。本当はもう嫌になっているのかもしれないな。 ハルに限ってそれはない気もするけど、息抜きは必要なはずだ。今日くらい家事は俺がやってもいいだろう。


「じゃあユウ君、行ってくるね」

「ああ……」


 随分と気合の入った格好をしている。

 俺の視線に気づいたのか、ハルはクルッと回り全身を見せつけて来た。


「どう? 似合うかな?」


 肩を出した八分袖、膝丈のワンピースは腰あたりでキュッと絞り体のラインが綺麗に出ている。男だというのに、どうしてこうも綺麗にラインが出ているのだろう? これもプロ仕様なのか? 薄くだが化粧もしているようで、見違えてしまった。

 似合うどころの話ではない。男なのが不思議なくらいだ。

 俺は「ああ」としか答えることができなかった。


「えへへ、じゃあ行ってきまーす」


 ハルは軽い足取りで出かけて行った。

 あんなに気合の入った姿ははじめて見た。友達と会うんだよな? ……怪しい。どうする? どうするも何も、折角の日曜、しかも一人、ゆっくりするには最高の環境だ。家でのんびりするに決まっているだろう。



◇◇◇



「……」


 とはいえ、ハルの友達も気になってしまい、結局後をつけて来てしまった。これでは本当にストーカーだ。しかし、以前ハルに後をつけられているから、これでお相子だ。バレても文句は言われまい。

 ハルはコンビニの前に立っている。俺がおにぎりを買ったあのコンビニだ。近所という事は渡辺の線が濃くなってくる。

 相手は遅れているようで、ハルは時間を気にしつつキョロキョロしていた。

 俺は物陰に隠れその様子を眺めている。

 

「誰と待ち合わせてるんだ?」

「誰と待ち合わせてるんだろ?」

「ん?」


 俺の声が俺以外の声と見事にハモっていた。

 振り返ると、渡辺がニヤニヤしながら屈んでいた。

 俺は「うわっ!?」と声を上げそうになったが、渡辺に口を塞がれた。


「シーッ! 橘ちゃんに気付かれちゃうよ」


 俺がコクコクと首を縦に振ると、手を除けてくれた。


「どうして渡辺がここにいるんだ?」

「どうしてって、私の家近所だし、神野が面白そうなことしてるから、私も混ぜてもらおうと思って」

「面白い事って……」


 俺が何をしているのかわかっているような口ぶりだな。まあ、綺麗におめかしして誰かを待つハルを、物陰に隠れて見ていれば、何をしているのかは容易に想像はつくか。


「いいからいいから。で、橘ちゃんは誰を待ってるの?」

「知ってたらこんなことしてないって」

「だよね~」


 渡辺はワクワクが止まらないようで、目を爛々と輝かせてハルを眺めている。

 渡辺がここにいるという事は、ハルの待ち合わせの相手は一体誰なんだ? 他の友達を知らない俺には見当もつかなかった。

 すると、誰かに気付いたのか、ハルは満面の笑みで駆け出して行った。

 そこには、10人いれば10人が同意するであろうイケメンがいた。しかも二人。二人とも髪を伸ばし、一人は茶髪をポニーテールにしやんちゃな感じ、もう一人は黒髪を後ろで束ねて落ち着いた感じがする。イケメンはどんな格好でも様になるが、この二人は見事なまでにスマートに決めている。男が見ても、「ハァ~」と惚けること請け合いだ。

 実際俺も「ハァ~」とため息が出そうだ。出そうなのだが、この二人を見ているとそれ以外の感情が込み上げてくる。この感情は一体……。


「うわ~イケメンが二人……チッ、羨ましい」


 渡辺の心の声が漏れていた。


「おい」

「え? あ、あはは、聞こえちゃった? でもそれくらいイケメンだよねぇ。橘ちゃんとどういう関係なのかな?」

「どういう関係って……」


 ハルは見ているだけでこちらが照れてしまいそうなほどの笑顔で二人を見上げている。

 友達、じゃないのか? いや、そう訊ねた時、ハルは曖昧な返事をしていた。

 これって、ひょっとして……。

 以前渡辺が言っていた言葉を思い出してしまった。

 いやいや、ハルはあれでも男だ。どんなに綺麗に着飾ろうとそれは変わらない。男が男を好きになるなんて……ある。ハルがまさにそれだった!? じゃあ、やっぱり……。


「あ~あれはコロッと行っちゃったかなぁ」

「!?」


 俺が振り払った言葉を渡辺はさらっと言ってくれた。

 ハルは俺に見切りをつけあの二人に? 俺がなかなかその気にならなかったからか?

 いや待て、まだそうと決まったわけではないだろう。あの二人がハルをどう思っているかなんて、今の段階ではわからない。何よりハルが男であることは知らないはずだ。

 もう少し様子を見てみよう。

 ハルは二人の間に飛び込み、二人の腕に自らの腕を絡めた。そして、三人は仲良く目的地に向け歩きだした。


「……」

「ど、どうするの?」


 渡辺は俺の気持ちを汲んでか、恐る恐る訊ねて来た。


「……追跡だ」

「りょ、了解」


 俺と渡辺は、三人に気付かれないように尾行を開始した。


この見た目イケメン二人は一体何者なのか。次話では判明しませんが、そのうち判明します。

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