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幼馴染が変わり過ぎた!

こんな可能性もありました。という感じで書いてみました。というか、こっちの方が先に書いてました。意味がわからないという方は他の作品を読んでみるとわかるかと思われます。

というわけで、どうぞ。

「ユウ君、早く早く!」

「ハァハァ、待ってよハル君!」

「あはは、そんなんじゃボクに追い付けないよ!」


 僕たちは広い庭を元気に駆け回っている。

 年の頃は4、5歳、先を走る少年はハル君、その可愛らし容姿からは想像もつかないが運動神経が良く、追いかけても追いかけても、全然追い付けない。


「「ユウ君待ってよ~」」


 僕の後ろから、二人の女の子が追いかけてくる。

 すぐ後ろを走る女の子は長い髪をポニーテールに結ったわーちゃん、その後からついて来る女の子はツインテールに結ったふーちゃん。どちらも可愛らしい容姿の女の子で、尚且つ瓜二つだった。

 息を切らしヘトヘトになりながら追いかける三人に対し、ハル君は楽しそうに駆け回っている。


「もうダメ~」


 僕は芝生の上にゴロリと転がり天を仰ぐ。


「ユウ君捕まえたー」

「捕まえたー」


 後ろから追いかけて来ていた女の子たちが、転がる僕の上にダイブしてきた。

 二人に()し掛かられ、僕は「ぐふっ!?」と苦悶の声を漏らした。

 小さいとはいえ子供二人となると十分な重み、おまけにダイブしてこられたら堪らない。僕の小さな体にはなおの事きつかった。


「わーちゃん、ふーちゃん重い……」

「え~あたし重くないもん」

「わたしも~」


 と言って、二人は全く退く気配を見せない。

 右側にわーちゃん、左側にふーちゃん。年が年なら両手に花状態なんだけど、僕にはまったくその自覚はない。ただ重たいだけだった。

 どうにか抜け出そうとモゾモゾ動いているが、二人は一向に離してくれない。


「ユウ君だらしないなぁ」


 と、ハル君が見下ろしてきた。


「ハル君助けてよ~」

「あはは、ユウ君がんばれー」


 僕が助けを求めるが、ハル君は僕たちを見つめニコニコと微笑んでいる。

 子供の時分は運動が得意な子程カッコイイとされるけれど、まさにハル君はそれだった。

 僕はそんなハル君みたいになりたいと、密かに憧れていた。



◇◇◇



 朝から随分と懐かしい夢を見てしまった。きっと久々に帰って来たからに違いない。

 俺神野悠(じんのゆう)は、小学校に入る前親の転勤で引っ越した。そして、各地を転々とし高校入学と同時に再びこの街に帰って来た。転校とか人間関係の構築が何かと面倒だけれど、高校ともなれば、違う中学からの寄せ集め状態になるから他の生徒と大差なく接することができる。ハル君が一緒だったら心強いんだけど。きっと格好良くなって住む世界が変わってるんだろうな。少し寂しい気もするけど、会えたら嬉しいな。

 そんなことを考えながら学校へ向かった。


 入学式を終えた俺は自分の教室に入った。

 1年B組、ここがこれから一年過ごす俺のクラスだ。

 しかし、教室内は微妙な空気に包まれている。同じ中学だった者は一か所に集まり様子を窺い、そうでない者は席について近くの生徒に話し掛けたりしている。

 ちなみに俺は後者。しかし、不運にも俺の隣人は前者だったらしく、席を立っていて話しかける相手が見つからない。離れた席に移動する勇気のない俺は大人しく席に座っていた。

 いやいや、これでは孤立してしまう。俺は今、コミュ力を試されている。今こそ転校生活のスキルを遺憾なく発揮する時だろう。

 よし、とばかりに立ち上がろうとすると、後ろからガタガタと騒がしく席に着く音がした。

 振り返ると、当然だが見知らぬ男子生徒が座っていた。


「あ、俺鈴木三郎、これからよろしくな」


 気軽に声を掛けられてしまった。鈴木三郎、名前はモブっぽいのにコミュ力高いな。

 おっと、俺も自己紹介しないと。


「俺は神野悠、よろしく」

「おう。そういえば悠は聞い……」

「悠!?」

「ん? 悠だろ?」

「え、あ、うん」


 いきなり下の名前とは、こいつ、一気に距離を詰めてくるタイプか。まあ、その方が楽だからいいけど。


「で、どうしたんだ?」

「そうそう、さっき小耳に挟んだんだけどさ、このクラスにどうも有名人がいるらしいんだ」

「有名人? 芸能人ってことか?」

「いや、それだったらさすがにもっと騒ぎになってるだろ」

「それもそうだな」

「どんなヤツなのかはわからなんだけど、名前だけは調べてきたぜ」

「名前はわかったのにどんなヤツなのかわからないのか?」

「見ればわかるらしいぜ」

「見れば? 容姿にインパクトがあるってことか? で? なんて名前なんだ?」

「えっとな、橘遥(たちばなはるか)って言うらしい」

「え……」


 橘遥って、ハル君と同じ名前だ。同姓同名か? でも本人だとすると、10年ぶりの再会になる。しかも同じクラスだなんて。


「名前から女子だとは思うけど、今の時代男でも遥ってヤツがいるからな」

「ああ、俺の友達にもいるし」

「ん? なんかテンション高いな。ひょっとして悠の友達か?」

「え? いや、わかんないけど」


 テンション高かったかな? 確かに本人だと嬉しいから高かったかも。

 三郎が言うには2年にも有名人がいるらしい。さすがにそっちまでは調べられなかったらしいが、これからじっくり調査するらしい。こいつは何を目指しているんだか。

 そんな校内有名人の話をしていると、いつの間にか担任の先生が来ていた。

 ホームルームの間、俺はハル君を探しキョロキョロしていたが、残念ながらハル君の姿はなかった、と思う。あれから10年も経っているんだから変わっていて当然だ。気付けるとも思えない。イケメンを探せばいいのかもしれないが、そんなイケメンはいなかった。種類の異なるイケメンモドキならいたけれど。


「神野、次はお前の番だぞ」

「え? あ、はい」


 いつの間にかホームルームも終わり、自己紹介タイムがはじまっていたようだ。そして、俺の番が回って来ていた。


「神野悠です。中学は……」


 他県の中学名を言ってもわからないだろうけど、なんとなくいつもの流れで言ってしまった。後は可もなく不可もない無難な自己紹介をして着席した。ここで悪目立ちしても仕方がないからな。まあ、他県の中学を言った時点で若干注目を浴びてしまったが。

 ただ、気になることが一つある。俺の名前を聞いて「あ」と小さな声がどこからか漏れていた。俺の事を知っているヤツがいるのかもしれない。誰だろう? と、見回しても相手はわからない。まあ、後であっちから声を掛けてくるだろう。

 ちなみにさっきのイケメンモドキは福島雅治というらしい。某シンガーソングライターから取ったのかもしれないが、髪形も寄せているのが鼻に着く。話し方も若干寄せているのも気になる。あいつとは仲良くなれる気がしない。

 そして、男子の中に橘遥はいなかった。残念ながらハル君ではなかったようだ。

 女子の自己紹介が進み、橘遥の番になると、教室内がざわつき始めた。


「橘遥です。中学は……」


 恐ろしく綺麗な子がいた。長く艶やかな黒髪、絹のような白い肌、失礼ながら整形したのか? と疑いたくなるような整った顔立ち。まさしく美少女と言って差し支えのない子がそこにいた。


「なるほど、あれなら有名になってもおかしくないな」


 背後から三郎がこそっと呟いた。俺は「ああ」と答えるのがやっとだった。それくらいの衝撃を受けていた。ハル君と同姓同名だった子が、超絶美少女だったんだからな。


 自己紹介を終え、腰を下ろした瞬間、橘と目が合った気がした。

 いや、それは自意識過剰というものだ。きっとこの辺りの男子も同じことを考えているに違いない。現に福島は「今目が合った! ひょっとして俺の事……」などと逞しい妄想力を発揮している。やはり仲良くなれそうにない。


 放課後、と言っても初日は大した授業はなく、半日で終わる。という事は午後が空くという事だ。つまり親交を深めようと橘に男子が群がるのは必然だった。もちろん女子もいるが、男子が大半だった。


「さすがは有名人、注目の的だな」

「ああ」

「悠の友達……じゃないよな」

「俺の友達は男だ」

「だよな」

「そういえば、三郎の友達はいないのか?」

「いるよ。あれ」


 三郎が指差す先、橘に群がる群衆の中、張り切って声を掛けている男がいた。福島だ。あれが三郎の友達……マジか。


「まあ、雅治は見た目や性格はあれだけど、いいヤツだぞ」


 俺の気持ちが表情に出ていたのか、三郎に福島のフォローをさせてしまった。


「いいヤツか。女子がフル時の常套句だな」

「ハッハッハッ、そうだな。いい人だと思うけど、ごめんなさい。を地でいく感じだ」

「それでも挑んで行く勇気は認めよう」


 福島が猛アタックを仕掛けているが、橘は見事な受け流しを見せている。きっと武道の心得があるのだろう。武道は関係ないか。

 じっと、その光景を眺めていると、俺の視線に気付いたのか橘がスッと立ち上がった。そして、スタスタと綺麗な所作でこちらに近づいて来た。

 他の生徒はどうしたんだろうと言った表情で橘を見送っている。

 橘は俺の前で立ち止まると、俺を見下ろしてきた。

 あれ? ひょっとして怒ってる? ジロジロ見てたのが気に入らなかったのか? 確かにジロジロ見るのは不躾だったかもしれない。それなら福島のように話しかける方が何倍もましだろう。ここは素直に謝っておいた方がいいか。


「えっと、橘さん? そのジロジロ見てごめ……」

「神野悠君」

「はい?」


 謝ろうとすると、橘がそれを遮るように俺の名前を呼んだ。なぜフルネーム? なぜマジマジと俺の顔を見ている? そんな綺麗な瞳で見つめられたらドキドキしてしまう。いや、いろんな意味で。ジロジロ見ていたことに対して罵倒されるかも知しれないからな。そんなことになれば、クラスのみんなからの印象が急落してしまう。これからの一年が辛いものになり、入学早々来年のクラス替えが待ち遠しくなってしまう。

 何かを察したのか、三郎は身体を引いて距離を取っている。


(危機回避能力高いな! この薄情者!)


 薄情も何もないか、今日知り合ったばかりだからな。

 さて、覚悟を決めて続きを聞くとしよう。

 橘は唐突にこんなことを言ってきた。


「私の事覚えてる?」

「え?」


 覚えてる? と言われても覚えてませんけど。ていうか、こんな綺麗な子、一度見たら忘れないと思うんだが。つまり、俺に覚えはない。

 橘は俺の返答を期待に満ちた表情で待っている。

 ……答えづらいな。


「あの、ごめん。どこかで会ったことあったかな? ……あ!?」


 俺の返答がショックだったのか、橘はこの世の終わりにでも遭遇したかのような表情をしている。

 当然周囲の視線は、好奇なものから射殺さんばかりの視線に変わり俺に突き刺さっていた。

 このままではマズイ。本当に殺されかねない。物理的な意味ではなく社会的に。


「えっと、ごめん。橘みたいな綺麗な子一目見れば忘れないと思うんだけどな。おかしいな、寝惚けてるのかな。うん、きっとそうだ、すぐ思い出すからちょっと待って」


 待ってもらっても思い出しようがない。さっきも言ったが、一度見れば忘れられない美少女だ。会ったことなんてないに決まっている。これはどうしたものか。

 俺が悩んでいると、橘がクスリと笑った。


「私、綺麗になったかな?」

「え? うん、それは周知の事実だと思うけど」


 橘の笑顔がとても綺麗で、俺は惚けたようにそう答えていた。


「そっかそっか、私は綺麗になってたか。でもユウ君は仕方がないなぁ、私の事忘れちゃうなんて」

「ん? ユウ君?」


 なんだか懐かしい呼び方だ。そう呼んでいたのは幼馴染だけのはず、でもその中にこの子はいない。どういうことだ?

 俺は頭の上に疑問符をいくつも並べ立てていた。


「まだわからない? ボク、ハルだよ」

「へ? ボク? ハル?」

「そう、幼馴染のハル」

「―――ハル君!? いやいや、だって俺の知ってるハル君は男だぞ。その胸はどう見ても本物だろう! それとも詰め物か!?」


 俺は橘の胸を指差し否定した。俺の憧れたハル君を女装趣味に仕立てられて堪るか。


「……ヤダなぁ、どこ見てるの? ていうか、ユウ君が勝手に私の事男だと勘違いしてたんじゃない」

「勘違い? だって、ハル君自分の事ボクって」

「うん、ユウ君の真似してたんだよ。ユウ君も僕って言ってたよね? ほら、子供の頃って好きな子の真似したくなるでしょ?」

「……」


 確かに言ってた。だから俺は勘違いしたのか? マジで?


「でもホントに久しぶりだよね。ユウ君も見違えちゃった。カッコよくなってて、はじめ気付かなかったよ」


 いや、確かにハル君綺麗な顔立ちしてたけど、可愛らしい一面もあったけど……マジで?


「あ、知ってた? この学校にわーちゃんとふーちゃんもいるんだよ。4人同じ学校なんて運命感じちゃうね」


 俺はずっと勘違いして幻想のハル君に憧れを抱いていたのか? マジで? マジか?


「あれ? ユウ君聞いてる?」


 確かに目の前にいる橘はどこからどう見ても超絶美少女であって男ではない。よく見ると、ハル君の面影がある、気がする。つまり……マジ!


「お~い、帰ってこ~い」

「ハル君、本当は女だったのか―――!!」

「うわっ!? びっくりした」


 こうして俺は10年越しに真実を知ることとなった。

 それにしたって変わり過ぎだろう!


というわけで、不定期で投稿していきます。その時の勢い次第で連続投稿したりもします。続けて読んでいただけたら嬉しいです。ブクマ、評価、感想、お待ちしています。

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