8話「新人研修よさようなら」
今回でやっと違法転生者を出せました。タイトル詐欺ですいません……
01
「あ、やっと来たんですか〜、グレン・マクスウェルさん」
「君は一体誰だ?」
見ず知らずの少年に名前を教えた筈はないのだが……それにこの状況は一体なんなんだ?
「僕はカズキです、貴方にお願いがあってユグドラシルに来たんですけと、中々来なかったので対策課の皆さんにお話を聞いてもらってたんですよ!」
周囲を見渡すと恐らく彼のおしゃべりによって職員達がかなり疲労している事がわかった。どうやら僕が次のターゲットか……
「話ってなんだい?出来れば手短に頼むよ」
「実は僕と一緒に転移してきた筈の女の子がどこを探してもいなくて……」
カズキという少年の話を聞いてみると、何らかの時空の歪みに巻き込まれたと言うがどうにもきな臭いな。
時空の歪みなんてここ最近確認されてないのに
「恐らくだがその少女だけ異世界エデンに飛ばされたね」
「どこの島なんですか!?」
「いや、そこまではわからんが……」
コイツ、異世界エデンに島がある事なんて教えてないのによく知っているな……いや、職員に聞けばわかるか
「多分……第2島アーカイブ未来都市に飛ばされたんじゃないか?」
「アーサー!? 居たのか!」
カズキと話していると、後ろからタイミングを図ってでてきたようにアーサーがひょいと出てきた。
「話は聞かせてもらったがアーカイブにいる指名手配犯の仕業だと俺は思うな」
「指名手配犯?」
「僕から説明するけどアーカイブという国を牛耳っている違法転生者がいるんだけど、ソイツはかなり手強くてなぁ」
第2島アーカイブという国は第1島みたいな剣と魔法みたいなファンタジーではなく、空間を曲げるなどの異能力者達が蔓延っている。
他の島と比べてかなり危険なので負傷者が後を絶たない。
「どうにかならないんですか!?」
「それは警務課室長のグレン君に任せれば全部解決さ」
キランとウィンクをするが僕は奴にある借りを返してもらう事を思い出した。
「お前……俺に借りあったよな?」
「……あ」
奴は僕に依頼を出してきたがそのお礼をもらっていなかった。
もちろん無償でやってしまったからには彼に代償を払ってもらわないといけない
「アーサー、君にはアーカイブに1週間同行してもらうよ。一応違法転生者討伐という名目で彼女を探しに行こうじゃないか」
「本当ですか! 助かります!!」
「マジかよ……」
「ただし、カズキ君はユグドラシル本部に留まってもらうよ。 異世界エデンに飛ぶ適正がないからね」
一瞬周りから溜息がこぼれた音がしたが、今回はしょうがないのだ。
「アーサー、ちょっと来てもらっていいか?」
「なんだ?」
僕はカズキ君に聞こえない場所にアーサーを呼び出す。彼に聞かれたら色々とめんどくさくなるからだ。
02
「遅れてごめん。少し立て込んじゃって……」
「どういう事?」
「えっと……」
僕は急いで警務課室長室に戻り、メリッサ達に遅れた事を謝罪をしたが中々違法転生者討伐の事をまだ言えていなかった。
「はぁ、こういう面ではお前は弱いな。殺伐とした状況に強い俺に任せろ」
正直ムカつきはするが殺伐とした状況に強いのは確かだ。
大体は女性関係だが
「実は実技研修は無くなって違法転生者討伐に変更になったんだ」
「え!? なんでですか!?」
「話が長くなってしまうが対策課の俺が協力しないといけないぐらい今大変な事になっているんだ。実技研修は諦めてくれ」
「マジかよ……」
彼らが落ち込むのも仕方がない、映像研修の後はメリッサから貰ったチート魔術を正確に扱えるかの実技研修ができないからだ。比較的楽な物が無くなったら誰でも嘆く。
「わかりました、その鬱憤は違法転生者にぶつければいいですよね?! ね、ルーク」
「あったりめーよ」
新入りが筋金入りの脳筋なのは目からウロコだった。見た目と違いすぎる。
「簡単じゃないと思うけど今回は私はパスよ。少し行かなきゃ行けない場所があるから、後の事はマリーに任せるわ」
「え? 姉様、私なんかが……」
マリーの言葉を聞く前にメリッサは姿を消した。
「なんかあったのかな? メリッサ」
「メリッサなりに色々と仕事蓄えてるんだろう、なんだってユグドラシル本部の女神様だ」
「まあ、いいけど……」
普段のメリッサなら仕事は直ぐに終わる筈なのになぁ、それに今日は奇妙な事ばっか続く。
あまり気が乗らないまま僕らは討伐にむけた準備を進めていく