1章ー7 敗北?
──目をつむり、リグレットが攻撃してきたと思われる方向へと剣を向け、ガードをしまジュンヤ。
視界が晴れていく。声が聞こえてくる。
ジュンヤは視界が戻ったことを確認した後、先程の防御の結末に辿り着く。
「……どうやら、僕の勝ちみたいだねー」
……ジュンヤの心臓辺りを、短剣が突き刺していた。
一瞬何が起きたのかわからないジュンヤは、目の前に近づいている「敗北」に気づかなかった。
─ああ、もう終わっちまうのか…俺の、俺の異世界生活は……
そして、ジュンヤは背中から地面に倒れた。
脱力感と絶望感に襲われる。気持ち悪い。やだ。やだ。こんなのやだ。
命の灯火が、あえなく消え………
……………………
………………………
…………………………
…………ない。
──ん?んんん??なんで死なないの?俺、リグレットに刺されて…
そう思い、ジュンヤは刺された箇所に目を降ろす。
刺されたはずの胸からは、短剣が刺さったままだか、血が一滴も流れていない。
それもそうだ。何故なら…
「お、俺の財布がー!!!」
──刺された箇所、そこには先程ポケットに入れた財布があった。
これも第六感と言うべきか。
ジュンヤがガードした向きはあっていた。
しかし、リグレットの短剣はその僅かに上にあった。
心臓の位置を刺したはずが、たまたまそこに財布が入っていた。
「なるほどねー。面白いねー、君は。楽しくなってきちゃった」
ジュンヤは警戒するがもう遅い。
真横に滑り込まれたジュンヤは、横からの蹴りに対して防御出来なかった。
子供とは思えない脚力で、軽々と吹っ飛ばす。
その先にあるのは……
「どわーー!!」
吹き飛ばされた先は、食料倉庫の中だった。
「いててて、くそ、あの野郎どんだけキック力あるんだよ…」
小麦粉の袋が緩和材となってくれたおかげで、衝突の時に痛みはなかった。
しかし、リグレットに蹴られたときの痛みは今なおも続いている。
「面白いから今度は場所を変えて遊ぼうよー。退屈させないでねー」
ゆっくりと、リグレットが倉庫内へと入っていく。
第二ラウンドの、幕が開く……