1章ー5 暗黒
"暗黒の使徒"の襲来は、周囲を戦慄させるには十分だった。
「なんだ?その、暗黒のなんちゃらって」
「ジュンヤは"暗黒の使徒"を知らないの!?」
アリスがかなりビックリしているあたり、とても有名な集団であることに間違いはないだろう。
「"暗黒の使徒"というのは…」
周りが騒がしいのにも関わらず、落ち着いた調子で話し始めるシャマ。
暗黒の使徒。
この国では最も災厄として恐れられている存在。
各地で破壊行為を繰り返して回っている。
何のために破壊を繰り返すのかは完全に不明。
一説によると、数十年前に現れた"ヤツ"を復活させようとしているという。
国の騎士達も撲滅させようと対応しているが、なかなかそうもできない。
何故か。それは、奴等が「強すぎる」からだ。
主に闇属性の魔法を使用するが、剣術を使う物も少なくない。
だが、熟練度が違う。
王国の選りすぐりの騎士さえも、全く歯が立たない。
神出鬼没であることも重なり、対応が遅れて被害は更に甚大になる。
目的不明、神出鬼没、最強最悪。
勝てる要素が少なすぎるため、現れた際には逃げるように王国から指示されている。
──そして、今に至るわけだ。
「なるほど、つまり……」
ジュンヤは少しだけ間を開けて、いつものように、イタズラするときの顔で、
「ここで俺が倒せれば、めでたく英雄だ!」
──シャマの話の八割は聞いていなかったようだ。
ジュンヤは外へと飛び出し、倉庫へと走っていく。
倒れた戦士から剣はくすねておいた。戦うことになっても問題ないだろう。
…いや、問題ある。
「ちょっと!待って!」
後を二人が追いかける。
三人がそろって倉庫へとたどり着く。
そこには……。
「あーあ、みーんなみーんなつまんない。─ん?君たちは、僕を退屈させないでくれるよね?」
大量の死体の山の上に立っていたのは、7、8歳の少年だった。
やっぱ下手くそ過ぎてなけてくるわ…