新聞部のポルターガイスト(前編)
まだまだ明るい校舎内に下校時刻の訪れを知らせる鐘が響く。
その時、新聞部一同は連休明けに発行予定の学校新聞の準備をしていた。
「ん?何か声が聞こえないですか?」
開いている窓からか女性の声が聞こえるのだ。
新聞部にも女子生徒はいるがその誰の声とも違う。
すると室内の空気が変化し、見えない誰かが叩いているかのように突然揺れ始める窓ガラス。
なまじ窓が開いているから今風が吹いていないことに疑いを挟む余地はない。
だからこそ言い知れない不安をあおるこれは、まさしく、ポルターガイスト現象だった。
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先日俺が所属する新聞部の部室で起きた騒動を思い出すとため息しか出ない。
そういや自己紹介がまだだったな。俺は櫻井友樹。この4月から星心学院高等部に通っている。俺は高校から入った口だが、ここは幼稚園から大学まで完備する地元ではそこそこ有名なマンモス校だ。
ちょっと変わった特徴として、各校の図書室のほかに、全学共通の図書館があって尋常じゃない規模の蔵書を誇る。
本好きにはたまらない環境だ。
「櫻井、おはよー」
声をかけてきたのは近藤和哉。同級生で内部進学組の近藤は慣れない俺に何くれとなく世話を焼いてくれる。
「おはよー、近藤。あれ?今週からチャリ通って言ってなかったっけ?」
「川の工事が遅れててまだ川沿いのサイクリングロードが通れないんだよ」
「なるほど、あそこ通れないとだいぶ遠回りになるよな」
チャリ通の生徒の多くは川沿いのサイクリングロードから裏門経由で登校している。正門側の駅前通りがチャリの通行禁止の為、非常に不便なのだ。
「そういえば櫻井、部室の件、”図書館の魔女”に相談してみたら?」
「"図書館の魔女"?」
「外部生は知らないか…。
実は超能力者としか思えない女子がこの学年にいるんだよ。」
「超能力者?一体どういうことだ?」
「簡単に言えば知るはずもないことをズバズバ当てたってところかな。
初等部のころいじめに発展したもんだからか今はそんな素振り見せないけどな。
幽霊とかそっちが原因でも分かりそうな心あたりが他にいないし」
「で、魔女か…。でも何で"図書館の”なんだ?」
「授業以外は図書館棟に籠もってるからさ。しかも図書館の中にいるはずなのに姿が見えない。」
「…。そんなんで相手を捕まえて話を聞いてもらうことができるのか?」
「やってみないと分かんない。ダメ元で昼休み探しに行かないか?」