一九四三年 挨拶
予科練は教育機関だ。そこを卒業して他の海軍航空隊で初等訓練をうけ晴れて飛行機乗りになれるのだ。もちろん哲生もそうだ。その哲生は海軍航空隊に入隊し土浦海軍航空隊で卒業し他。そして初期訓練を受けるために筑波海軍航空隊に移動することになった。
そして今日、哲生は移動することになり鳴門屋を訪れる。
「あれ、哲生」
そこには静が言った。どうやら彼女は開店準備をしていたようだ。
「どうも」
「どうしたの。今日はずいぶん早いじゃないの」
「ええ、これから初期訓練の・・・」
「あら、哲生わるかったね。今、香奈はお使いにいっててね」
「いえ、あいさつによっただけですから」
そいうと哲生は立ち去ろうする。
「もう、いくのかい」
「ええ」
「悪かったね。お茶もださないで」
「いえ」
そういうと彼は店を出た。
そこには倉町がいた。。そこで彼は哲生に向けて手を出した。手のひらを上に向けてそれは何かを要求しているようだった。
「なんだ」
「だせ」
「何をだ」
「いいからだせ。おれが渡しといてやる」
倉町はそういった。哲生は都合が悪くなると無言になる。照れくさいのか。意地を張っているのか。彼はこの瞬間も無言になった。
決して記者は嫌がらせで言っているわけではない。彼が、哲生が苦労して。倉町から譲り受けた物がだ哲生が手に入れた本だ。それを香奈が帰ってくるまで預かろうというのだ。
哲生だってそれがわからないわけじゃない。だからか。哲生はこれ以上彼に貸しをつくりたくなかったのかもしれない。
「つまらん意地をはるな」
それを見た倉町はそういった。観念したのか哲生は紙の包みを出した。
「ちゃんと渡しておくからな」
そういって彼はその場から立ち去った。




