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一九四五年夏 別れ
「おや警報」
そういったのは静だった。この日は開店前から秋絵が手伝いに来ていてを拭いていた。芳郎はいつも通り厨房の奥にいる。引き戸が激しく開いた。二人はその動きを止めその警報に耳をやった。
そこに倉町は入ってきた。引き戸を勢いよく開け飛び込んできた。その彼はどこにいたのだろうか。記者はここまで走ってきたのか激しく息を切らせていた。
「女将さん、空襲です」
「そのようだね」
静はあわてずそういった。芳郎も厨房の前掛けを外しながら厨房の奥から出てきた。
「香奈ちゃんはまだ・・・」
「帰ってきてないよ」
倉町は彼女が釣竿とバケツをもって出かけたことを知っていた。彼は彼女を見送った。彼はその彼女が帰宅したか確認したかったのだ。
「女将さん、おれ探してきます」
彼はそういうと店から出ようとした。が、誰かがんその手を掴んだ。それは秋絵だった。彼女は右手で彼の左手を掴んでいたのだ。倉町は少し驚いた顔でその手を見つめそして彼女の顔を見た。彼には彼女がそういたか理解が出来なかった。二人はそのまま見つめあった。
先に動いたのは秋絵だった。
「行っておいで」
彼女はそういって倉町の手を放したのだ。
「行ってくるよ」
その彼はそう言い残して店を出た。秋絵はその彼が出た引き戸をしばらく見つめていた。




