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霞ヶ浦物語〜若鷲は蒼天に翔ぶ〜  作者: 筑波 十三号
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2015年7月

 彼は町内の公園にいた。この日は天気がよく。真夏の太陽が燦々と輝いていた。この日はこの公園でフリーマーケットがも模様されていた。今日は日曜というだけあって多くの人が訪れていた。

あの日から三年が過ぎた。あれからというもの彼の何が変わっただろう。その時と同じ工場で作業員として働きその時と同じ中古で購入した軽自動車に乗り毎日その車で通勤をしている。彼は未だ独身ゆえ仕事帰りに通勤途中にあるスーパーやコンビニで夕食を購入して自宅に帰るのだ。その自宅もあの時と同じ阿見町内の古いアパートの二階に住んでいる。日当たりがよく真冬でもそれなりに快適に過ごせる。特に今の季節は洗濯物がよく乾くがあまり風通しのいい部屋ではないせいか熱くて過ごしづらい。エアコンを設置していない彼にしてみれば真夏となるとたまったものではない。

 その彼はこの日は彼も休みだった。彼は真夏は特に昼間は大型のショッピングモールなどで過ごすことが多かった。

 その彼の変わったところといえばパソコンを購入したことだろう。彼はあの後地元の家電量販店を訪れた。小説を書こう。あの公園でそう思った彼はその足で自分の愛車に乗りそこに向かったのだ。

 そこには日本のもの以外にもアメリカ、台湾、中国など様々なメーカーのパソコンが並んでいた。文房具店で万年筆と原稿用紙を買うという選択肢もあった。でも彼はそれを撰ばなかった。彼は小説を書くためにパソコンとプリンタ―を買うことにしたのだ。この現在の日本で執筆活動をするとなればそういう選択肢を選ぶのはごく当然の結果と言えるだろう。

 彼は多くのメーカーのそれから一台のノートパソコンを撰んだ。彼はそれまであまりそれを使用したことがなかった。何を撰んだらいいか全くわからなかった。だから店員に質問しながらそれを撰んだ。結果世界で一番売れているといわれたブランドのパソコンとよく聞く企業のプリンターを買った。自衛隊の退職金の残りに貯金を足しそれを購入資金に充てた。もちろんそれには零戦のシールが貼られている。彼としては紫電改の方が好きなのだがあいくにそれは見つからなかった。

 その彼はその日からパソコンで小説を書き始めた。その作品にはペンネームも添えた。


  倉町徹


 そう表紙になる部分にローマ字入力でそう打ち込んだ。彼がそうしたのは自分の本名で執筆するよりその方が小説家らしいような気がしたのだ。

 では、なぜこの名前なのか。もっと作家らしい名前にすればいいような気がするが彼はこの名前を選んだ。それは彼の記憶のどこかからかそれが湧いて来たのだ。

 現在、その名が書かれた本が出版され書店の店頭に並んでいる。 彼は戦争小説で作家としてデビューした。彼はあの時と同じ会社の工場で働いている。彼はの会社は週休二日制。仕事が早く終わればパソコンに向かうことはあるがその休みが執筆活動の主体だった。 

 彼はその作品が出版されるまで何度も何度も作品を書き直した。そうやって何作かの作品を書き上げた。そしてそれを何度か投稿した。彼の頭の中には『このテーマで読んでおらえるだろうか・・』という不安はあった。それでも彼はそのテーマで書き続けた。

 そのすべては第二次世界大戦時代の日本が舞台だった。いわゆる戦争ものだ。その作品の主人公は決まって戦闘機乗りだった。周囲は戦争の描写や詳細な時代背景などの評価を高く評価した。特に彼の飛行機の描写は実際にそれを操縦していたとしか思えない。そんな評価をよく耳にした。

 彼の頭の中にはその記憶があった。それがあるような気がしたのだ。彼は自衛隊に二年間在籍した。彼の頭の中には銃を扱ったものや軍事などの教育を受けた記憶もある。確でもそれが本当に自衛隊のものなのか彼には疑問でなかなかったのだ。

 平成生まれ彼にはとても考えられないことなのだが自分にはその記憶がある。彼にはそうとしか思えなかったのだ。パソコンに向かい目を閉じると戦闘機の呻りや銃砲の叫びが聞こえるような気がしてしまう。彼にとってこの執筆活動はその記憶をハードディスク上に取り出す作業でもあるのだ。

その毎日電子機器に向かう生活のせいか。それともその軍隊の記憶のせいか。それはよくわからないが彼は古い物が好きだった。だから昭和の遺物が出品されるフリーマーケットを訪れる。彼はこういう場所で古い物を探すのが好きだった。彼はここでいくつものそれを見た。古民具というやつだ。そこには文箱や箪笥などの家具、鍬や鍬など農機、囲炉裏に吊るす魚や茶わんなど生活用品、古民具ではないが中には疑刀など出品する店もあった。その彼が現在、執筆で使用している机はここで購入したものだ。それは古い文机だった。

その彼は今回は古いお金を買った。古札というやつだ。彼がたまたま歩いていると古銭。古い貨幣。それは昭和初期の日本のものらしいのだがそれを発見したのだ。聞けば古い紙幣。古札もあるというのではないか。彼はその店の出店者。白髪頭の小柄な壮年の男性にそれを見せてもらった。そのには様々な古札が封筒に束になって入っていた。彼は表に聖徳太子の肖像が描かれていたそれを希望した。それは百円札だ。現在でもこれは百円どして使用することが可能でもあるし古札コレクターいる。が、店主はそれの価値がよくわからないらしく束で安く売っていたのだ。

 その彼はそこを後にするときに一冊の本に気が付いた。

風の又三郎

その表紙を見たときにふと何かを思い出したような気がした。彼はその本を手に取って眺めて見た。その記憶にはその作者が好きな少女がいたような気がした。その少女はいつも彼の近くにいたような気がした。

 確か彼女は・・・

彼は彼女を思い出そうとした。そしてその彼はその記憶に吸い込まれるように記憶は遠のいていった。

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