一九九五年冬 無念
静との芳郎が厨房に立ち開店のための準備をし香奈が店の中を掃き掃除をしていた。いつのと違うのはそこに里美がいないだけだ。
「あのこはいつまで寝てるんだろうね」
「おねえちゃんめずらしく酔ってたらね」
「あの娘、酒強くないのにねぇ」
そういうと静は香奈に里美を起こしてくるように言った。そしてその香奈は素直に母親のいいつけに従った。
「おねぇちゃん」
香奈は里美を呼んだ。
でも返事がない。
「おねーちゃん」
今度は少し大きな声で姉を呼んだ。
「もう、おねぇちゃん。いつまで寝てるの」
香奈はそういって彼女の部屋の襖を開けた。
その瞬間香奈の心臓が止まった。そして全身の血が引くような感覚に襲われた。
「香奈ちゃん、どうしたの」
そこに記者に記者が現れた。彼はたった今目覚めたと言わんばかりで首に手ぬぐいをかけていた。
里美の部屋は座敷の奥にあった。そこは婿養子を迎えたら彼女ら夫婦の新居になる予定の部屋だった。
そこに記者は行ってみるといつもと様子の違う彼女のが立っていたのだ。倉町はその香奈の肩をふれようとした。すると香奈は全身の力が抜けたようにへなへなと倒れていった。
「香奈ちゃん」
倉町はそう叫びながら彼女の体を支えた。
「いったいどうしたんだい」
そういいながら静がやってきた。
その時の記者の視線が凍りついていた。静が不思議がってその視線の先を見つめてみるとそこには信じられないものがあった。
それは里美の遺体。
そこには彼女姉だった女の遺体がぶら下がっていたのだ。里美は梁に紐をかけ輪にした先に首をかけていた。香奈が見たときはそれがゆっくりと揺れれいた。




