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霞ヶ浦物語〜若鷲は蒼天に翔ぶ〜  作者: 筑波 十三号
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2012年 7月

 彼女は目が覚めった。いやそうではなかった。が、そのような感覚を覚えた。今まで夢を見ていたような気がしたのだ。

 その彼女は全身に汗をかいていた。それは夢のせいだった。その夢は悪夢だった。どこか狭い穴のようなところに誰か折り重なる世に何人が重なり合いその中で黒い煙と真っ赤な炎に包まれていく。まるで地獄のような夢だった。

 その彼女はあたりを見回した。どうやらそこは本屋のようだった。それはショッピングセンタの一角にある彼女の行きつけの店だった。確かそのはずだ。

 2012 July 7月

店主の部屋にはお気に入りなのだろうか夢の国のキャラクターと共にその文字がそれらしくデザインされた文字が書いてあった。そしてそのそばに鏡が置いてあった。

「これ・・・わたし」

そこには白いTシャツに夏らしく花柄が印刷されたスカートと白いミュールを履いていた髪の長い女性が映っていた。   

 そこに映っているのはいるのは間違いなくそれは自分の姿だった。でも何かが違うな気がした。

 彼女は普段はピンクのエプロンを身に着けそのエプロンにはヒヨコのアップリケがついている。長い髪は耳の辺りでゴムでとめツインテールにしていた。彼女はその姿でいつも働いている。

 彼女は肩にトートバッグをいつも掛けていた。それは女の子らしいかわいらしいデザインの物だった。それは決して高価なものではなかったが彼女はそれを気にっていた。そのバッグには彼女のもう一つのお気に入りが入っていた。

 それは本だ。文庫本と言われる小さな本だった。彼女はこの本が好きだった。だから週末の休日も仕事帰りにもよくここに立ち寄った。

 彼女は今まで何冊もの本を読んだ。それらはここで買った物もあったし他の本屋で買った物もあった。図書館で読んだものあった。その彼女は特に宮沢賢治が好きだった。もちろん彼の作品を何冊も読んでいた。

 銀河鉄道の夜、グスコーブドリの伝記、注文の多い料理店、セロ弾きのゴーシュ、雨ニモマケズ、やまなし、春と修羅など。数をあげたらきりがない。彼女はそれらの本を学校の図書館で借りて読んだ。

 その彼女は特に風の又三郎が好きだった。彼女はそれにカバーを掛け折り目もつけないように汚れもしわもつけないように大事に読んだ。そしてその本をいつも大切に鞄に忍ばせていた。

 でもこの本は彼女が買ったものではなかった。確か誰からかもらったものだった。それは誰だっただろう。確かとても大切な人だったはずだ。

 それはいつもの行動でいつもの光景のはずなのに何かが違うような気がしたのだ。確かにそこに映っている女性の姿は自分のものだ。それは間違いない。でも何かが違うような気がするのだ。

 彼女はこの日特に何も予定がなかった。今日は日曜で仕事も休みだった。本が好きな彼女は暇を持て余してかここにやってきたのだ。

 彼女は保育士になりたくて地元の高校を卒業し他て短大に入学した。短期大学というやつだ。彼女は土浦のそれに入学したのだ。

 その彼女は今阿見町内の保育園で働いていた。彼女は自宅から愛車の軽自動車で保育園まで通っていた。

 その彼女は書籍の書棚を順番にのぞいていった。何かおもしろそうな小説はないか。そう思いながら一冊づつ背表紙ながめていった。彼女は名作も最近の純文学もライトノベルといわれるティーン向けの物も好んで読んだ。

 この本屋には恋愛や男女の心理学などの本が何冊もあった。そこには『思い通りにできる』などの見出しがつけられたものも少なくなかった。

 彼女の職場には若い女性職員が何人もいた。その彼女らと恋愛が話題になることはまずらしくなかった。異性に好かれることと見返りを望み、執着する。それが恋愛だと思っているようだ。そして異性を思い通りにしたがっている。彼女にはそんな気がしてならなかった。

 彼女にはその同僚らの思う恋愛というものが彼女には受け入れがたかった。それは相手に嫌われたくない。裏切られたくないという意思がそうさせているような気がする。

 それを望むなら相手に媚びてはいけないし見返りを求めってもいけない。執着してもならない。自分をごまかすのは厳禁だ。それをもって相手の幸せに貢献する。それが好きというのだ彼女は思っている

 彼女は名作なら宮沢賢治が好きだった。が、最近の純文学でもライトノベルでも特にお気に入りの作家はいなかった。本屋や図書館などで気になった物を読む。そんなスタイルを貫いていた。その彼女の目に一冊の本が目にとまった。

 蒼天

 その瞬間、彼女はなぜか恋人に再開したような衝撃を感じた。この作品の作者の名前にはどこかで聞いたような記憶があるような気がする。が、その彼女は現在、恋人と呼べる人物はいなかった。そして過去にもそのような男性がいたこともなかった。彼女が通っていた高校は県立で男女共学だったが男子生徒が極端に少なかった。そのせいかそういう機会に恵まれなかった。

 でもなぜか過去にそのような異性がいたような気がした。とても優しくて頼りになるそんな男性がいたような気がした。彼女流いうと媚びることなく見返りも求めず執着もせず純粋にその人の幸福を願った相手だ。交際していたとはいえなかもしれない。彼とはのつながりもなかった。が、心はいつもつながっていたような気がする。そんな感覚が彼女の胸の中にあった。

「彼に会いたい」

彼女はそう思った。でもその彼が誰だかわからない。でもまたその人に会える予感もしていた。

 その彼女はその本を手に取るとなんお躊躇することなく精算した。


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