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霞ヶ浦物語〜若鷲は蒼天に翔ぶ〜  作者: 筑波 十三号
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一九四三年 霞ヶ浦湖畔

 バスは揺れていた。それは道路のせいなのだろうか。それともバスそのものの性能のせいなのだろうか。そのどちらちが原因だったとしても乗り心地は快適とは言えない。

それには背広を着た男が乗っていた。そして彼の周りにいる人々の服装は男性は国民服。女性は絣のモンペ。その光景からすると彼のそれは浮いていた。

 国民服とは一九四〇年に定められた日本国民男子の標準服装である。そして絣のモンペ。これは元々、女性のズボンのような作業着で動きやすく簡素で女性の定番の服装だった。国はこの双方を強く推奨していた。

 そしてその電車が少々乱暴にブレーキをかけた。その車両は小刻みに揺れた。どうやらその電車は目的地についたようだ。

常南バス

当時の霞ヶ浦航空隊の人員輸送行うため一九二六年に路面電車が走っていたが予算の都合や需要などの面で一九三八年に全面廃止された。

 男はその時目覚めた。その快適とはいえないあの車内で彼は熟睡していたのだ。その彼はまだ眠気が残っていいるのだろうか。眠い目をこすりながらバスを降りた。

「阿見・・・」

彼は寝ぼけ眼でバス停をみた。そこにはその二文字が書かれていた。男は二、三度ぼりぼりと頭を掻いた。おそらくだが頭が痒かったからではない。多分、何かの違和感というか不自然さを感じたからだろう。

 その男は上着のポケットをまさぐった。そこから名刺が出てきた。

 彼は数秒間それを凝視した。それがすむとその名刺をポケットに押し込むと今度は左肩にぶら下げられた鞄に手をいれ中をまさぐった。

 彼はどこでそれを手にいれたのだろう。そこから時計が出てきた。その時計は茶色いベルトにつけられた白い文字盤に日本海軍とかかれたものだった。

 彼はその時計の文字盤を見た。そしてそれに耳をあてた。おそらくそれはそえれの時を刻む音を確認したのだろう。

 動作の確認が済むとそれも名刺同様ポケットに押し込みどこかに向かって歩きだした。その足取りはどこか目的地があるようだった。彼はこの町が初めてではないのだろうか。




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