第四話
第四話
メドゥーサを退治し、おまけにアンドロメダまで助けた勇者ペルセウス。
彼は女神アテナに拝謁します。
女神アテナは美しく気品あふれる微笑を浮かべ、ペルセウスの労をねぎらいます。
ペルセウスはアテナにメドゥーサの首を献上します。
死んでもなお、石化の魔力を持つメドゥーサの首。そんな恐ろしいものを何故、アテナに献上するのか、それには理由があります。
元々、女神アテナが勇者ペルセウスにメドゥーサ退治を依頼したのです。
メドゥーサによって多くの猛者が石にされたことに頭を悩ませていたアテナ様。
アテナなら聖闘士に退治してもらえばいい。と言いたいところですが、この設定は80年代アニメのお話。フィクションでございます。
いや、失礼、よくよく考えれば、ギリシャ神話も空想の世界の話でございました。
とにかく、メドゥーサの悪行に頭を悩ませていたアテナ様。誰かこの厄介な怪物を退治してくれる勇者はいないのかというところに現れたのが、ペルセウスでございます。
こうして、ペルセウスはメドゥーサ退治を任されるわけですが、そのとき、アテナ様は助言をいたします。
メドゥーサを正面から見るといけないので、盾を鏡のように磨き、メドゥーサを映しながら戦いなさいと。つまり、この戦術を立てたのはアテナ様だったわけです。
こうして、ペルセウスはアテナ様との拝謁に至るのですが、彼はどこか躊躇しているようにも見えます。
「何か、私に頼み事でもあるのではないか、勇者ペルセウス」とアテナ様。
「実は、妻にしたい女性がいます」とペルセウス。
「それはアンドロメダのことですね」と微笑むアテナ様。
「はい」と言って視線をさまよわすペルセウス。
分かりやすい性格のペルセウスでございます。つまり、メドゥーサを退治した褒美にアンドロメダとの結婚を認めてくれと言いたいのでございます。
「アンドロメダは人間でありながら、神よりも美しいと驕ったそうですね」
「いえ、それは彼女が言ったことではないのです。彼女の母親が冗談交じりに口にしてしまったことが海神ポセイドン様の怒りに触れたようなのです」
「はぁ、ポセイドン様も大人げない。そのようなことでお怒りになるとは・・・・」
そう言いながら、アテナ様、眉間にシワを寄せています。
「分かりました。あなたとアンドロメダの結婚を認めましょう。幸せにおなりなさい」
アテナ様は眉間にシワを寄せながらも、ペルセウスの申し出を快諾したのでございます。
こうして、ペルセウスとアンドロメダは無事に結婚、幸せな人生を送ったそうにございます。
・・・・ございますが、この話にはまだ裏があります。
ペルセウスがアテナ様の神殿を出てからしばらくして、アテナ様はメドゥーサの首を持ち上げます。そのときのアテナ様の形相はまるで悪鬼羅刹のよう。
何故、そのような表情を浮かべたのかというと、ここにもまた理由があります。
「この私よりも美しいなどと、驕るからこのような目に合うのよ」
そう言って、アテナ様はメドゥーサの蛇の髪を強く掴みます。ちぎれんばかりに引っ張ります。
そんなアテナ様の脳裏に浮かぶのは蛇の髪を持つ恐ろしい形相の怪物ではなく、美しい髪を持つ美少女の姿。この美少女、信じられないかもしれませんが、実はメドゥーサであります。
実は自分よりも美しいと評判の美少女メドゥーサに嫉妬したアテナ様、メドゥーサを醜い怪物に変貌させてしまいます。
それで気が済めばまだよかったのですが、怪物になったメドゥーサの被害者が続出。困ったアテナ様はメドゥーサを退治してくれる勇者を求めたのでございます。
つまり、今回の場合、勇者ペルセウスに自分の後始末をさせただけなのでございます。その引け目があるから、アテナ様はペルセウスの結婚を認めたのでございましょう。もしかすると、同じような理由で神の逆鱗に触れたアンドロメダを見て、少し良心が痛んだのでしょうか?
どちらにしろ、メドゥーサも被害者だったようです。
彼女自身、本当は自分が醜い怪物にされたという自覚がないまま、ただ乙女のように王子様を待ち続けたのかもしれません。
本当にお気の毒に。