彼はただただ壁を破る
彼が何を思い、何を感じたかを考えて頂けたら幸いです。
周りが光に包まれ、俺はその空間から出る。俺がさっきまで入っていた場所は小屋らしき所だった。
その小屋に扉はなく中はただただ光っていた。そして俺は分からぬまま、本能に任せ歩く。
着いた先は真ん中で牛を焼いている広場の様な場所だった。そこにいた岩のような見た目をした奴が俺の事に気づいて口を開く。
「よし来たか。揃ったようだな」
「はあ」
状況を全く理解できていない俺は曖昧な返事しかすることが出来なかった。状況を理解しようと俺は周りを見渡した。
そこには緑のマントを羽織りピンクの髪の上から緑の頭巾を被って弓を持っている奴や、豚に乗って、斧らしきものを持っている奴など様々な見た目をした者達がいた。
そこで俺は初めて自分の姿を確認した。全身が骨で、両手には大きな金色の爆弾を持っている。
ふと、気づくと自分と似たような見た目の奴が近づいていた。奴はおもむろに口を開いた。
「何をするかは分からないけど頑張ろう」
「ああ」
俺は似たような奴がいた事に安堵し、握手をしたいぐらいに感激したが、それを言葉に表すことはできず、手はお互い爆弾に塞がれており握手はできないことは分かりきっていた。
岩がまた口を開いた。
「お前ら任せたぞ」
奴はそれだけを言い残し、光に包まれ消えた。俺は激しく混乱し、そこら中を走り回った。
気づくと同じような見た目をした彼も消えていた。俺は唖然とし止まっていた。そして光が俺を包む。
周りの風景が変わり地面に生えていた芝生の色も心なしか濁っていた。
前には破壊された建物と壁があり、岩と緑マントが大砲に攻撃していた。俺の体は無意識にそこに向かっていた。
走りながら、俺は俺に課せられた使命を感じた。そうだ、俺の使命は壁を壊すことだ。そう感じた瞬間、視界から周りのものが消え目的の壁だけが見えた。
「任せたぞ」
岩がそうつぶやき。俺は岩の横を通り抜け壁に着く。壁は傷ついており俺が持っている爆弾で破壊できそうだった。
「頑張れよ」
俺が独り言を呟き終わったと同時に、爆弾が爆発した。