パート6
「まだいてぇ……」
あの後、あの子が必死に真里菜を止めてくれたから(俺を庇うように俺の前に立っていただけだけど)、なんとか俺は九死に一生を得た。
そして今は俺の隣に俺の服を着た少女。向い合わせになるように真里菜と香里さんという形で、テーブルを囲んでいた。
「……事情は分かったわ。でも一体その子をどうするつもりなの?」
こういう時、すぐに話を信じてくれる幼馴染をありがたいと思う。
「しばらくは、というか何か身元が分かるまでここに置いておこうかなって考えてる」
「あんた本気で考えてるの? だってその子は喋る事も出来なければ、両手も動かす事が出来ないんでしょ?」
「確かに、そうですね……。いくら幸一さんでも、意思疎通が出来ないのでは……」
「あ、その事なんだが……」
俺がこの子についてまだ言っていなかった事を言おうとしたら、真里菜に遮られた。
「それにこんな幼い子近くに置いといたら、あんた絶対襲うでしょ」
「お前俺を何だと思ってんだ!? 俺はロリコンじゃねえぞ!」
「真里菜さん。幸一さんはこの子を襲ったりしませんよ」
「そうそう。香里さんの言うとおりだ」
まったく。これだから独断と偏見で判断する幼馴染は。その点じゃあ、香里さんの方が――。
「ただ、犯すだけです」
「それ意味変わりませんから! というかそういう事は言っちゃダメと言ってるでしょ!」
ダメだ、この二人が揃うといろんな意味で話が先に進まない……。
その時だった。
「………………(あ、あの……)」
「? 幸一、あんた今何か言った?」
「あーいや、俺じゃなくてだな。今のはこの子から」
「はあ? あんた何を言ってるのよ。この子は喋れないんじゃ――」
「……………コクン(確かに幸は話す事が出来ないです)」
「…………え?」
「こ、幸一さん。い、今のって……」
真里菜だけではなく、あの香里さんもあまりにも異常な光景に驚いているみたいだ。なんとも珍しい。
そんな二人には、俺はさっきから話すことが出来なかった事を、はっきりと口にした。
「なんかこの子、幸って名前なんだけどなんかテレパシーで、伝えたい事を伝えられるみたいだって」
「「ええ――――――っ!?」」
「俺もさっき知って驚いた」
「そ、それにしたってあんた冷静にしすぎでしょ!? て、テレパシーだなんて! さすがにそんなの信じられないわよ!」
「風呂に入る前に幸がテレパシー使ってきて自己紹介してきてさ。うおーすげえって」
「あんたのそれは驚いたじゃなくて、ただの感想じゃない! しかも全然驚いてないでしょ!」
「まあ、とりあえず落ち着けって」
「落ち着いてりゅわよ!」
落ち着いているなら、せめて噛まないで欲しい。