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不幸で幸せな少年と不幸少女  作者: Douke
エピローグ
60/61

パート57

「そんな時、私はあなたと出会ったわ」

「俺?」

 それは、あの公園であった事を言っているのだろうか。

「初めてあなたと会ったとき、私は実験体Fの近くにいすぎて彼女の不幸に影響を受けていたの。それで不幸をまとった私は、誰かを巻き込まないように自分の存在感を不幸のを消すのと同じように一時的に無くしてたの」

「それで、あんなことを言ったんだな」

 ――…………あなた、私が見えるの?

 あの時に呟いてた言葉は、そういう意味だったのか。

「あなたを見た途端、この人は実験体にもなっていないのにこんなにも大きな不幸を背負ってるというのが分かったわ。けれど気にせずに、その不幸を自分の中で抑え付けている事に驚いた。それで思ったのよ。彼なら、彼女の事を救うことが出来るんじゃないかって」

「…………」

「時間はかかったけど、なんとか実験体Fに不幸の使い方を教えて、彼女と私が施設を抜け出すタイミングを見計らってあそこから逃げ出した。あの男は実験体Fを連れ戻したかったのもあるけど、真の目的は私の居場所を彼女から教えてもらうためだと思うわ」

 なぜならユキは、唯一不幸を無力化出来る存在だからだろう。そんな貴重な実験体を放っておくなんてありえない。

「二人で必死に逃げてたんだけど、彼女が先に倒れちゃったのよ。それが運よくこの建物の前で、しかもあなたがくらしているアパートだったのは、本当に奇跡に近いわね」

「ちょっと待て。あの時お前はいなかったが……」

「ええ。アパートの陰に隠れていたから」

「隠れているユキさんを見つけて匿ったのは、わたしです」

 やってることがどこか子供っぽいユキと、無邪気な顔で高橋さんが何の躊躇いもなくそう言ってくる。そんな二人に、俺は呆れていた。

「……そんな大事な事、なんで俺に言ってくれなかったんですか」

「ユキさんに口止めされていたので」

「久しぶりにあなたに会って、彼女を本当に救えるのかどうか確認したかったのよ。まあ、そんなわけだから今後も彼女をよろしくね」

「お前は幸に会いに行かなくていいのか? 幸も会いたがってると思うんだが……」

「それは無理よ。本来なら、私はまだあの施設にいるはずなんだから」

「どういう意味だ?」

「確かにあの子を施設から逃げるときに手助けをしたのは私よ。でも、彼女には私も逃げるという事は伝えてないのよ」

「……意図が分からないんだが」

「私の傍にいるだけだと、彼女を救う事は出来ない、という事よ。同じってわけでもないけど、似たような体質を持っているあなただからこそ、不幸を抱え続けていても生きていけるという事を教えられるのだと」

 つまり、同じ境遇の俺なら幸を本当の意味で救うことが出来るという事か。

 はたして俺にそんな役目が務まるかどうかは分からないが……。

(確かに、俺にしか出来なさそうだな……)

 俺も幸ほどひどくはないが昔、この体質のせいで様々な経験をしてきた。なんども挫けそうになって、死にたいと思ったことすらあった。けれど、真里菜や洋介たちのおかげで今の俺がある。

 その事を、今度は幸に教えてあげることが出来るんだったら、この役目をやり遂げてやる。

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