パート54
あれから、三日経った。
あれほど暴走していた幸は、どういうわけか以前よりも体の調子は良くなったらしく、声はあれ以来また出せなくなっていたけど、代わりに両腕を動かすことが出来るようになっていた。
幸は自分の腕が動くことに喜んでいて、俺が家事をしているとやたらと積極的に手伝うようになっていた。幸の体の事を考えると控えた方がいいのかもしれないけど、でも俺は少しでも運動をさせておいた方がいいと考えて、なるべく簡単な作業をやらせることにした。
それでも幸には全部が初めてなのか、どれも真剣な眼差しでやっていた。
それを横で笑いながら、俺はずっと考えていた。
あの後、五島からの接触はまったくなかった。もう幸の事は諦めたと思いたいけれど、あのマッドサイエンティストの事だ。そう簡単にはいかないだろう。
工場であった騒ぎについては、もともと住宅地から離れていたからかあまり大事にはならなかった。それでも洋介と真里菜が情報を広まらないようにしてくれたらしい。本当に、二人には感謝しても足りないな。
そして……幸にそっくりのあの少女について。
どうやらあの子を見たのは俺だけみたいで、他のみんなは見てないらしかった。
俺が立ち止まるたびに助言をくれた少女。幸にそっくりのようで、まるでどこかが違う。
遠い記憶で会った気がするけれど、まだ明確に思い出せてない。はっきりと覚えている事といえば、幸と同じ名前だという事。そして、カラスが友達という事だけ。
また、いつか会えるのだろうか……。
「幸一さん、少しいいですか?」
幸と一緒に洗濯した服をたたんでいると、香里さんがインターホンを鳴らしてやってきた。
「なんですか?」
「幸ちゃん抜きでの話があります。いいですか?」
「幸抜きで? まあ、いいですけど……」
幸に少しだけ出かけてくると言ってから香里さんの後についていくと、香里さんが普段住んでいる『管理人室』までやってきた。
「あ、先に言っておきますけど別に変なことはしませんよ?」
「誰もそんな事聞いてませんからね!?」
「え、幸一さんって女性には興味がないんですか?」
「そりゃあ人並みには一応ありますよ! つか、このやり取りする必要ないですよね!?」
「あら、ばれてしまいましたか」
小さく舌を出して誤魔化す香里さんだった。
……いや、うん。もう慣れてるけどさ。
「幸一さん。あなたを呼んだのには理由があります」
「……まあ、何の意味もなく俺を呼ぶのはおかしいですからね」
そこはつっこまないように、と苦笑をしながら言ってきたけれど、すぐに真剣な表情で俺に問いかけてくる。
「おそらく、あなたが驚くようなことがこれから先あります。それも予想が出来ないような事が。それでも、幸一さんは怯えずに進めますか?」
「……そんなの、幸の件だけでもう充分に慣れましたよ。俺は俺のやり方でいつも通りやりますし、決して挫けたりしません」
「――よくもまあ、あれだけ怯えてたのにそんな大口が言えるわね」
「え……?」
管理人室の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。香里さんがため息をつきながら扉を開けるとそこには――。




