パート52
――優しすぎて、私には辛いです。
「……優しすぎる、か。そんなの自分ではあんまり意識してないんだけどな」
自分に厳しく、他人に優しくがモットーの俺にとって、それはあまりにも当然のことだった。
俺には不幸が訪れやすい。だからといって、それに他人も巻き込んでしまうのが一番嫌だった。
それが今の俺には一番慣れていることだし、怪我をするのは日常茶飯事だ。今更何も言うまい。
だからなのか、自然と周りに気を使う。それで気づいたらすぐに行動する。それが他人から見たら、いつのまにか優しくて気を使う人、となっていた訳だ。
まあ、これも全部真里菜とか菊恵先輩達のおかげなんだけれども……。
「………………(……このまま、幸一さんが逃げてくれた方が良かったです)」
「それは、どうしてだ?」
「…………(これ以上、幸一さんに迷惑をかけないから)」
俺を睨んでいたその目は、次第にどこか虚空を見つめるかのように視線をずらしていった。
「…………(さっき五島さんが言ってた通り、私は『不幸の塊』です。ただ傍にいるだけでも、幸一さんや真里菜さん達に迷惑をかけてしまうのです。そんなの……そんなのは、もう耐えきれないんです。もう誰も傷つけたくないんです。見たくもないです。嫌なんです。だから誰にも近づかない。誰もいないところに逃げようとしてたんです。なのに……幸一さんが私を助けてしまったんです)」
無表情のまま、テレパシーで俺に話し続けてくる幸の目から、再び涙が流れ始めた。
「…………(幸一さんがくれた優しさや温もり。とても嬉しかったです。あんなの、あまりにも久しぶりすぎて、大きすぎて……。だから幸のせいで不幸な目に遭うのも見て、余計に辛かったんです。私はここにいちゃいけないんだって、思い知らされたんです。だけどこんな温もりは今しか与えられないって思って、結局幸一さんの傍にいて。そのせいで幸一さんにはいろんな迷惑をかけて……)」
「……………」
「………………私なんて(……あのまま死ねば良かったのに)」
今日初めて聞いた幸の声と同時に、テレパシーも聞こえた。
これらは全部、幸のいままで溜めてきた本心なんだろう。
幸と出会ったときから今日まで、俺は幸と過ごしてきてどう思いながら幸の傍にいたか。
幸がずっとそんな事を想いながら俺と一緒にいたなんて……なんて、俺は大馬鹿野郎なんだ。
誰よりも不幸な目に遭う俺が、一番気付いてやらないといけないというのに。
まったくもって……自分にも幸にもため息がつくな。
だからこそ、俺の本心もここで言わないといけないんだろう。
いろんな奴らに助けてもらって、あの子から背中を押されてここまで来たんだから。
それに……どうやら幸には言っておかないといけないことがあるみたいだしな。
俺は幸の目の前でしゃがむと、以前に幸が酔っぱらって頼んできたあの時と同じように、幸を優しく抱きしめてやった。




