パート45
「この…………アホンダラああぁぁぁぁぁっ!」
「げぶらっ!?」
俺が答えようとしたその時、いきなり後ろから蹴り飛ばされた。こんな時にこんなことをする奴なんて、俺の心当たりにあるのは一人しかいなかった。
「あんたね……自分から探しに行っといて、なんで迷い始めんのよ!」
「やっぱりお前かよ、真里菜……」
ここにこいつが来てるということは、洋介の奴がここの事を見つけて真里菜に連絡したんだろう。でも京香や菊恵先輩がまだいないということは、足の速い真里菜だけが先にここに来たんだろう。
「さっきまでの会話、最初から聞かせてもらってたから」
「だったら分かるだろ。このままこいつらに連れて行ってもらった方が……」
「この馬鹿! あんた本気で考えてるの!?」
真里菜のその言い方に、俺はいらついた。
「ああ、だってそうすれば幸の体質を無くすって――」
「本当にこいつらが幸ちゃんの体質を無くすことが出来るって、いつ言ったのよ! さっきの言い方だと、ただの知ってるかもしれないという仮定だけ。それにもし、その実験とやらで幸ちゃんを苦しめるとしたら? その途中で幸ちゃんが命を落とすとしたら? あんたそこまで考えて言ってるの?」
「……………」
真里菜に言われて、そこまで考えていなかった。幸の体質の事しか頭になかった。
確かに幸の体質は、あの優しい幸にとって辛いはずだ。周りに望んでもないのに自ら不幸を招いてしまうなんて体質。
その体質を使っての実験を、五島さんは行おうとしている。
それを……幸が嫌がらないはずがない。
もし真里菜の言うとおり、その実験とやらが幸を苦しめるとしたら。死なせてしまうとしたら。
だとしたら……。
「……あーあ。日本語って便利だけど、難しいよね。まさかそんな些細な言い方で気づくことが出来ちゃうなんてさ」
「……ってことは、あんた」
「そう。僕たちは体質を埋め込むことは出来るけれど、逆のことは出来ない。出来るかも、しれないってだけでね」
「……………」
そこまで聞いて、俺はもう決心が決まった。
「真里菜、合わせられるか?」
「まったく……ギア掛かるの遅すぎ」
「悪いな」
たとえ幸がこいつらに連れて行かれることを望んだとしても、俺は悪いけどそれを阻止させてもらう。
「ふん……。やはり刃向うか」
「幸は、あんたたちの道具じゃない。俺たちの友達なんだ」
「いいだろう。その志が本物かどうか見せてみろ」
なんの合図もしないで、俺と真里菜は同時に走り出した。
★ ★ ★
「…………」
どう、して?
室長が幸一さんを説得して、そのまま放ってもらいたかったのに。
幸のことなんて、もう忘れてほしかったのに。
なのに……なんで?
「羨ましいねぇ。これが友情ってやつかな?」
だというのに、これも想定内だったのか室長はただ笑うだけだった。




