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パート44

「不幸を溜めて、招く体質だって?」

 五島さんの言っている意味が分からず、さっきから俺は言っている言葉をただ復唱してるだけになっていた。

「君でも分かるようにゆっくり説明してあげよう。僕が行っている実験は確かに不幸を無くす実験をしている。そこで考えたのが、他の人にある不幸を集めて、それをまとめて無くす体質を人為的に作り上げることだ。けどこの実験はかなり難しくてね。体質を作り上げるなんてのは、自然環境そのものを変えてしまうも当然だからね。それでもなんとか成功はしたんだけれど、失敗が多くてさ」

 まあ、これも予想範囲内だけれど。と、苦笑しながら語る五島さん。

「体質を作ることは出来たんだけど、なかなか不幸を消す体質が生まれなくてね。不幸に関する体質はできるようになったけれど、思った通りにはいかない。ここにいる実験体Fがいい例だ。彼女の体質はかなりはた迷惑でね。不幸を集めるどころか、自ら作り上げてしまう体質になってしまった。しかも、その影響でなのか体のあちこちに不具合が生まれてね」

 それはつまり、しゃべれないだとか、両腕が動かすことが出来ないことなのか。

「まあ君も分かってるとおり、話せないこと。腕を動かすことが出来ない。あとは顔の表情を変えることが出来ないこととかだね。さらにたちの悪いことに、実験体Fに触った人間には不幸が伝導してしまうのか、不幸が一瞬だけど訪れるようになってしまう」

 それを聞いて、俺は真里菜が幸の髪に触れた時に、その直後にゴキブリが出てきたのを思い出した。あのときに幸が何かに怯えたように真里菜から離れたのは、幸が自分の体質について分かっていたからなのか。

「ほかにもいろいろあるんだけどね……。まあ今はいいかな。ここまでで質問はあるかな?」

「…………とりあえず、あんたは最低な奴だってことが分かった」

 おお怖い、と肩を竦める五島さん。

 今すぐにでも殴りたいけれど、そうするとまた俺は、隣にいる男に組み倒されてしまうだろう。

「それはいいとして、僕たちが今回ここにいるのはね。実験体Fを連れ戻しに来たんだよ」

「幸を……連れ戻すだって?」

 ここまで聞いて、黙って連れ戻させるわけにはいかないに決まっている。

 けれど五島さんには、俺がそう思っていると分かっているのか、こう聞いてきた。

「君がどう思ってるか知らないけど……彼女自身、この数週間ははたして幸せに過ごせていたのかな?」

「え……?」

「彼女は自ら、不幸を作り上げる存在になってしまっている。そんな彼女が、君と過ごしてきて幸せというものを感じるということが出来るのかな?」

「そ、それは……」

 ここに来るまで、考えていたことだった。

 俺は幸を楽しく、幸せに過ごせるようにしてきたつもりではある。

 でも、それは本当に、幸にとって幸せだったのか。

「……だとしても、あんたみたいな奴に幸は渡せない」

「へえ、言うね。それじゃあこう考えてみてはどうかな? 僕たちは体質を作ることが出来ると同時に、それを無くす方法も知っているとしたら」

「なっ……」

 確かにそれは。

 体質を作るなんてふざけたことが出来るとするなら、その逆のことも出来るはず。

「実験体Fにはあと少しの実験しか残されていない。それさえ終われば、この子を君の元に返そうと約束しよう。もちろん、体質を無くしてね」

「……………」

 それは……たぶん、それが一番いい方法なんだろう。

 でも、本当にそれは正しいのか。

 分からない。もう俺には……何が正しくて、何が違うのかが。

 幸にとっての幸せが……俺のやってきたそれとはまったく違うのかもしれなかったのか。

「答えは決まったかな」

 ゆっくりと考える時間も与えられないまま、五島さんが訪ねてくる。

「お、俺は――」

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