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パート43

 カラスを追いかけていたら、もう使われていない古びた工場にたどり着いた。確かにこの辺りはただの散歩でも来ないから、隠れるとしたらうってつけの場所だ。

 中に入って幸を探そうとしたけど、その必要はなかった。

「やはり、来たか」

「あたり、前だ。あんな変な切られ方されて、黙ってる、訳にはいかないだろ」

 ここまで全速力で走ってきたから、言葉がとぎれとぎれになっている。俺がこの工場の入り口に立っている限り、こいつはここから出られないだろうから、息を整えるためにゆっくり深呼吸をする。

「……なるほど、彼が例の青年だね?」

「はい、そうです」

 俺が息を整えていると、男の後ろからまた知らない白衣を着た男が現れた。いや、元からいたんだろうけど、俺が気づいてなかっただけか。

「どうもこんにちわ。田中幸一君だよね?」

「そうだけど、あんたは?」

「これは失礼した。僕の名前は五島研吾いつしまけんごって言うんだ。この近くにある研究所の、室長を務めている」

「研究所……? それに室長って……」

 確か幸を居候すると決めて、真里菜と香里さんに半信半疑で話したあの研究所のことか?

 いや、でも、あれはあくまでも俺の予想だ。まさか当たるだなんて……。

 しかも、この五島って人は自分のことを室長だって言った。

「つまり、あんたが一番偉いってことなのか?」

「まあそう思ってもらって構わないかな。それと怒らないで聞いてほしいんだけど、幸ちゃんをあんな体質にしたのも、僕がそう命じたからだ」

 ――それを聞いた途端、体が動いていた。

 けれど殴りかかろうとしたその腕は止められ、地面に組み倒されてしまった。さらに起き上がれないように、腕を背中に回されて拘束までされてしまった。

「落ち着け、少年」

「落ちつけられるか! こんな、幸をなんだと思ってやがる!」

「そうだね……僕から見たら、これ以上ない子だと思ってるよ。もちろん、研究材料としてね」

「ふざけんな!」

 なんとか拘束から逃げようとしてけど、男の力が強すぎて動くことすら出来なかった。

「ところで聞きたいんだけど、君は彼女の体質をいったいどこまで知っているのかな? もし知りもしないで怒ろうとしたら、それはとても失礼だと思うんだけれど」

「なっ、それは……」

 そういえば、俺は幸の体については両腕を動かせないこと。それとしゃべれない代わりにテレパシーを使えること。これぐらいしか知らない。

「知らないみたいだね。なのに怒ろうとしたのかい?」

「ぐ……」

「別に構わないよ。むしろ分かる人がいる方が凄いと思うよ。僕はとても心が広いから許してあげよう」

 満面の笑みを浮かべる五島さん。この人とはまだあって間もないというのに、何故かその笑顔がとてもうざかった。

「そして優しい僕は、そのことについても説明してあげよう」

「…………!?(ちょ、ちょっと待ってください!)」

 すると、頭の中に響く声が聞こえた。

「幸……幸、だよな。その声は。やっぱりここにいるのか!?」

 けれど頭を動かして周りを見渡しても、幸の姿はどこにも見当たらない。

「あーもう……。姿を消させてもテレパシーだけは健在か……。まあいいよ。君の意志は尊重しない」

「…………!(幸一さんは関係ない人です! だから、だからどうか……!)」

「うるさいよ。またあの悲劇を繰り返したいのかい?」

 五島さんが後ろを向きながら睨むと、幸の声が聞こえなくなった。

「さて、と。外野が黙ったところでさっそく話していこうか。ちょっと長くなるから、離していいよ」

「分かりました」

 ようやく、俺の拘束が解かれた。もしずっとこのままの状態で話されたらどうしようかと思っていたところだった。

「まず何から話していこうかな……。まずは僕たちの目的から話しちゃおうか。君はこの世界は二つに分けるとしたら何を思う?」

「二つに? ……生物と自然、とか?」

「そこでその二つになるのもどうかと思うけど……まあ発想は間違ってないかな。そう、大体そんな感じだね。ちなみにほかにも答えはたくさんあるけど、ここでの答えは――『幸せか、不幸か』かだ」

「幸せか、不幸……?」

 自分の体質について関連のある言葉が出てきて驚いたが、五島さんはそんな事関係なしに話を進める。

「この世界にはたくさんの幸せが溢れている。些細な幸せから、大きな幸せまで。けれど世界は平等にならないといけないのか、不幸という逆のものも溢れている。幸せだったのに、いきなり不幸な目に遭うことなんて誰しもが経験したことあるはずだ。そこで僕はこう考えた。もし、この世界に不幸というものが無くなるとしたら、と」

 それは、常日頃俺も思っていることだった。

 もし不幸というものが無くなったら。毎日危ない目に遭わなくて済むし、怪我をすることだってない。そんなの、きっと俺だけじゃなくて誰もが思ってることだと思う。

「そうすれば世界には幸せしか訪れない。きっと誰もが喜ぶことだろう。そのための研究を、僕は行っている」

「不幸をなくす、研究……?」

「具体的な内容としては……不幸な目にあった子供を集めて、他人の不幸を集める体質を作り上げることだね」

 ちょっと待て。

 途中までいい話、のはずだった。なのに最後のそれはなんだよ。

「ちなみに君の言う幸ちゃん。こちらでは実験体Fと呼ばれていてね。『不幸を作り、招く』体質を、彼女は持っている」

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