パート42
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……この建物に隠れてから、どのくらいの時間が経ったんだろうか。
多分、あの人たちはきっとまだ探しているはずだ。だとすると、そろそろこの場所からも離れた方がいいかもしれない。
そう思って建物を出ようとしたら、建物の入り口から人が二人入ってきた。もしかして……。
「……もしかして、あの青年かと思ったかい?」
「…………!」
もう、二度と聞きたくなかった声だった。
建物に入ってきたのは、幸のことを実験体にしていた室長って人とその助手だった。
「まったく、君がたった一人であの施設を抜け出すことが出来たのは非常に驚いたよ。君の体質だったら絶対にどこかで止められると思ったらからね。でも、まさかその体質をもう使いこなせるとは思ってなかったよ」
「………………(……なんで、ここに)」
「愚問だな。そんなの決まっている。お前を連れ戻しに来た」
それを聞いた途端、全身に寒気が走った。
また、あの嫌いな場所に戻らされる?
そんなの絶対に嫌だ!
「ちなみに別に断ってくれて構わないよ。ただ――周りの人を傷つけるその体質ではたして、どれだけ犠牲にしながら生きていくのかな?」
「――――」
だけれど、室長の言葉を聞いてさっきの幸一さんが車に撥ねられる光景を思い出した。
幸のせいで、幸一さんに怪我をさせてしまった。運が悪かったら死んでいたかもしれない。
そう。単純なことなのは分かっている。
幸は――誰かと幸せに過ごすことは許されない存在なんだと。
あれは、それを守らなかった罰だろう。
たとえここで逃げ切ることが出来て、幸一さんの所に戻ったとしてもまた同じことが繰り返されるだけ。いや、もっとひどいことになるかもしれない。
あの嫌いな施設に戻るのは嫌だ。でも、優しくしてくれたあの人たちを不幸な目に遭わせるのはもっと嫌だった。
それなら、もう二度と誰とも関わらずに一人で死んでいった方がマシだ。
「…………」
「……どうやら、決心してくれたみたいだね」
どうにかこの人に対する恐怖心を抑えながら、ゆっくりと頷く。
そう。これが一番正しい終わらせ方なんだ。
そう自分に言い聞かせてながら。
室長の後に続いて建物を出ようとしたら、助手がいきなり立ち止まった。
「どうしたんだい?」
「……彼が、来ました」
その助手の視線の先には――汗だくになりながらも、必死にここまでやってきた幸一さんの姿があった。




