パート3
とりあえず、どうにかしてこの子に食べてもらわないとな。
スプーンで一口分を掬って息を吹きかけてちゃんと冷ましてから、少女の口に持っていく。
「ほら、あーん」
「………………」
けど口を開いてくれない。なんか遠慮してるように見えるけど……。
でも倒れるくらいなんだから、絶対腹減ってるはずだよな……。
なら、よく意地っ張りの子供相手にしてたあの方法でも試してみるか。
「お前が食わないなら、俺が食べるぜ? いいのか?」
少女に聞いてみるけど、そっぽを向いて俺の話を聞いてないようにしていた。
「じゃあいただきまーす」
そう言いながら、お粥を食べ始める。
(うっ……味無い……。お粥って初めて食べてみたけど、こんな食べ物だったのかよ)
とはいえ、意外にも胃の中に入っていく。確かに病気とかになったときには、良い食べ物だな。
けど少女に食べて貰う為に作ったお粥だ。俺はうまそうに食べながら、けどスプーンで掬うのはほんの少しの量にしながら。
すると少女がちらりとだけこっち見てきた。正確には俺じゃなくて、お粥を。
「なんだ? やっぱり食べたいのか?」
「…………!」
そう言うと、顔を赤くしながらまたそっぽを向いてしまった。
くうぅー……。
それでも、やっぱりお腹は正直だな。
「……………っ!」
「ほら、とりあえず一口でいいから食べてみろって」
もう一度スプーンで掬ったお粥を口元まで近づけてみると、今度はおそるおそると食べた。
「どうだ? うまいか?」
「…………」
元々味があまりないお粥だけど、それでも少女は小さくうなずいてくれた。
それから俺がスプーンで掬って、それを少女が少しずつだけど食べてくれるのを繰り返していると、あっという間にお粥は無くなった。