パート36
ドンッ!
止まれなかった車に激突した俺はその衝撃で宙を舞った。痛みに耐えながらも横目で幸の方を見てみると、尻もちをついていたけど怪我は無いみたいだった。
でも安心している暇は無かった。
交通事故でよくあるのは、ぶつかってそのまま車の下に転がってしまい、タイヤで体を轢かれる事だ。そうなってしまうと、ただはねられるよりも死ぬ確率は高くなってしまう。だからこうやって車にぶつかる寸前に、飛ばされる方向に向かって少し自分で飛んだ訳だけれど。
問題はこの後だ。このままだと地面に激突して、骨が折れるかもしれない。運が悪かったら軽く死ねる。
もちろんそんな事はなりたくない。
地面までの距離は幸いにもそこまで高くない。何か荷物があればクッション代わりに出来たけれど、そんな物は幸を助ける時に全部置いてきてしまった。
(だとしたら……)
両腕で頭を守って、体を丸めて小さくなる。これでなんとか頭に大きな怪我はしなくて済むし、落ちた時の衝撃を受ける態勢は出来た。
さらに地面に落ちると同時に衝撃を逃がす為に、そのまま自分から転がっていく。すると電柱に思いっきりぶつかったけど、背中からぶつかったから思ったより痛みは無く、全部軽傷だけで済んだ。
「おい幸一! 大丈夫か!?」
洋介達が心配して来てくれた。まあ目の前で撥ねられたらそういう反応になるよな……。
「ああ、俺なら別に平気だ……ぐほっ!?」
「この馬鹿っ! 少しは自分の事考えなさいよ!」
「わ、悪かっ……どわっ!」
「……………心配、した」
真里菜に頬をグーで殴られ、京香がタックルするかのように俺の体に抱きついてきた。さらにその後ろでは洋介がため息をついていて、菊恵先輩にいたっては見た目は笑顔だけどその無言の笑顔が一番怖かった。
正直、真里菜のグーパンチと京香のタックルが一番痛かったけど、そんな事を顔に出さずに抱きついてきた京香の頭を撫でる。
「心配かけて悪かった。でも俺の事は全然大丈夫だから」
「すみません! 大丈夫でしたか!?」
遅れて、車から降りてきた人が謝りにやってきた。
「いや、別に怪我してないから大丈夫です。こちらこそ、急に飛び出してしまいすみませんでした」
「ああいや、それでもこっちにも非があるわけだから……本当に申し訳ない」
ひたすら謝ってくるこの人は決して悪い人ではない。むしろ良い人なんだろうけど、今のこの状況だと少ししつこい人だと思ってしまう。
そんな事よりも幸は……?
「おい、幸は?」
「幸ちゃんだったらそこに……あれ?」
いつの間にか、幸の姿がどこにもいなくなっていた。




