パート34
「……………」
かくれんぼを始めてから、すでに約一時間が経っていた。まあ別にそこは問題ない。
問題なのは、この一時間でやったかくれんぼの回数だ。今現在、三十回は越えてる。
「…………!(見つけました! そこです!)」
「うげぇっ!? また見つかっただと!?」
鬼は幸の要望でずっとやり続けているんだけど、どれもすぐに終わってしまう。
何故かは知らないけど、始めた瞬間に幸は隠れてる洋介達の所に一直線に行って、どんな所に隠れていても見つけてしまう。皆も始めは『まあ幸ちゃんだから見つかりやすい所にでも隠れよう』と思ってたのに、こうもあっさりと見つかってしまうから逆に対抗心を燃やしてしまい、洋介に至っては『絶対に誰にも見つからない所に隠れてやる……!』と思って木の上に隠れたり、公園を囲っている柵に捕まって外にぶら下がって隠れてたり。もはや周りから見たら完全に変質者だ。
「……なんで、あんなすぐに見つかるの?」
「普通に俺でも見つからない所に隠れてるはずなんだけどな……。幸の勘が凄いのか、はたまた超能力でも使ってるのか……」
「幸はん、凄いどすなぁ」
ちなみに、今は洋介しかかくれんぼをしていない。あまりにもあっさりと見つかってしまうから、もう意気消沈してしまったみたいだ。
「そろそろ、別のゲームしない? 一応幸ちゃんの為にいろいろと考えながら、ボールとか持って来たんだけど……」
「そうだな。おーい、幸!」
また数を数え始めようとする幸に呼び掛けると、トコトコとゆっくり走りながらこっちに来てくれた。
「…………?(なんですか?)」
「いや、そろそろ他の遊びでもしようかなって思ってさ。せっかく公園に来たんだから、ここにある遊具で遊ばないと損だろ?」
「……………(あ……す、すみません。幸だけ楽しんでしまって……)」
「ああいや、別にそういう意味で言った訳じゃなくて……」
「ほらほら、幸ちゃんならブランコとか気にいるんじゃない?」
「……………私も、行く」
落ち込みかけた幸の気持ちを無くすかのように、真里菜がすぐに別の事に話題を変えた。それに合わせるように京香も真里菜と幸について行った。まあ京香の場合は真里菜の傍にいたいだけなんだろうかけど。
「……………」
「良かったどすなぁ」
「え?」
幸たちを見送ってたら、急に菊恵先輩が話しかけてきた。
「あんだけ幸はんが楽しんどったら、病気とか気にせんといてこれからも暮らせるはずどす」
「まあ、そうだといいですけどね……」
「そん代わり、幸一はんが責任負いすぎといてはいかんどえ?」
持ってきたお茶を紙コップに注いで、菊恵先輩は俺に渡してくれた。それを素直に受け取って、芝生の上に出しているシートの上に座っている菊恵先輩の隣に座る。
「幸一はんの事どす。幸はんの事を気づかいすぎて、無理してるぇ?」
「そんな事は……」
「おまけに幸一はんの体質。幸はんにだけは隠そうとしとるのバレバレどす」
「ぐ」
やっぱり、ばれてたか。というより、多分だけど幸以外の皆には隠そうとしてるのがばれてる気がする。
この公園に来るまでにもいろんな不幸が襲ってきた。例えば歩いていたら足元に空き缶が転がってきて転びかけたり、曲がり角を曲がろうとした瞬間に自転車が来たり。
でもいままで培ってきた反射神経と経験を頼りに、なんとか全力で回避した。
まあ、周りに気をつけながら歩く事はあんまりした事がなかったから、意外にもここに来るまでだけで疲れてしまった。
「気ぃ使いすぎて、身も心もボロボロになってしまったらダメどすぇ?」
「……分かってますよ。でも、今まで不幸だった幸を喜ばせるためなら、俺にとってはこのくらいどうってこと――」
「馬鹿言ってるんじゃないよ」
いきなり、菊恵先輩が口調を以前まで使っていた口調に戻した。
「あんたがどう思っていても、他人から見たら不安すぎるほど無茶してんのよ。確かに幸ちゃんを楽しませようとする気持ちは分かる。でも、それであんたが倒れたら意味がないでしょ。今の幸ちゃんには、あんたしか頼れる人がいないんだから」
「……………」
「このままだと幸ちゃんは、あんたが倒れたらまた自分のせいだと思ってしまうよ。そんな事、させたくないでしょうが。だったら少しは自分の事だけじゃなくて、周りの事も考えなさい。いい?」
「……はい」
「そんなら、うちらも遊びに行きましょうぞえ?」
真剣な表情で俺を説教していたのに、まるで無かったかのようにいつもの表情に戻った。
……一応、周りの事も気をつけてたつもりなんだけどな。菊恵先輩に説教までされるという事は、自覚はしていてもしっかりと出来てなかったという事か。
なんか、ダメダメだな俺……。もっと肩の力を抜いて行かないと。
菊恵先輩に手を引かれながら、俺は幸達のいるブランコへと向かった。
…………そういや、なーんか忘れてる気がするけど。
「…………!(た、高いです!)」
「もっと高くなるわよ! それー!」
幸のブランコを押してあげてる真里菜の光景を見てたら、別にいいかと気にしない事にした。




