パート27
「それで、一体何の用事で来たんだよ? 京香」
幸にケーキを食べさせてやりながら、俺は京香に今日来た理由を聞いていた。
「……………急に」
「急になんだよ。まさか俺に会いたくなったとか、そんな恥ずかしい理由なんかじゃ――」
「……………かっとなって」
「そんないきなりキレた若者みたいな理由でか!?」
そういえば、昔からこいつはどこか意味の分からない理由で動くんだよな……。
まあだとしても、この部屋の掃除加減を見ると高橋さんじゃなくて、京香がやってくれたんだろう。
真里菜が暴れる前よりも、奇麗に整頓されている。しかも俺がよく読む本とか使う道具なども、分かりやすい位置に置かれている。
俺の事をよく知っている、京香ならではの掃除だ。
「……………それより、誰?」
「え、ああ幸の事か」
そういえばまだ幸について説明してなかったな。それにしても、これで説明するのは五人目か……。
とはいっても、詳しい事まで説明しているのは洋介と真里菜、それと高橋さんだけ。いくら義理の妹だからって、別にそこまで細かく説明しなくてもいいだろうしな。
というわけで、俺が幸と出会った経緯、それから俺が幸をこれから居候させることだけを話した。
まあ結構聞き分けのいい京香だ。ここは素直に聞いてくれる――。
「……………納得いかない」
――訳にもいかないですよねー。もうなんとなく察知してましたよ。
どうせ京香の事だ。なんでいきなり会った幸を居候させるのかとか、どうして道端に倒れていたのか聞いてくるはずだ。いや、もっと核心をついてくるに違いない。
「……………その子にだけあーんをしているのかが」
「ってそっちかよ!?」
あ、そういえばまだ幸の体について説明するの忘れてた。だから納得がいかないんだろう。
「えっとだな。幸は声を出せなかったり、両腕を動かす事が出来ないんだよ」
「……………それで?」
「いや、それだとケーキ食べられないだろ? だから俺がこうやって食べさせてるんだよ」
「……………違う」
「違うって言われてもな。事実なんだから――」
「……………どうして私にもしてくれないの?」
「…………」
俺は無言で自分のケーキを切り取って、そのまま京香の口まで運んでやった。それを食べた京香は満足したのか、自分のケーキを食べる事に集中した。
なんかもう、本当に京香を相手するのは疲れる……。




