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パート26

 部屋の中に立っている少女を見て、俺は驚いた。

「な、なんでお前がいるんだよ!?」

「……………」

 俺がそう問いかけても、少女は何も言わずに抱きついてきた。

 だけど俺は、こいつがこういう行動を取ってくると思っていた。こいつはそういう奴だ。

「……………遅い」

「いや、遅いって言われてもな……」

 こいつの理不尽な言葉に、俺は頬を書いた。

「…………?(えっと、誰、ですか?)」

「ああ、こいつは俺の妹だよ。名前は京香」

 まあ妹と言っても、義理のなんだけどさ。

 田中京香。大雑把に言ってしまうなら、孤児院にいた子を俺の両親が良心に乗っ取って引き取ったらしい。ちなみに今のはギャグじゃないからな。

 引き取る前から俺に懐いていた京香は、俺が一人暮らしをするようになってからもよくこのアパートに遊びに来ていた。そのたびに俺を驚かそうとあれこれと趣向を凝らしていた。

 おそらく今回のは、さっきのメリーさんだろう。いつもながらこいつのやる事には驚かせる。

 ……でもおかしいな。京香の電話番号はちゃんと登録しているはずだから、電話がかかった時には絶対に京香と名前が表示されるはずなんだが……。

「なあ京香。お前、俺のケータイ勝手にいじったか?」

「……………してない」

「ああ、そうだよな。お前がそんなことするわけ――」

「……………洋介が」

「あの野郎!」

 元々口数が少ない京香の言葉を訳すと、京香の代わりにあの変態がしてくれたという訳だった。

 俺はケータイを取り出して、洋介に空から隕石が降ってきて死ね、と送っておいた。

「………………(……むー)」

 なんか京香に抱きつかれながらメールを送っていたら、幸が急に不満そうな声を出した。

「どうした、幸?」

「…………っ!(えいっ)」

 かと思ったら、幸もいきなり抱きついてきた。いや、抱きついてきたと言っても、体を俺の体にくっつけてきただけだけど。

「お、おいお前ら!?」

「……………」

「…………」

 いや、そこは無言じゃなくてなんか喋ってくれよ。

 しかも京香にいたっては、幸に対抗してなのか腕の力を強めてきたし、幸の方はもっと俺の方に体を押してきた。

 なんとか立っていた俺だったけど、前から横からと同時に来てるから耐えきれずに、後ろに倒れてしまった。しかも運が悪い事に……。

「いたっ!?」

 開きっぱなしにしていたドアの辺に頭を当ててしまい、思わずその場にうずくまってしまう。この痛み、多分たんこぶが出来てるぞ……。

「…………!?(だ、大丈夫ですか!?)」

「……………大丈夫?」

「心配してくれるんなら、いい加減どいてくれないか……?」

 幸はすぐに離れてくれたけど、京香は俺がうずくまってもずっと抱きついていた。

「……………や」

「いや、や、じゃねえよ」

「……………」

「……今から、シュプランのケーキを食べようと思ってたんだがな」

「……………………離れる」

 しばらく悩んだ後、京香はようやく離れてくれた。本当なら明日に食べようと思ってたんだけど、京香もケーキは好きだったからこの策しかなかった。

 ちなみに幸の方も見てみたら、幸も食べたいと言ってきた。こりゃ今日の昼飯はシュプランのケーキになりそうだ……。

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