パート25
男の姿が見えなくなってから、幸が服の裾を引っ張ってきた。
「…………(どうして……)」
「ん?」
「…………(どうして、今の話断ったんですか?)」
一瞬誤魔化そうかと思ったけど、幸の無表情でもどこか真剣な顔で聞いてきたから、正直に答える事にしよう。
俺は無駄な心配をさせないために、幸の頭を撫でながら言う。
「…………(うに……)」
「そりゃ、幸が不安そうな顔をしてたからな。幸はまだ自分について知ってもらいたくないんだろ? なら俺は、いつか幸が話してくれるまで何も聞かないし、知ろうとしない。だから安心しろよ」
「………………(……う、うん)」
さて、と。こりゃあしばらくは何もしない方がよさそうだな。後で真里菜と洋介にメールしとくか。
アパートの中に入ろうとしたら、突然ケータイが鳴った。
確認してみると電話みたいで、相手は……『メリーさん』からだった。
「……………は?」
……まてまて。確かメリーさんってのは怪談話とかでも有名なあのメリーさんか?
もちろん俺がメリーさんなんて知り合いなんて当然知らない。けど普通知らない人からの電話だったらただ番号が表示されるはずだ。
これは、いろいろと怪しすぎる。
「も、もしもし?」
少しびくびくしながら出てみると、すぐに相手からの応答が帰ってきた。
『……………わたし、メリーさん。今あなたの後ろにいるの』
「えええええええええ!?」
いやいやおかしいだろ!? 普通、最初はもっと離れた所にいるんじゃないのか!?
そう思って後ろを確認したけど、そこには誰もいない。
するとまたケータイが鳴った。画面にはまた『メリーさん』だ。
「もしもし? 一体お前は『……………わたし、メリーさん。今あなたの部屋にいるの』ええええええええ!?」
もし勝手に入ってるとしたら不法侵入――じゃなくて! なんで今度は離れていってるんだよ! 順番おかしいだろ!
なんなんだよ、このメリーさんは!
「おい! 誰だか知らないけどこれ以上冗談は『……………待ってるから』えええええええええ!?」
そう言って電話は切れてしまった。
え、ちょっと待って。なんだったんだ今の電話は。
まさか本当に俺の部屋に、誰かがいるのか……!?
「…………?(どうしたんですか?)」
「いや、なんでもないさ。別に幸が心配するような事は、無いはず……」
いや、これは本当にいろんな意味で心配すぎる。
……とはいえ、これはいくら迷っていても仕方ない。シュプランのケーキも持っているから早く冷蔵庫に入れないといけないわけだし、部屋の片づけもしないといけない。
覚悟を決めて、ゆっくりとアパートの中に入って、自分の部屋に向かう。
鍵は……かかっていなかった。けれどこれは、高橋さんに片づけを少し頼んだから、開いているのは想定内だった。
問題なのは、中に誰がいるかだ。
「………………」
そーっと中を覗いてみると、中は真里菜が暴れる前より、というかいつもの俺の部屋よりかなり奇麗になっていた。
そしてその部屋の中心には、一人の少女が立っていた。




