パート24
アパートに着くと、そこには一人のスーツを着た男が立っていた。
「…………!(あ、あなたは……!)」
「……元気そうだな、実験体F」
実験体F?
どうやら幸はこの男に見覚えがあるみたいで、俺の後ろに隠れてしまった。
「……安心しろ、実験体F。今はお前を連れ戻そうなんぞ思ってない」
「おい、あんた一体誰なんだ?」
俺がそういうと、男は俺をじっくりと観察した後に哀れそうな目で見てきた。
「不幸な奴だ……。彼女と巡り合ってしまうなんてな」
「は……?」
「話をしないか、少年。もちろん話の内容は――その子についてだ」
……なんとも怪しい話がプンプンした。
だけど、幸についての情報が少ないのも事実だ。
多分こいつは、絶対に幸に関する男なんだろう。あるいはまた別なのかもしれないけど……。
どうする俺。
「………………」
ちらりと幸の方を見てみると怯えているのか、真里菜に髪を触られた時と同じように震えていた。
それを見た瞬間、俺は決心した。
「……結構だ」
「ほう……。何故?」
「この子は実験体Fなんかじゃなくて、幸だ。俺の友達なんだ」
幸を守るように男の前に立つ。こいつのさっきの話が本当なら、今は幸を連れ戻そうとしないはず。
でももしそんな事をしようとしてきたら、絶対に俺が守ってやらないと。
「……ふん。なるほど、そういうことか」
けど男は、勝手に一人で何かに納得していた。
「通りで抑えられている訳だ。名前でそこまでの力を抑えられるとは……。しかも幸と来たか。彼女から渡されたのか、さて、どうなんだろうか……」
またあの人が聞いたら喜びそうな話だ……、と言いながら男はため息をついていた。
訳の分からない話でちんぷんかんぷんだったが、男はポケットから一枚の紙を渡してきた。
「気が向いたら電話するがいい。今日の所はここらで帰らせてもらう」
「……勝手に帰ってろよ」
そう言ってやると、男はくくくと笑いながら俺たちの前から消えていった。




