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パート21

「ほな、遠慮せんであがりぃな」

 予想外の事態を飲み込めずに、俺たちは菊恵先輩の家であるシュプランに友達として入れて貰い、そしてそのまま菊恵先輩の部屋に案内された所だった。

 というか高橋さん、こういう事は先に言って下さいよ……。

「そんじゃ、さっそくお店のケーキとお茶持ってきますえ。しばしお待ちいなぁ」

 あらかじめ用意されていた座布団に座り、菊恵先輩はお茶とケーキを取りに部屋から出ていった。

「……ねえ幸一。あんた、斎京先輩とどんな知り合いよ?」

「それは俺も気になるな、親友よ。さっさと言わないと、口では言えないような拷問をしてやる」

「お前ら、目が怖いぞ……」

 斎京菊恵先輩。うちの高校に通っている生徒なら、まず知らない人はいないだろう。

 別に生徒会長をしているわけではない。だからといって、部活とかで全国制覇をしたわけでもない。

 じゃあ何故か? それは菊恵先輩があまりにも特徴的すぎるからだ。

 まずあのおかしな話し方。本人いわく、京都弁を真似ているみたいだが、それにしては京都弁の言葉を使っているわけでもなく、だからといって、どことなくそれっぽく喋っている。

 そして次にずば抜けた行動力。誰かが困っていたらそれがどんな状況でも助けようとする。自分の事なんてまったくと言っていいほどに考えていない。

 前に大雨で洪水になった川に飛び込んで、流されかけた子供を助けたり、他にも通りかかったクラス内で「今日宿題忘れたー!どうしよー!」と聞いた瞬間に、代わりにその宿題を片付けてしまったり。

 しかも俺が他の生徒から聞く限り、菊恵先輩は入学した時から数々の伝説を残している、らしい。

 まあそんないろんな所で活躍している菊恵先輩を、部活も委員会もしてない俺ですら知っているのだ。それこそ学校を一度も来た事がない生徒でない限り、知らないわけがないのだ。

 でも知ってはいても、菊恵先輩の知り合いになれる人はほんの僅かだ。せいぜいクラスで一緒になって、友達になれるしか方法はない。

 ではなんで俺が菊恵先輩と知り合いなのか。

 それはただ単に、学校の帰りにスーパーに寄ったらたまたま声をかけられて、一緒に買い物をしたからだった。

「…………絶対、嘘ね」

「ああ、嘘だな」

「なんでだよ。ちなみに知ってるか? あの人って意外と方向音痴なんだぞ」

「嘘だっ!」

「しかもいつも買い物しているスーパーなのに、何故かどこに何の商品があるか未だに把握してないって言ってたぞ」

「嘘だっ!」

「それと、好きな男性のタイプは元気で明るい人って言ってたな」

「本当か!?」

「ああもう! あんたは黙ってて!」

 話が脱線しかけてたから真里菜は洋介の脇腹にパンチを叩きこんだ後、今度は俺の腕を掴んできた。

「まさかと思うけど……。それ以来、一緒にスーパーで買い物なんかしてないでしょうね?」

「結構してるぞ。最近は時間も決めて待ち合わせを……待て待て待て、俺の腕はそっちに曲がったりしないぞ!?」

「大丈夫よ! これはあんたの腕を曲げるんじゃなくて、折ろうとしてるのよ!」

「意味が分からないぞ!?」

「…………(あ、あの、あんまり騒がしくしたら迷惑なんじゃ……)」

 俺たちがギャーギャー騒いで、その隣で幸がおろおろしていたらタイミング良く、菊恵先輩が部屋に戻ってきた。

「おやおやまあ。みなはんは仲がええのう。ウチもそんな風に、誰かと戯れたいわぁ」

「じゃあさっそく俺と……がぶらぁ!?」

「あんたは何を言ってるのよ!」

 ああもう……なんだこのカオスな状況。ここまで来たら誰にも止められないぞ。

「ほなほな、さっそくやけどケーキ持って来とるからどうぞ食べてみぃ。味は抜群やと保障するどす」

 けど菊恵先輩が持ってきたケーキによって、なんとかこの場を収める事に成功するのであった。

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