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パート20

 シュプランに行くために、外に出た俺と幸と真里菜と洋介。いつもなら三人だけど、幸が加わったことでいろいろと商店街の人たちに声をかけられた。

「おや、幸一君じゃないか! 久しぶりだねぇ~。その子は妹か何かかい?」

「おばさんお久しぶり。えっとこの子は俺の親戚で、ちょっと病気で喋れないんですよ」

「あら、それは可哀そうに……。名前はなんて言うんだい?」

「幸って言います」

「そう! 良い名前だね~。どれ、お菓子をあげるよ」

 幸はあっという間に商店街にいる人たちに囲まれた。まああれだけ可愛かったら当然か。

 シュプランの店は、真里菜によると駅の近くにあるらしい。そしてその駅にうちのアパートから行くためにはこの商店街を通らないといけなかった。

 幸は初め、人が多い商店街に行くのは嫌だと言っていた。一応この道以外にも方法はあったけど……。

「な? 俺の言った通り心配することなんて無かっただろ」

「そうだな。今回は珍しく、お前の言うとおりだったよ」

 それでも無理矢理商店街の道を選んだのは洋介だった。

 その理由は、幸の存在を大きく広めるためにという事だった。

 そうすることによって、これから俺が幸と一緒に外出する時とかに怪しまれずに済むし、なによりいなくなってしまった時や誰かによって攫われてしまった時などに、すぐに商店街の情報網を使って見つける事が出来る。

 不安そうだった幸だったけど、今はいろんな人に声をかけられて嬉しそうだった。

「ほら、ケンちゃん。幸ちゃんに挨拶しな」

「ワンワンッ!」

「…………!(ひゃう!?)」

 床屋のおばさんが、飼っている犬を連れてきた。ケンはこの商店街ではマスコット的存在で、商店街では人気者だ。多分向こうとしては挨拶しているつもりなんだろうけど、その鳴き声に幸は驚いて俺の後ろに隠れてしまった。

「ほら、別に怖くないぞ」

 俺が幸の手を引きながらケンに近づく。基本はおとなしくて人に懐きやすいから、頭を撫でても噛みついたりしないのが、ケンの人気の理由だ。

 俺は幸の手を下にしながらケンの頭を撫でてやると、ケンは大人しく気持ちよさそうにしていた。そして幸も、最初は怯えてたけれどだんだんケンの毛が触っていて気持ち良かったのか、充分に堪能していた。

「どう幸ちゃん? ケンって可愛いでしょ?」

「…………(うん……。可愛いね)」

 コクリと、幸は頷いた。

 ちなみに洋介は幸宛てにもらったお菓子を両手に、山のように抱えていた。


「さて……ここがシュプランの店よ」

「うわー……。本当にすごい行列だな……」

「…………(たくさん、人が並んでる……)」

「なんだあれ……、最後尾が見えねえぞ?」

 商店街を抜けてようやく駅についた俺たちは、すぐにシュプランの店を見つける事が出来た。

 すぐ見つけられたには理由がある。

 まず、テレビでよく行列の出来る人気店なんかを見た事がある人は分かるはず。店に入れるまで約一時間以上はかかるほどの長い行列が、駅という不自然な場所に出来ているのだ。

 普通駅ならたくさんの人が動き回るから、こんな事はありえないはず。

 にも関わらず、俺たちの前にはそれほど長い行列が出来ているのだ。

 ……これは、かなり人気ってことだよな。

 こんなにシュプランが人気だとは思わなかった。確かに味は三ツ星レストランのデザート並み(食べた事が無いから分からないけど)で美味しいけど、まさかこんなにも人気だとは。

「それで、どうやって高橋さんの言っていた俺たちの知り合いの人に会えば――」

「…………おや? 田中幸一君じゃなかろうか?」

 後ろから声を掛けられて俺たちは振り向いた。この微妙に訛った日本語。独特的な言葉使い。もしかして……!

「菊恵、先輩……?」

「おやおやまあ。幸一君だけじゃなく、その友達の佐竹洋介君、さらには浜端真里菜さんまでおるんどすえ? そして可愛ええ少女まで……。もしや、うちの店シュプランにケーキを買いに来たのかえ?」

 そこには、ケーキに使う材料らしき袋を手にした、斎京菊恵先輩が立っていた。

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