パート19
段ボールをどかして、幸に絡まった糸を真里菜と一緒にほどいてやる。
「まったく……。一体何をどうすればこうなるんだ?」
「…………(ごめん、なさい……)」
別に叱った訳じゃないのに、幸は俺が怒ってると勘違いしてるみたいで少し怯えていた。
それを見た俺は、幸の頭を優しく撫でてやる。
「…………(あ……)」
「とりあえず、怪我は無いか?」
「…………(う、うん……)」
コクリ。
少し戸惑いながらも、幸は頷いた。一応幸の体を見てみるけど、どこにも怪我とかはなさそうだった。
それにしても、この段ボールも含めて部屋片付けるの本当にめんどくさいな……。
「でも、どうして幸ちゃんはあんな事になってたの?」
俺も気になっていた事を、真里菜は幸に聞いていた。すると急に幸は俯いてしまった。一体何か言えない事情でもあるのか……?
「分かった。幸ちゃんはおトイレに行こうと――」
「「(あんた)お前は黙ってろ!」」
どうやら復活していたらしい洋介を俺と真里菜の合体技で黙らせる。それならすぐに俺じゃなくて真里菜に言うだろうし、あるいはすぐにトイレに向かうはずだ。
他に理由を考えるとしても、俺には何も思いつかなかった。真里菜の方を見てみても、表情から察するにおそらく俺と同じなんだろう。
じゃあなんで……。
「シュプランのケーキを、また食べたくなったのではないですか?」
「あ、高橋さん……」
用があって出かけていたはずの高橋さんが、まるでタイミングを見計らったかのように俺の部屋に入ってきた。
「そうなのか? 幸」
「…………(え、えっと……)」
それならそうと言ってくれれば良かったのに。確かにあそこのケーキは、あまりケーキを食べない俺でも絶品だと思うくらいに美味しかった。
「でも、今の時間だと結構混んでるよ? もしかしたら売り切れてるかもしれないし……」
「大丈夫ですよ、浜端さん」
真里菜の不安な考えに、高橋さんは迷いなくそう断言してきた。
「実はあそこの店には私と幸一さんの知り合いがいますから。もしかしたら浜端さんや、佐竹さんも知っているかもしれませんが」
高橋さんはともかく、俺の知り合いだって? そんなの初耳だ。
「事情は私から電話しますから、どうぞ皆さんで行ってみてはどうですか? この部屋の惨状は……まあ私がなんとかしておきます」
「何から何まで……。本当にありがたいです」
じゃあここは高橋さんに任せるとして、俺たち四人はシュプランに向かうことにした。
けど、俺は少し引っかかった。
なんか高橋さんの提案はまるで……。
俺たちをあの部屋から追い出したくて、言ったように感じたのだ。
「……これで、いい?」
幸一たちが出掛けたあと、香里は散らかった部屋を見ながらそう呟く。
「…………………」
すると今まで何もなかった場所に、突然小さな少女が現れた。
その小さな少女は部屋の中心に行くと、目をつぶってその場から動かなくなった。
「……すみません、幸一さん。でも、これも全て彼女の為なの……」




