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パート17

 そんなふざけた事をいいながら、俺らはこれからの事について話し合う。

「とりあえず、俺の家にいる使用人とかいろんな人に調べて貰うわ」

「悪いな、助かる」

「あたしもいろいろ聞いてみる。商店街の人たちとかに何か知らないか聞いてみる。あんまり大した情報無いかもしれないけど」

「それでも充分だ。俺も出来る範囲で動いてみるよ」

 昔からずっとこの町に住んでいる真里菜と、お金持ちでいろんな所に顔が効く洋介。

 そしてそれらの情報を元に、確信へと迫る役目がこの俺だ。

 どこぞの推理小説なんかじゃない。これは犯人を見つけて捕まえるのではない。確信を見つけるための行動だ。

 この三人が揃えば、もう怖いものなしだ。こう見えても、商店街とかでは『なんでも屋』として名が通っている。

「…………?(何か、するの?)」

「ああ、いや。幸は気にしなくていい事だよ」

 そう言いながら幸の頭を撫でてやると、気持ちよさそうな顔をした。この様子だとまだ酔っぱらってるのか?

「こ、この野郎……俺にも撫でさせげべらっ!」

「うるさいわよ佐竹。というかあんたに撫でさせたら幸ちゃんが汚れちゃうでしょ」

「俺はバイキン扱いかよ!?」

「まったく……ごめんね幸ちゃん? 騒がしくて」

 すると俺と同じように真里菜は幸の頭を撫でようとした。その手が幸の頭に触れた瞬間――。

「………………!」

 さっきまでなすがままにされていた幸が、急に真里菜から離れて、怯えるように俺の後ろに隠れた。

「…………えーっと、もしかしてあたし、嫌われてた……?」

「さ、さあな……」

「やーい、幸ちゃんから嫌われてごぶらっ!」

 おー相変わらず奇麗なパンチだな。

 けど今はそんな事に感想を言っている場合じゃなくて、幸にどうしてそんなに……。

「……どうしたんだ、幸?」

 なんでそんなに怯えているんだ?

 俺の後ろに隠れている幸は、まるで何かに怯えるかのようにその小さな体をさらに小さくさせて、静かに震えていた。

 再び俺が幸に聞こうとしたら、視線にある黒い物体が過ぎった。まさか、アレは……!

「真里菜、今すぐこの部屋から出ろ!」

「え?」

 けれどそれはあっさりと真里菜の前に現れてしまった。

「き……」

 そいつの名前は――ゴキブリ。

「きゃああああああぁぁぁぁっ! ゴキブリイィィィィィィィっ!」

 普通の女子ならある意味当然の反応だ。なんせ一部では黒い悪魔なんて呼ばれてるくらいなんだから。

 けど真里菜の場合は、その反応があまりにも過激すぎる。

「洋介!」

「分かってらぁ!」

 急いで真里菜の近くにあったコップや物を真里菜から遠ざける。そうでもしないと、真里菜は手辺りしだいに物を投げ続けてしまうからだ。

 たとえそれが人だったとしても。

「いやああぁぁぁぁぁあっ!」

「落ち着け浜端! すぐに殺虫剤を幸一が――」

 がっ。

 なんとか真里菜をなだめようと近づいた洋介だったけど、その腕をつかまってしまった。

「あっちにいってえええぇぇぇっ!」

「うわああああああっ!」

 飛んできた洋介をなんとか避けて、急いで殺虫剤を取りに行く。このままだと被害は拡大するばかりだ!

 殺虫剤を持ってきたころには、洋介は何度も止めようとしたけどすぐに飛ばされたみたいで、気絶していた。く、お前の犠牲は無駄にはしない。

「ゴキブリは……いた!」

 俺が殺虫剤を構えた瞬間、その後ろにある羽を広げて……って飛んだよ! ゴキブリって本当に飛ぶ事が出来たのかよ!

「――――――!」

 そのせいで真里菜の恐怖は一気に頂点まで達した。近くに投げるものが無かったのか、未だに小さくなって震えていた幸を……。

「待て真里菜!」

 このままだと危ないと思った俺は、急いで幸と真里菜の間に割り込んで阻止させた。

「あ……」

 その代わり、俺の腕が掴まれた。そしてそのまま……。

「うわあああああっ!」

 その馬鹿力によって投げ飛ばされ、壁に思い切り衝突。

 頭を壁にぶつけたから、意識が朦朧としてきた。

 最後に見た景色は、叫び疲れたのか、あるいはショックに耐えきれなかったのか気絶した真里菜。

 そして窓からそのまま消えていったゴキブリの姿だった。

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