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パート15

「……………」

 そう言われたから、とりあえず両手で抱き締めてみた。

「って、あんたは何を素直にやってるのよ! このロリコン!」

 するとスパーンと頭を後ろから叩かれた。まあ殴られるよりはマシだからいいんだけどさ。

「まあ真里菜の言う事はもっともなんだけどさ……ちょっと幸の様子がおかしいから、言われた事を実行してみただけだぞ、俺は」

「なんでそれを素直に実行するのよ! 本当にあんたはどこかずれてるわね!」

 ずれてるって言われても。つか、頼まれたらそれが自分の出来る範囲なら行うのが普通じゃないか。

 でも幸は俺からくっついて離れそうにない。このままだと動く事もままならない。

 それと香里さんはどこに行ったんだ?

「あら、幸一さん。それに真里菜さんも。おかえりなさい」

「ただいまです。えっと、幸はどうしたんですか?」

 様子がおかしい事を香里さんに聞いてみると、苦笑しながら俺の問いに答えてくれた。

「実はですね……。昨日幸一さんが買ってきた栄養ドリンクを幸ちゃんは気に入ったみたいで、残っていた九本を全部飲ませてあげたら、どうやら酔っぱらってしまったみたいなんですよ」

「…………は?」

 いやいやいやまてまてまて。

 栄養ドリンクを九本全部飲んだ。これはまあいいとしよう。

 けれど、だからってなんで酔っぱらうんだ? 栄養ドリンクはお酒じゃないんだし……。

「ちなみに幸一よ。栄養ドリンクを飲んで目が覚めたり元気になれる理由は、かなり微量だがアルコールが含まれているからなんだぞ」

「……まさか、九本も飲んだから微量のアルコールが溜まって酔っぱらったとでも?」

「可能性としては、ありうるな」

「ところで、あなたは誰ですか? 見た所初めてのような……」

「ちょっ!? 俺も浜端同様に幸一の部屋に遊びに来てますよ! あと高橋さんと何回か会ってるはずっすよ!?」

 ショックを受けてる洋介はほおっておく事にして、なるほど、幸の様子がおかしい理由はとりあえず分かった。

 だけど、それがどうして抱いて下さいなんて頼んでくるに繋がるのか。そこが分からなかった。

「おそらく幸ちゃんは、誰かの温もりが欲しかったんじゃないでしょうか」

「温もり?」

「私の予想なのですが、幸ちゃんはここに来る前まで誰かと触れ合う、という事が少なかったと思います。昨日はまだ知り合って間もなかったですが、酔っぱらった事によって温もりを求めるようになった。そこで私たち三人の中で一番親しくなった――幸一さん、あなたの温もりを感じたくなったのではないでしょうか」

「はあ……」

 でもそれなら納得出来た。幸がここに来るまでどういう風に過ごしてきたかは分からないけど、けしてそれは良い人生とは言えないだろう。

 もし俺が今まで幸に無かった温もりを埋める事が出来るというなら、俺は喜んでこの懐を貸してやろう。

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