パート13
「で? この休みの間にいつ、どこで、どんな風に、どんな美少女と出会ったんだ?」
結局、こいつの勢いに飲み込まれて俺は昨日あった幸の事を言った。
まあ根は悪くないし、家に連れてこなければいいだろう。
「ふむふむなるほど……。お前にしては、なんとも珍しい幸せな巡り合わせじゃないか」
「そうか?」
「ああ。上手くいけば、このまま妹として同棲――」
「あんたは何を言ってるのよ!」
「ぐふぉっ!?」
あ、吹っ飛んだ。
さっきまで俺の前の席で喋っていた洋介は、今やってきた真里菜に横から殴られてそのまま転がって行った。もし俺だったらさらに人に蹴られたりとか、不幸が訪れそうだな。
つか、相変わらずの殺人パンチだ。一体何回あれの犠牲になったことか……。
「あんた達、朝っぱらから何の会話してたのよ……」
「幸についてだよ。やっぱりというか、洋介の五感は騙せなかったから」
「目なら分かるけど、なんで五感?」
「あいつにとって五感とは、全て美少女レーダーみたいなものだからだろ」
そんな事を話しているうちに先生がやってきた。そしていつの間にか洋介は復活して、自分の席に戻っていた。
さて、まだ寝てるかもしれない幸の事もちょっと気になるけど。香里さんに任せておけば大丈夫のはず。あの人は普段俺をからかってるけど、やる時はちゃんとやってくれる人だ。
今日も一日、有意義に過ごすか!
「くしゅん……。あら、風邪ですかね? それとも、誰かが私の噂を?」
その頃アパートにて。
管理者である香里は合鍵を使って、昨日幸一に頼まれた通り幸の面倒を見に来ていた。
中に入ると、幸一が学校に行くまで寝ていた幸はもう目を覚ましていた。
「おはよう、幸ちゃん。いまお腹空いてたりしますか?」
「…………」
ふるふる。
何も聞こえなかったが、首を横に動かしたという事は空いていないという事だろう。
幸一からの話によると、どうやら彼女のテレパシーは自分の不幸度のようなものが高ければ高いほど、聞き取りやすいらしい。
だとすると、この子は幸一とかなり相性がいいのではないか、と思う。
香里と幸一は今から五年前に知り合った。つまり幸一が中学一年の頃だった時だ。
その時から香里は幸一の不幸っぷりを知っていた。
(……まあ、これでもかってぐらいにいろいろと怪我とかしてましたからね)
それでも当時と今の幸一を比べてみると、たとえ不幸な目に遭っていても周りの人のお陰で幸せな日々を暮らしているのは見て分かる。
今度は、それを幸にも分けてあげられるような存在になって欲しい。
「……おや?」
何か幸が語りかけているような気がして、幸の体をゆっくりと起こしてあげた。
「どうしました?」
「…………(……喉……ました)」
所々しか聞こえなかったが、おそらく喉が渇いたと言っているのだろう。
すぐに冷蔵庫の中を見てみたが、まだ麦茶は作ってないみたいで、あるのは賞味期限が切れた牛乳と栄養ドリンクだけだった。
「まったく幸一さんは……。とりあえずこれと水にしておきましょうか」
そう言って、栄養ドリンクの箱とストローを持って幸の所へと持って行った。




