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パート9

 そして次の謎が、どうして幸の声が出ないのか? もちろん両腕が動けないのもそうなんだが。

 幸はその事についても、何も言わなかったけど、ただ声が出ない代わりにテレパシーが使えるようになったとか。しかも人によっては聞き取れない人もいると言っていた。

 さいわい俺は逆に聞き取りやすい方の人らしい。

 まあそれはいいとして、やはりこれも研究所がしている事と関係があるんだろう。

「ちょっと幸一? ケーキ食べないの?」

 珍しくいろいろと考えていたら、真里菜に声をかけられた。

「あ、いや、少し考え事をしててな。それより今日も野菜さんきゅな」

「別にいいわよ。どうせ余りだしね」

「それでも俺にとってはありがたいって。家計も浮くしな」

 なんて一端のどこぞの主婦みたいな事を言っていると、幸が自分の皿にあるケーキをじっと見ている事に気付いた。

「どうした幸? 食べないのか?」

「……………(……ううん)」

 ふるふると首を横に振って否定する幸。

 って、そういや幸は両腕が動かせないんだった。それじゃあ食べたくても食べられないよな。

「…………」

「ってこらこら。口で食べようとするな」

 そのまま口を開けて食べようとする幸を急いで止めて、俺はケーキを一口サイズにしてから、

「ほら、あーん」

「…………(あーん)」

 幸の口に入れてやった。

「…………!」

 するとよほど美味しかったのか、顔を輝かせたまま固まってしまった。

「えっと……美味しいか?」

「…………!!」

 こくこくっ!

 今度は体全体を動かして、早く食べさせてくれとまるで鳥の雛のように……。

 …………。

 ……子供にご飯をあげる時の親の気持ちって、こんな感じなんだろうか。

 こう、なんか『どんどん食べさせて、喜ぶ姿を見る』という無限ループ。つか可愛いなこのやろう。

「むー……」

 俺が幸にケーキを食べさせていると、真里菜がこっちを睨んでいた。

「どうしたんですか真里菜さん? もしかして真里菜さんも幸一さんに食べさせてもらいたいのですか?」

「!? そっ、そそそそんな訳ありませんよ!!」

 ふむ、それならそうと言ってくれればよかったのに。

 俺は自分のケーキから一口サイズをフォークに乗せてから、

「ほら真里菜、あーん」

「え?」

 突然俺があーんなんてしてきたからか真里菜は反応できなかったみたいだ。俺はその隙をついてそのまま口の中に入れてやる。

「どうだ? うまいか?」

「……う、うん」

 顔を少し赤くさせながら、真里菜が頷く。

 調子に乗った俺はさらに真里菜にケーキをあーんしてやる。

「ほら、あーん」

「ま、またっ!? あ、あーん……」

 戸惑いながらも、素直に口を開けて食べようとしてきた。もう少し、もう少し粘って……。

 あと少しで口の中に入りそうになった時、俺はフォークの向きを変えてそのまま自分の口の中に入れた。真里菜は眼を瞑っていたから、そのまま口を閉じても当然何もない。

 つまり、ただのいたずらだ。

「……………」

「ははは。見事にひっかかったな真里菜。俺がそうそう自分のケーキを二度もあげると、思って……」

「……こーうーいーちー」

 あ、やばい。調子に乗りすぎた。

 耳まで真っ赤にし、目には少しの涙を浮かべながら、真里菜はまたふるふると拳を握りしめていた。

「いや、今のは俺が調子に乗りすぎた。悪い!」

 けれど、この幼馴染は俺が謝ったところで許してくれるわけがないというのを知っている。それでもすぐに謝れば被害は――。

「じ・ご・く・に……落ちろ―――――っ!」

「待て、俺はきちんとあやま……ぐべらっ!?」

 やっぱり、ダメっすか……。

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