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氷河期世代のライトノベル作家が感じた衆院選への怒り  作者: 佐倉陽介


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4/7

映画『デッドゾーン』と現代アメリカ

 今回は映画の紹介です。


『デッドゾーン』は、SFスリラーの名作であり、作家志望者にとっては観ておいて損の無い、このジャンルを書く人にとって完成度の高いお手本のような作品です。


 1983年にデヴィッド・クローネンバーグ監督が映像化した本作は、この頃のクローネンバーグ監督にしては珍しく肉体の変質(グロ表現)の少ないエンターテイメント性の高い作品と思います。また「ギフト」が同時に「呪い」として主人公を縛り、それでもなお「天啓」に従うべきかの葛藤を描いた映画であります。


「ギフト」はライトノベル作品においては「チート能力」と呼ばれ、「全能感」と「絶対の幸福」を保証してくれる要素ですが、映画においては主人公の人生を縛る「枷」として描かれることが多いのですね。


 物語の主人公ジョニー・スミスは、誠実で穏やかな高校教師です。恋人との将来を思い描きながら、ごく普通の幸福を生きていました。しかしある日、交通事故に遭い、長期間の昏睡状態に陥ります。目覚めたとき、彼は数年という時間を失い、恋人はすでに別の人生を歩み始めており、彼自身の身体にも深刻な後遺症が残されていました。


 さらにジョニーは、人に触れることで、その人物の過去や未来の断片が見えてしまう能力を得ます。この力は祝福だけではなく、時に呪いに近いものでした。彼は殺人事件の犯人を突き止め、人命を救う一方で、社会からは次第に距離を置かれる存在となっていきます。未来を知る者は、平穏な日常を送ることができないのです。


 やがて彼は、野心的な政治家グレッグ・スティルソンと出会います。スティルソンは過激な言動で既存政治への不満を巧みに吸い上げ、大衆的人気を急速に高めていく人物でした。改革者にも見える彼に触れた瞬間、ジョニーは決定的な未来を見てしまいます。


 スティルソンが大統領となり、核戦争を引き起こし、世界を破滅へ導く未来です。


 本作が恐ろしいのは、この破滅がクーデターや軍事独裁によってもたらされるのではなく、民主的な選挙を通じて実現する点にあります。喝采と投票によって選ばれた人物が、正当な手続きを経て世界を終わらせる。この構図こそが、『デッドゾーン』の核心でありましょう。


 物語終盤、ジョニーはスティルソン暗殺を試みます。しかし計画は失敗し、彼自身は致命傷を負います。混乱の中、スティルソンは幼い子どもを盾にして身を守ろうとし、その姿が報道カメラに捉えられます。結果として彼は政治生命を完全に失い、破滅的な未来は回避されます。


 死の間際、ジョニーは悟ります。自分の行為によって、世界の終わりは防がれたのだと。彼自身は生き延びられませんでしたが、未来は変わったのです。


『デッドゾーン』は1983年の映画でありながら、まるで現代のアメリカ社会を予見していたかのような作品と言われます。そしてその構図は、決してアメリカだけのものではなく、日本社会にも容易に置き換えることができるものでありましょう。


 翻って、ライトノベル世界のディストピア表現ですが、日本のような先進国でありながら、制度上は民主主義が維持されているにもかかわらず、実態としては独裁的な体制に傾いている社会がしばしば描かれます。選挙も法律も存在する。しかし、異論は空気と制度によって排除され、国民は「選ばされた選択肢」の中でしか意思表示ができない。


 かつては誇張された設定に見えたこうした世界観が、今や現実の延長線上にあるように感じられる場面が増えています。現実がライトノベルのありがちな設定に追いついてしまった、と言っても過言ではありません。


 だからこそ、投票という行為の意味を、改めて考える必要があります。


 政治家に白紙委任状を出すということは、単に政策を任せるという話ではありません。平和は愚か、自分の財産や生命、子どもたちの未来すらも差し出すという行為です。


 その覚悟を、本当に引き受けたうえで、投票に臨んでほしいと、強く思うのです。

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