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お年玉どろぼう

作者: あき伽耶

挿絵(By みてみん)

「冬の童話祭2026きらきら」参加作品です。

 お正月、サキちゃんと弟のあっくんは、おとうさんとおかあさんからお年玉をもらったよ。

 サキちゃんは水色のお年玉ぶくろ。ぴんとした新しい千円さつが1まい、おりたたまれて入ってた。小学1年生だから1まいなんだって。

 あっくんは黄色いお年玉ぶくろに、キラキラの銀色の百円玉が5まい、入ってた。5才だから5まいなんだって。

 二人はなんども、ふくろの中のお金をのぞいたり、とり出して手のひらに乗せてみた。

 サキちゃんは、はじめてもらう紙のお金のお年玉がうれしくて、ニヤニヤ。

 あっくんも、ピカピカの銀のお金を5個ももらったからうれしくて、ニカニカ。

「ぼく、おかしいっぱいかいたい! あめ玉にチョコにおせんべい!」

「わたし、おもちゃにしようかな。ガチャもいいな。でもつかっちゃうのもったいないな」

 考えれば考えるほど、うきうきした。

 二階の子どもべやで、ならんでふとんに入ったときも、二人はお年玉をながめてた。だから大切なお金なのに、引き出しにしまわないで、まくらのそばにおいたまま眠ってしまったんだ。




 おとうさんもおかあさんもぐっすりねている、その夜おそく。

 ちく、ちくちく!!

「「いたたた、いたいっ!!」」

 とつぜん、ほっぺたがすごく痛くなって、サキちゃんとあっくんは飛び起きた。まるで、草むらのかたい葉っぱの先に、つつかれたみたいだった。

 いたくてほっぺたをさすっていると、


 ととっと、ととっと、ととととと……


 遠くへ走っていく、なにかの足音が聞こえた。

 聞いたこともない、へんな足音。

 それに部屋もまっくら。

「こわいよぉ……」と、あっくんはべそをかいた。

 サキちゃんはいそいで電気をつけた。

 ぱっと明るくなった部屋には、サキちゃんとあっくんだけ。

 サキちゃんがほっとしたとき、あっくんが大きな声をだした。

「ああっ! お年玉がない!」

「ええっ?」

 あっくんの黄色いお年玉袋が見あたらなかった。

 サキちゃんはあわてて、水色のお年玉袋を見つけようとしたけど――

「わたしのお年玉も、ないよ!」

 二人はまっさおになった。

 すぐにふとんをめくって、お年玉を探した。まくらの下、シーツの中、パジャマのポケット。すみからすみまで探したけど、ない。

「「ないないないっ、お年玉、なくなっちゃった!」」

 なにを買おうか、あんなに楽しみにしてたのに……

「おかしが買えないよお」

 あっくんは、泣きそうだ。

 サキちゃんも同じ気持ちだった。

 けれどサキちゃんには、気になることがあった。あっくんの頭をなでてあげながら、サキちゃんは考えた。さっきほっぺたがちくちく痛かったこと。あのへんな足音のこと。

 実は、サキちゃんはふとんの上で、見たこともない動物のような毛をひろったんだ。

 毛はさびた十円玉のようなこげ茶で、緑や紫がちらちらと見える、不思議な色をしていた。ごわごわとかたくて、さきっぽを触るとちくちくした。とてもへんな毛だった。

 ふとサキちゃんは、あることに気がついた。

「あっくん、寝ているときにほっぺたが痛くなったでしょ? たぶんこの毛のせいだよ。きっとこの毛の持ち主が、お年玉をどろぼうしたにちがいないよ! ねえあっくん、どろぼうを見つけて、わたしたちのだいじなお年玉を取りかえそう!」

 あっくんは、泣きそうなのをこらえてうなずいた。

「わかった、お年玉どろぼう、つかまえよう! ぼく、ぜったいにおかし買いたいもん!」 

 二人は、ほかにも毛が落ちてないか探した。

 たどっていけば、お年玉どろぼうがどこに行ったかわかるはず。

「あった!」

 おもちゃのたなで、あっくんが毛を見つけた。ついでに、たなから落っこちそうになっているおもちゃのカゴも見つけた。カゴをもどそうとして、あっくんは目を丸くした。

「ああっ、ぼくのけん玉がないよ!」

 サキちゃんも、ままごとが床にひっくりかえっているのを見つけた。ままごとのハンバーグやケーキにまざって毛も落ちてた。サキちゃんも目を丸くした。

「ああっ、わたしの目玉やきもなくなってるよ!」

「おねえちゃん、こっちきて!」。

 こんどは、押し入れの前であっくんが呼んだ。

 押し入れの戸が少し開いたままになっていて、戸にも毛がくっついてる。

 サキちゃんは小さい声で、

「あっくん、もしかしたら押し入れの中に、どろぼうがかくれてるかもしれないよ」

「もし、どろぼうがいたらつかまえようね」

 ごくりとつばを飲みこんで、二人いっしょにいきおいよく戸を開けた。

 でも、だれもいなかった。

 それどころか、押し入れに入ってた二人の大好きなキラキラのビー玉がなくなっていたんだ。

「「お年玉も、けん玉も、目玉やきも、ビー玉も取られちゃったよう……!」」

 あれもこれも取られてしまって、二人がショックで立ちつくしていると、


 ととっと、ととっと、ととっと、とととととと……


 足もとの一階から、あの足音が聞こえてきた。

 どろぼうは一階にいたんだ!

 二人は子ども部屋のドアをあけると、階段をおそるおそるのぞいた。

 夜中のくらい階段の下は、まるでどこまでもどこまでも続く、まっくらやみの黒い海のよう。

 二人ともどろぼうはつかまえたかったけど、くらい一階がすごく怖かった。だから階段を降りていくなんて、とてもできなかったんだ。

 困ったサキちゃんは、いいことを思いついた。

「あっくん、どろぼうをおびきよせよう」

 サキちゃんは子ども部屋からおもちゃのお金をもってきた。それから封筒とえんぴつも。

 封筒の中におもちゃのお金をいれて、封をして、表に「お年玉」と書くと……

「にせもののお年玉、できあがり! どろぼうは、きっとこれをとりにくるにちがいないよ!」

「おねえちゃん、すごい! でも、どこにおくの?」

「階段の下がいいよ。あっくん、おいてきてよ」

「や、やだよぉ、ぼくだってこわいもん!」

 困ったあっくんは、いいことを思いついた。

 あっくんはおもちゃの野球バットと、なわとびのなわと、ガムテープをもってきた。

 バットの先に、なわとびの持ち手をガムテープでぐるぐるくっつけた。もう一つの持ち手には、にせもののお年玉をくっつけて、

「これで、魚つりみたいにすればいいよ」

 サキちゃんがバットの釣りざおをにぎって、あっくんがにせもののお年玉を階段の下へほうった。にせもののお年玉は、くらやみの中に飛びこんで見えなくなった。

 しばらくそのままで待っていると、ぐい、ぐいぐい、とバットの釣りざおがひっぱられた。

「「どろぼうだ!」」

「引き上げるよ、あっくん、てつだって!」

 二人は立ち上がって、力いっぱい引っぱった。

「「そーれ! そーれ! それー!!」」

「にゃあごおおおおう!」 

 ガラガラした鳴き声といっしょに、ぽーん! とくらやみから飛び出てきたのは、あの毛と同じ色のとても大きな猫だった。

 猫はあっくんほども大きくて、体じゅうの毛はひどくぼさぼさだった。

 なにやら背中には箱をのせていて、とても長いしっぽがその箱を支えている。よくよく見ると、しっぽは、なんと二本もあった!

「「ば、化け猫だあ!」」

「オレサマをだましたなあ、シャーッ!」

 化け猫は怒って、ギラギラとした目で二人をにらんだ。

「おねえちゃん、みて!」

 あっくんが指さしたのは、化け猫の背中の箱だ。箱にはきらきらと立派な飾りがついていた。けれども、物がぎゅうぎゅうに押しこまれ、中身があふれそうだった。

「あれ、ぼくたちのお年玉だよ!」

 箱のふたのすき間から、水色と黄色のお年玉袋がのぞいてる。

 やっぱりまちがいない。お年玉どろぼうは、この化け猫だったんだ!

 ほんとうに怖かったけど、二人は勇気を出して言った。

「わたしたちのお年玉かえして!」

「おもちゃもかえして!」

「へん、やなこったい! おまえたちのお年玉もおもちゃも、この化け猫のタマさまのすばらしいお宝コレクションにいれてやったんだからな。ありがたく思え!」

 あやまるどころか、タマはえらそうにいばって胸をそらした。

 二人は、タマの勝手な言葉にカチンときた。

「タマのじゃない、わたしたちのものだよ!」

「そうだよ、ぼくたちのだよ!」

 言いかえしていたら、どんどん強い気持ちになって、二人はもっと大きな声で、

「「かえせったらかえせ~!!」」

「いやだったらいやだい! シャーッ!」

 タマの目がもっとつりあがり、前足からはするどい爪がのぞいた。

 どうしよう、タマはかえしてくれそうにない。

 でも、大切なお年玉とおもちゃだ。絶対に取りかえさなくちゃ! 

 サキちゃんは一生けんめい考えた。そして、またまたいい考えを思いついたんだ。

 あっくんにひそひそなにかを話したあと、タマに言った。

「わかった。じゃあ、箱の中のタマのお宝コレクションをぜんぶ見せてくれたら、あきらめてもいいよ。だってすばらしいお宝なんでしょ?」

 タマはフン! と鼻を鳴らした。

 こんな人間どもの言うこと、しらんぷりすればいい! と思った。けれどタマは、自分のお宝を見せびらかして、自慢したくなっちゃったんだ。

「それじゃあ特別に見せてやろう。世界中の玉と名前がつくものは、オレサマがぜんぶちょうだいしているのだ。まずこの箱は、竜宮城の亀から猫ババ……おっと、ちょうだいした()手箱だ、どうだすごいだろう! ほかにもいっぱいあるんだぞ。

お年()にけん()、ままごとの目()焼きに、こんなキラキラのビー()だ!

まだまだあるぞ。お手()、水()もようの服、商店街の福引の()、おめでとうのくす()、運動会の()入れセット、竜の目()に、お墓で集めた火の()だ!」

 サキちゃんはあっくんに目くばせすると、タマに質問した。

「この中で、一番すごいお宝はどれ?」

「へへん、そいつは竜の目玉だな」

 まってましたとばかり、タマは話しだした。とても自慢したかったんだ。

「これはな、()()()()オレサマが遠い海の向こうで竜に会ったときのことだ、あのときは本当に()()げたんだが……」

 タマが夢中で話しはじめたとき、あっくんがそろりと玉手箱の中のお年玉に手を伸ばした。

 そう、この隙に取りかえそうというサキちゃんの作戦だ。

 ところが、もう少しでお年玉に手が届こうとしたとき、タマが気づいてしまった。

 タマは怒って、二人にせまった。

「シャーッ! おまえたち、オレサマをだまそうとしたな! オレサマの大切なお宝コレクションになにするんだ!」

「「タマのものじゃないよ!」」

 二人は口をそろえて言いかえした。

 タマは二人をにらみつけながら、しっぽをしゅるしゅると動かした。玉手箱を守ろうと、しっぽで玉手箱を持ち上げようとした、そのとき、

「ない、ないない、ないっ、玉手箱がない!」

 タマがびっくりしてさけんだ。

 さっきまでそこにあった玉手箱が、とつぜん、なくなってしまったんだ。

 サキちゃんもあっくんもおどろいて、あたりを見回した。

 玉手箱は一瞬のうちに、消えてなくなっていた。

「あ、あそこ!」

 サキちゃんは、玉手箱がゆさゆさと階段をおりていくのを目にとめた。

 よく見ると玉手箱は、階段の幅いっぱいの、大きな亀の背中にのっかっていた。

 その大亀がタマのほうを振りむくと、雷のようにひびく低い声で言った。

「化け猫め! よくも玉手箱をぬすんだなあ。これはわしのものだ。かえしてもらおう!」

 大亀は、一階のくらやみの中へ、どぷんと沈んでいった。

 おどろいたタマは、あわてて亀を追いかけた。

「ま、まてー! オレサマのお宝コレクション!」

 サキちゃんとあっくんも、くらがりが怖いことも忘れて、あわてて追いかけた。

「たいへん! もっていかれちゃう!」

 背中に乗せた大亀の玉手箱が、くらやみの中でぼんやりと光っている。

 大亀は、廊下のくらやみをまるで海の中を行くように、上へ下へとすいすいと泳いで玄関へ向かった。

 タマは大亀に何度も飛びつこうとしたけれど、大亀はそのたびにするりとかわして、あっというまに外へ出た。

 タマもサキちゃんとあっくんも、走って外に出た。

 大亀は夜の空へと上がろうとしていた。

「オレサマのお宝コレクション、もっていくなあ!」

 タマは逃げられてたまるかとジャンプして、なんとか玉手箱にくらいついた。

 けれども大亀の背中に乗った玉手箱は、甲羅にぴたりと張りついていた。タマが剥がそうとして、どんなにひっぱってもぶらさがっても、びくともしなかった。

 サキちゃんとあっくんもハラハラしながら、大亀に向かって力いっぱいさけんだ。

「「おねがい! お年玉とおもちゃ、もっていかないで!!」」

 大亀は体を右に左にと大きくゆらして、タマを振り落とした。それからぐるんと大きな宙がえりをすると、夜空の中をゆうゆうと泳いで帰っていった。




 地面にがっくりと座りこんだタマは、悲しくなって、おいおいと泣き出した。

「わあん、オレサマが集めたお宝コレクションが、ぜんぶなくなっちゃったよう」

 盗んだものばかりで、タマのものではないけれど、タマは気に入って大切にしてたんだ。

 タマは、自分が大切にしていたものが取られてしまうと、こんなにも悲しいんだ、とはじめて知ったんだ。

 そのとき、夜空からお宝コレクションが、まるで海のなかのクラゲのように、つぎからつぎにゆらゆら落ちてきた。

 大亀は宙がえりをして、お宝を落としてくれたんだ。

 しゅんとして座っていたタマは、しっぽをしゅるしゅると伸ばすと、サキちゃんとあっくんのお年玉とおもちゃをかき集めた。

「これ、かえしてやる。もうどろぼうは、やめだ。他のものも、みんなにかえしてやる」

 二人はぶじに帰ってきたお年玉とおもちゃを手にして、ほうっとした。

 タマは今までぬすんだ物を全部集めると、立ち上がろうとした。けれどもそのとき、タマのおなかから大きな音が、ぐぐうっと鳴った。

「わあん、おなかがすいて、これじゃあ竜のとこまでいけやしないよぉ」

と、タマはへなへなと座ってしまった。

「「もう、しかたないなあ!」」

 二人は、化け猫が人間の食べものがだいじょうぶかわからなかったけど、頭をひねって考えた。

 タマが好きそうな、名前に玉がつく食べものって、なんだろうね?(※)

 こんなのは、どうかな。

 サキちゃんが、キッチンのおせちの重箱から持ってきたのは……

「はい、玉子焼き」

 あっくんはおかしの棚から……

「はい、アメ玉」

 タマが食べてみると、そのおいしいことおいしいこと! 口の中もおなかの中もウハウハと楽しくなった。

「ああ、うまいうまい! こんなにうまい()があるなんて! こんないい気分になったのは、はじめてだ!」

 タマがうれしくなって体を大きくブルンとふるわせたとき、とてもびっくりすることがおきた。

 体じゅうのボサボサの毛はつやつやに、さびた十円玉のようなこげ茶色は、きれいな緑と紫色になったんだ。

「にゃおおおおうん!」

 タマはうれしそうにひとなきした。

 そして盗んだものをしっぽでかかえると、高く飛びはねた。

 空のてっぺんにある満月が、タマの毛をきらりと照らした。

 タマはそのまま、夜のくらやみに消えていったんだ。




 さあそれから、サキちゃんとあっくんがどうしたかというと。

 本当はひきだしにしまったほうがいいのかもしれないけど……

 大切な大切なお年玉をしっかりにぎりしめて、ふとんにもぐり、ぐっすり眠ったよ。

 二人は、お年玉でなにを買うのかな? それとも、とっておくのかな? 

 とっても、たのしみだね。





 おしまい








※ タマの好きな食べ物クイズの答え

めだまやき、たまごやき、たまご、きんしたまご、うずらたまご、にらたま、かにたま

玉ねぎ、えだまめ、玉コンニャク、あめ玉、白玉、揚げ玉、たまりじょうゆ、豚玉、味噌玉 などなど



お読みくださり、どうもありがとうございました。

「お年玉どろぼう」いかがでしたか?


この作品は……

※子ども向け作品のため、シンプルな表現になっています。

※なろうの読者(大人)のため、読みやすさを考慮し、漢字を使っています。


下の子猫のバナーから、作者の他作品へのリンクがあります。

童話をはじめ多ジャンル書いていますので、

もしよかったらのぞいてみてくださいね(^^)

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― 新着の感想 ―
楽しく読ませていただきました。 途中から、次はどう展開するのだろか、次は次はと、想像しながら読み進めました。 私の想像をはるかに超えたとても楽しいストーリーでした。 子供読者も喜んでくれると思います。…
子ども目線はワクワク、大人目線はかわいらしい、そんな素敵なお話! お年玉が大事なのはみんな同じですものね。一緒に探して追いかける中で、言わなきゃをちゃんと言ったり、誰かを許したりすることを知ることがで…
 うわ~。とっても素敵なお話でした!  これは、絶対に絵本で読みたい! ……というか、拝読中に頭の中で、勝手に絵本になっていました(笑)。  それぞれの場面が、ホンワカだったり、ドキドキだったり、ワク…
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