アディオ接近
アディオは勝手に人のベッドで眠りこけ、起きた瞬間、清々しい顔でつぶやく。
「レンの隣はやはりよく眠れる…」
レヴィン「俺は寝苦しかったぞ」
アディオ「……ところで、変な虫は寄って来ないか?」
レヴィン「またそれかよ…お前さあ、俺だって恋愛くらい…」
そこまで言いかけて、レヴィンはピタリと止まる。
「ふ…っ、いないのか。なら安心だな」
アディオはそう言って、にっこり笑う。
レヴィン「う…うるせえなあーー!恋愛って一体どうやるんだよ!?彼女と女友達の境界線ってどこから!?」
アディオ「フフン…よし、レンは当分俺専用だな」
レヴィン「専用とか言うなあああ!!気持ちわりいなあーー」
「気持ち…悪いだと…!?」
アディオは地面に突っ伏し、くうっと苦しげな声を漏らす。
レヴィン「…あ、いや。気持ち悪くはないかな…うん」
アディオ「そうか…じゃあ着替えをしよう」
レヴィン「変わり身、早っ!」
アディオはさっとおしゃれなコートを羽織り、ジャラジャラとアクセを整える。
レヴィン「いや…朝からなんでそんな気合入れてんだよ…芸能人かっつーの…」
アディオ「レンに会いに来たんだ…かっこよくしないとな?」
レヴィンの顎をクイッとあげるアディオの手を、レヴィンはべしっと払い退ける。
確かにアディオはクールでかっこいい。髪も服も整っていて、目が奪われる。
レヴィン「ところで何しに来たんだ?」
アディオ「お前に会いに来たんだろう…」
レヴィン「それは分かってるけど、俺仕事だぞ…?」
アディオ「知っているが…?」
二人に静かな沈黙が流れる。
アディオ「弟子たちの稽古に俺も混ざろうと思ってな…?」
レヴィン「…お前、まさかラミア目当てに来たんじゃないだろうな…?」
アディオ「誤解だ…俺がそんなふしだらな人間に見えるか?お前の弟子に手を出すような軽薄に…まあ確かに美人だし…胸もデカいしな」
うわっ、こいつ、事前にラミアのこと調べてやがる…!
レヴィン「つ…つーかお前、ラミア口説いたりすんなよな!?ラミアは真面目なんだからな!?」
アディオ「何度も言うがお前の弟子にそんなことをするわけないだろう…?」
にこやかな胡散臭い笑顔に、レヴィンの眉間にシワが寄る。
アディオは舌が回る……彼女が絶えないのも、こういうテクニックがあるのだろうか。恋愛って、一番わからねえ…。
アディオ「レン……俺を信じろ」
肩を組み、やけに近い距離で囁く。
レヴィン「信用出来ねえ…」
再び沈黙…。
アディオ「じゃ…いくか…」
レヴィン「うわあ!?アディオと喋ってる間に着替えさせられてる!?」
気づけば、レヴィンの髪型はさりげなく決まっていて、アディオは得意げな笑顔。
「…似合ってるな…ちょっといじっただけでもすごいな…レン」
「いつの間に!?…すげぇ、俺にはできそうにないな…」
アディオ「いつでも言ってくれ…お前はそのまんまでも充分美形だが…あんまり着飾ると女が寄ってきてしまうからな…?」
レヴィン「いや…俺お前と違ってモテねえし…」
アディオは、はっと笑いを浮かべ、流すように去る。
レヴィン「な…なんなんだよ…」
少し小馬鹿にされた気分だ。
レヴィン「つーか、その服で稽古すんの…?」
武闘室に向かう道中、アディオの服装に突っ込む。
アディオ「ふ…っ!!」
上着をバサッと脱ぐと、下には動きやすい服装が整っていた。
レヴィン「あ…そういうことか…」
アディオ「そういうことだ」
武闘室にレヴィンが顔を出すと、弟子たちはすでに掃除を終え、雑談していた。
レヴィン「おお、綺麗だな!?」
アディオ「本当だな」
シモン「でしょでしょー!?」
アディオ「ああ…なかなか行き届いている」
シモンが普通に話すが、ラミアとカイルは内心で突っ込んでいた。
アディオ「ところで、この子供も弟子なのか?」
シモン「がきじゃねえっす!!15歳ッス」
アディオ「ほう…15か…」
俺より背が低いな…。
レヴィン「おいおい…いじめんなよ?」
ラミア「あ、あの…師匠、この方は?」
レヴィン「ああ、ごめん!こいつアディオで、この前話してた俺の兄弟子」
シモン「えええっ!?師匠の兄ちゃん!?」
アディオ「そうだ」
レヴィン「違うだろ…兄弟子だろ…兄じゃねぇよ」
シモンは目を丸くしてアディオを見つめる。
アディオはにやりと微笑み、さりげなくアクセを整えた。
ラミアは戸惑いながらも、何か底知れぬ存在感を感じていた。
カイル「あ…二刀流の…?」
レヴィン「そうそう…」
アディオはすっとラミアの前に立ち、手を握る。
アディオ「アディオだ…今日は稽古に参加させてもらう。突然で悪いな…俺も剣士の端くれだ、よろしく頼む」
ラミア「え…あ、はい!」
レヴィンは思わず「あちゃあ…」と額を抑える。
さすが手が早い…!!
アディオはラミアに近づき、「ラミア…この服はどこに置けばいい?」と尋ねる。
ラミア「ええっと…こちら…」
しかし次の瞬間――
レヴィン「おい!!服はこっちだ!!」
アディオはあっさりラミアから引き剥がされる。
レヴィンはぷんぷんしながらアディオを更衣室に案内する。
アディオは更衣室に入ると、静かにアクセサリーや上着を脱ぎ、整える。
レヴィン「お前なあー、ラミアに距離詰めすぎだぞ!!」
アディオ「…美人だな…スタイルもいい…セクシーだ」
レヴィンは眉をひそめる。
アディオが服を脱ぐと、鍛えられた体が服の上からでもわかる。
レヴィン「おお…前にも増して筋肉が進化してる!!」
アディオ「俺も負けてられんからな…? 追い抜かされた分、取り戻してきてるつもりだぞ…?レン」
レヴィン「ふうん…そりゃ楽しみだ!! 今度、ハンターと聖騎士の共同任務でまた一緒にコンビ組みたいなー!!」
アディオ「だろう?俺もそう思っていた」
その瞬間、弟子たちの声が武闘室から届く。
「師匠ー!まだですかー!?」
二人は顔を見合わせ、くすりと笑う。
レヴィン「改めて紹介するけど、俺の兄弟子のアディオだ。ハンターの支部の隊長で、俺とアーサーさんも一緒に任務をこなしたことがある」
アディオ「アディオだ。俺はレンとは違うタイプの剣の使い手だ。こっちの剣士はレベルが高いと聞く…お手柔らかに頼む」
やけに謙虚な自己紹介。レヴィンは心の中で、「余所行きの顔だな…」と思った。
ハンター時代のアディオは、悪魔のような奴だと噂されていた。女癖は悪く、年上も容赦なく呼び捨て、わがままで上から目線…まさにクセの塊。しかし、今は少し丸くなったようだ。
レヴィンも、かつて同じハンターとして任務をこなしていた仲間だった。
シモン「…レン…?」
レヴィン「あだ名だよ」
ラミア「そういえば、ハリスさんもレンって呼んでますね…」
レヴィン「ああ…ハンター仲間は大体レンって呼んでたかな」
アディオはラミアの肩にそっと手を置く。力は全く入っておらず、まるで「ただ触れているだけ」のような優しい感触だ。
「ラミア…俺の相手をしてくれないか?」
ラミアは驚き、目を見開く。しかしその手の柔らかさに、思わず心が落ち着く。アディオは瞬間移動でもしたかのように目の前に立ったが、威圧感はまったくない。
アディオ「ラミア…レンはどうだ? いい師匠か?」
ラミア「あ…あ、もちろんです…!」
アディオは微笑み、低い声で続ける。
「そうか…なら安心だ。だが…レンに、師匠としての感情以上を向けるなよ?」
ラミアの目が一瞬見開かれ、頬がわずかに紅く染まる。
「ど、どういう意味ですか…!」
アディオは軽く肩をすくめ、意味深な笑みを浮かべる。
ラミアの闘志は、静かに、しかし確実に燃え上がっていた。
ラミアの心中は、さっきまでの穏やかさを失っていた。
「師匠をどう思おうが私の勝手…! どういうつもりなんですか…! 試しているんですか!?」
胸の奥で、闘志が熱く燃え上がる。
互いの視線と気迫がぶつかり合い、空気が一瞬、火花を散らした。
――二人の間に、戦いにも似た火花が走ったのを、誰もが感じ取った。




