表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

師匠の背中

シモンはレヴィンに引っ付きながら、無邪気に問いかけた。

「ししょーの師匠って、いるの?」


レヴィン「いるよ」

軽快にそう答える。

素の“師匠モード”に戻ったその雰囲気に、張り詰めていた空気が一気に緩んだ。


シモン「へえー!ししょーの師匠って、どんな人なの?」


レヴィン「うーん……厳しいけど、すっげえ優しい!!

実の親父より、よっぽど父親っぽい人だな」


そう言って、レヴィンは声を上げて笑った。


シモン「えー!厳しいのに優しいって……どんな感じー?」


レヴィン「んー、指導の時はマジでおっかなくてさ。

でも、いっつも気にかけてくれてて……

怒られたことも山ほどあるけど、

『お前らの師匠になってから白髪増えたぞ』って言われたなあ」


レヴィンはポリポリと頬をかく。


ラミア「……お前ら、ですか?

師匠には、他にもお弟子さんがいたんですね」


レヴィン「ああ。もう一人な」

一瞬、間を置いてから続ける。

「アディオっていうんだけど、二刀流の剣士でさ」


シモン「に、二刀流!?すげー!!」


ラミア「その方は……聖騎士にはならなかったんですか?」


レヴィン「あー……あいつはなあ」

レヴィンは少し苦笑して、肩をすくめた。

「聖騎士になれるタイプじゃねえな」


アディオの性格を思い浮かべたのだろう、その笑みにはどこか含みがある。


シモン「どんな人ー!?」


レヴィン「たまに来るよ。

まあ……多分、ラミアには優しいけど、

男にはめっちゃとっつきにくいタイプだな」


そこまで言ったところで、

休憩終了を告げるアラームが鳴り響いた。


レヴィン(心の声)

(助かった……!

女には優しいけど男には毒舌、

しかも好き嫌い激しすぎるし……

お前らに気軽に紹介できるキャラじゃねえ……マジで……)


ブブーッ、とアラームが鳴り、弟子たちは気合を入れ直す。

レヴィンもひとつ深呼吸し、竹刀を握り直した。


その日の夜。

レヴィンは裏庭で、月明かりの下、愛剣を振り続けていた。


「まだまだ……もっと……」


小さく呟くたび、汗が地面に落ちる。


すると、一角の窓がガラリと開いた。

眉をひそめたハリスが、そこに立っていた。


「レン!探したぞ!?

前回もそうだったけど、寝不足だろ!何度言えばわかるんだ!」


「う、うわっ!?」

レンは振り向いて目を見開く。

「ここなら見つからないと思ったのに……!?」


ハリスは素早く近づき、レンの肩を掴むと、そのまま強引に部屋へ連れ戻した。


「も、もうちょい……な?ハリスー」


「だめ!!寝ないと良くならないよ!?」


部屋に入るなり、散らかった服や道具が目に入り、ハリスは深いため息をつく。


「ああ、もう……服脱いだ抜け殻がまた落ちてるじゃないか!!」


「朝、急いでたからさあー」

レヴィンは軽口を叩く。


ハリスは振り向き、鋭い眼光でレンを睨んだ。


「ひえ……」

レヴィンは小さく声を漏らし、素直にソファへ座る。


通信機を手に取ると、通知がびっしり溜まっていた。


「多いなー……」


「アディオだよ」

ハリスは言いながら、洗い物まで片付け始める。

「この前、レン不足で死にかけてた」


レヴィンは通信機をちらりと見ただけで、まとめてぽいっと放り投げた。


「返してあげなよ……。

レンから『頑張れよー』の一言でも来たら、一気に元気になるんだから」


「えー……メンドクセー。

昨日も電話したし……」


レヴィンは頭をかきながら、ぶつぶつ言う。


「アディオのやつ、俺の彼女かっつーの!!変な女いなかったか?浮気してなかったか?って、毎回うるせーんだよなあ……ったくさー彼女なんかできねえっっつーの!!」


「相変わらずだね……アディオも……」

(アディオはレン至上主義だからなあ...)


ハリスは呆れたように、でもどこか慣れた様子で呟いた。


レヴィンの声が途絶えたと思ったら、いつの間にか爆睡していた。

ハリスはため息をひとつつき、そっと布団をかけ直す。

「はあ…こう見てると、メンタルケアなんか一番必要なさそうなのになあ…」


静かな寝息が室内に響く。

それを見守るハリスの視線には、少しだけ微笑みが浮かんでいた。


ーー

アルデラ王国に、どうにも似つかわしくない男が突如として現れていた。

洗練された服装に、ジャラジャラと揺れる装飾品。

黒髪を左右に遊ばせ、場違いなほど上機嫌な様子で歩き進める。


レヴィンが目を覚ますと、すぐ隣に誰かの気配があった。


「……ん?」


寝ぼけ眼のまま視線を向けると、そこには見慣れた顔がある。


「……なにしてんの、アディオ....お前……」


アディオは、まるで夢の中の人形みたいに、無防備な顔で眠っていた。


レヴィンは思わず、アディオの肩をゆさゆさと揺する。


「おい……!」


「う……?うお....!!おお……!!!」


あまりの激しい揺さぶりに、身じろぎして、アディオが目を半分だけ開く。


「おは……おはよう、レン……」


くしゃり、と柔らかく笑ったその顔は、

まるで背中に花でも背負っているみたいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ