黒く染まった川②
ゴトッ…
何かがレヴィンに当たり、馬車内の4人にいやーな予感が走った。
それは床に転がり落ちた。
「……え?」
タイオンとノアは顔を見合わせ、嫌な予感を噛みしめる。
「うわあああああ!?」
タイオンとノアが思わず声を上げた!
「え!? なになに!?」
レヴィンは目を丸くするが、馬車を走らせているため振り向けない!
「レンが何かやると思ったんだよおおー!」
「勘弁してーっ!!」
完全にパニック状態二人。
床に転がっていたのは――蜂の巣だった!!!
レヴィン「え!? え!? 何が!? 何で!?」
馬車を走らせながら、振り向けずに慌てふためくレヴィン。
車内は絶叫と羽音で包まれ、まるで小さな嵐のようだ。
蜂の大群が馬車の周囲をブンブン飛び回る。
羽音は耳をつんざくように響き、車内の若手たちは悲鳴を上げ、逃げ惑う――大混乱だ。
「うわっ、来るなー!外いけー!」
そんな中、アーサーは腕を組み、微動だにせず目を瞑っていた。
羽音も騒ぎも、まるで自分には関係ないかのようだ。
「私は師匠を助けに参ります!」
ラミアは手綱を握り、揺れる馬車の外へ駆け出す。
「参らないでー!!」
タイオンは慌ててラミアを止めようと手を伸ばすが、もう遅い。
その瞬間、外に出たレヴィンにも蜂が襲いかかる!!
「うわあー!白馬を刺すなあ!」
レヴィンは必死に白馬を庇う。
白馬も慌てふためき、思わず馬車は緊急停止した。
「ふむ…止まったか…では退治するかのう」
アーサーはゆっくり目を開け、片目が腫れかけているのをちらりと見せた。
「だあああ!? 落ち着いてたんじゃなくて刺されてたのかよおー」
ノアは驚きの声を上げる。
「片目が痛かったんじゃ…腫れてくのが怖かったんじゃ…」
アーサーは淡々と答える。
「わわわ!! 剣で切り落とすんですか!?」
タイオンは慌てふためき、目を見開いた。
だが、相手は蜂――動きは早く、予測不能だ。
「承知しました!!」
ラミアは剣を抜き放つと同時に、目にも止まらぬ速さで蜂たちが「ボトボト」と落ちていく。
「えええええ!?出来んのかよおおお!?」
ノアは息を呑む。
「す、すごい…」
タイオンも思わず呟いた。
アーサーがドンッ!!!と剣を一振りすると、馬車内の蜂が大方消滅した。
「へ…何が起きたの…」
タイオンは呆然と息を呑む。
「化け物だらけだ…」
ノアも驚きを隠せない。
「わー!! 白馬ー!! んにゃろ!!」
ズドンッッッ!!!
レヴィンは手から波動を放つ――!!
だが勢い余って、ノアとタイオンまで吹っ飛ばしてしまう。
「うわああああああ!?」
タイオンとノアは、まるで紙のように吹っ飛び、悲鳴をあげる――!!
だが、ラミアはまるで予測済みかのように、軽々と2人をキャッチしてみせた。
「ご....ごめん、2人とも!! ラミア、サンキュー!!」
レヴィンは慌てて駆け寄り、着地した2人を抱えるラミアのもとへ。
「サンキューじゃねえー!! 俺たちまで飛ばすなあ!?」
ノアはプルプルと身を震わせ、堪えきれず顔を真っ赤にして抗議する。
「ひいい…」
タイオンは顔をしかめ、思わず身を縮める。
「2人とも、あれくらいで飛ぶんじゃない!! 踏ん張りが足りんぞ」
アーサーは淡々と、しかし厳しく言い放つ。
「普通はできねえです!!」
ノアはもう完全に笑うしかない状態。
――蜂被害は最小限に収まったものの、アーサー、タイオン、ノアは数箇所刺されていた。
ラミア「こんなこともあろうかと、薬をご用意してあります!!」
サッと薬を取り出すラミアに、一同はもう何が出てきても驚かないと察する。
馬車を停め、ラミアに軟膏を塗ってもらう3人。
レヴィン「ごめんってー、わざとじゃないんだって」
恨めしそうに睨むノアに、眉を下げて懇願する。
アーサー「まあ良いではないか……こういうトラブルは任務にはつきものじゃ」
流石の懐の広さを垣間見せるアーサー。
ようやく許してもらい、馬車内にはいつも通りの空気が戻った。
レヴィンは白馬を撫でながら、水を与える。
ラミア「この辺の下流はどうなっているんでしょうね…」
タイオン「黒く染まったって言ってたし、黒いのかな……やっぱり」
レヴィン「少し見てくるよ! 白馬と一緒に」
「あ…」
ラミアは言いかけたが、レヴィンは答えを待たずに白馬に跨り、行ってしまう。
ノア「あいつぅ――また単独で」
アーサー「まあ大丈夫じゃろ…レヴィンじゃし」
ラミア「戻らなかったら私が様子を見に行きますよ」
どっちが師匠なんだか、と顔を見合わせるタイオンとノア。
――――
川にたどり着くと、綺麗な澄み切った水が穏やかに流れていた。
飲みそうになる白馬を慌てて止め、レヴィンは手で水をすくって見る。
一見、普通に見える水面――。
レヴィン「なんか上流で起きてるのかなあ……?」
川を見上げるも、目視できる範囲には澄んだ水しか見えなかった。
レヴィンは白馬と共に戻り、異常はなかったと報告する。
ラミア「そうですか……でも、何か起きているようですね」
アーサー「うむ……異能力かのう? はたまた汚染物質を流しているものでもおるのかもしれんのう……」
ノア「どっちにしても、黒いってのはただ事じゃねえよな」
タイオン「そうだよね……」
レヴィンは少し考え込み、眉間にシワを寄せながら仮説を立てる。
レヴィン「異能者じゃないとしたら……自然現象の可能性としては――上流の鉱石や泥、鉄分や硫黄系の成分が流れ込むことで、水が黒く見える場合があるかな……あるいは川底に生息する特殊な藻や微生物が大量発生して、こうして色が変わることも考えられる。流れ込む鉱泉の成分によって黒っぽく変色するケースもあるよな……」
ラミア「そうですね……さすが師匠です」
ノアとタイオンは思わずポカンと口を開ける。
ノア「なんだお前、賢かったのか……」
タイオン「すごいね……レン」
その少し失礼な言い回しに、ラミアは小さくムッとする。
ラミア「……ちょっと、言い方が失礼ですよ?」
アーサーは腕を組み、落ち着いた声で説明する。
アーサー「ノアよ、レヴィンは頭脳派じゃぞ。普段は天然で抜けておるが、こういう時は理知的に考える者なのじゃ」
ノア「あ、そういうことか……」
タイオン「なるほど、納得……」
アーサーは手網を持ち、安全に出発した。
ノア「思ったんだけど……お前さ、あんなに可愛がってんのに、馬って呼んでるの?」
レヴィン「え……? そうだけど……なんで!?」
タイオン「そんなに愛着あるなら、名前付けてあげようよ!!」
ラミア「いいですね……付けて差し上げましょう!!」
ラミアも手をパンと叩き、賛同する。
ノア「で、名前の候補はないのか? レン」
レヴィン「ええ……白くて綺麗だから……」
3人がドキドキと期待の眼差しでレヴィンを見る。
レヴィン「しろひめ!!」
ガクッ……と、拍子抜けしたように3人が揃って肩を落とす。
ノア「ダメだ……ネーミングセンスなさすぎ」
レヴィン「なんだよお!? じゃあノアが考えてみろよお!!」
ぷんすか怒るレヴィンに、ノアはふん、と鼻を鳴らす。
ノア「ホワイティア・フロスティア・オブ・スノウブラン・ホワイトフィールド!! どうだ!? かっこいいだろ」
レヴィン「長あああ!?」
ラミア「ノア様も、師匠に負けず劣らずセンスがないですね」
タイオン(珍しくレンをディスってる……!?)
レヴィン「タイオンは!?」
タイオン「ええ……プリンセスホースとか……!?」
ノア「却下」
ラミア「ダメです」
タイオンはガーンッ……とショックを受ける!!
レヴィン「アーサーさんに付けてもらおうぜ!! かっこいい渋い名前つけてくれるよ!!」
渋い……突っ込もうか迷ったが、もうレヴィンは聞きに行ってしまっている。
アーサー「ううむ……白いからのう……」
アーサー「白雷丸!!!とかどうじゃ!!」
レヴィン「か…かっけええ……」
レヴィンはすっかり気に入ってしまった!!
ノア「ダメだろ!? メスだぞ!? もっと長くて呼びがいのある名前がいいだろ!?」
タイオン「プリンセスホースでいいよお」
レヴィン「ええ……しろひめでいいじゃん」
すると、ラミアがテーブルをバアンッと叩いた!!
ラミア「白馬ちゃんは女の子です!! 女の私が決めます!! 異議ありますか!?」
ラミアの迫力に、誰もが逆らえず首を横に振った。
読んでくださり、ありがとうございます!!( ´꒳` )
今回は登場人物も多く、会話がたくさんの回になりましたが、楽しんでいただけましたでしょうか…?
ところで皆さん、白馬ちゃんの名前候補、何か思いつきますか??
もしありましたら、コメントや感想でぜひ教えてくださいねー♪




