繋がれた18歳の今
玉座の間に行くと、団長を筆頭に聖騎士たちが列を作って待っていた。
レヴィン「やっべ…!? 遅刻っすか…!?」
思わず足をバタバタさせる。
団長「ふ…違う。さっさと列に…お前らはこっちだ。」
レヴィンはタイオンとノアと共に左から並ばされた。
ベテラン勢たちは、少し寂しそうな顔をしている。
レヴィン「へ…?」
タイオンとノアは、なにやら事情を知っているらしい目で見ている。
団長「お前はまだ子供だからな…」
レヴィン「え…? じゃあなんで俺が端っこに!?」
思わず手で自分の位置を指す。
団長「年齢順だ」
レヴィン「あ!! 並び方変えたんですね!! 席替えみたいな!? それとも俺が王様の真ん前だったから嫌がられた!?」
肩を上下させて焦る。
団長はふ…っと笑った。
若手の1人がぽつり。「学校じゃないんだから…」
団長「それもあるかもな」
レヴィン「ええーっ!?」
団長「嘘だ」
レヴィン「えええええっ!?」
体ごと後ろにのけぞる。
そのとき、王様が堂々と登場した。
レヴィン「王様!! 俺、今日から端っこになりました!!」
手をブンブン振り回してアピールする。
王様「わかっている…少し離れたから清々したわい」
レヴィン「やっぱ王様が決めたんですか!?」
王様「全く離れたらもっと騒がしいのう…」
団長「全くですね」
王様はこほん、と咳払いをする。
「突然じゃが…副団長は異動になった。前から決まっていたことじゃ…
新しく副団長を決めたいのじゃが…」
団長がゆっくりと前に出る。
「王様、候補はお決まりでしょうか…?」
王様「うむ…今回は若くして実力を見せておる、アーサーを任命したいと思う」
アーサー「え…!? わしですか…!?」
若手側から小さなどよめきが上がる。
レヴィンも目を丸くした。「え、アーサーさん…!?」
思わず口が半開きになる。
王様「うむ。若いが、信頼できる腕と覚悟がある。お主なら若手も守りつつ、統率もできるじゃろう」
アーサーは少し照れながらも胸を張った。「…わしに務まるなら光栄です。責任を持って務めます」
王様「では副団長アーサー、よろしく頼むぞ」
アーサー「はい…全力を尽くします!」
ベテラン勢も若手側も、静かにだが納得した顔で頷く。
副団長席の空白が、ようやく新しい力で満たされた瞬間だった。
若手側は嬉しそうに拍手し、レヴィンも目を輝かせて拳を握る。「すげぇぇー、アーサーさん!!!」
ベテラン勢はにこりと微笑み、ひそひそ話す。「やっと安心できるな」
アーサーは少し赤くなりながらも深くお辞儀。「ありがとうございます…皆の期待に応えます」
団長「ふむ…これで王国の未来も少しは安泰か…」
王様「そうじゃな。これで若手もベテランも互いに支え合うことじゃろう」
場内には穏やかで温かい空気が流れる。
レヴィンは小さく拳を握り、「俺、アーサーさんについていく…!!」と心に誓った。
ーーー
レヴィンは、若手のグループに混ざるよう命じられたものの、相手になる者がおらず、仕方なく一人で素振りを始めた。
普段からアーサーと行動を共にしていたため、手持ちぶたさのような少し寂しい気持ちになる。
「今頃アーサーさんは手続きやらで忙しいのかな…」
レヴィンは芝生の上で膝を抱え込む。
すると、コツッと頭に何かが当たった。
顔を上げると、タイオンが見下ろしながら飲み物を差し出してくれていた。
その後ろにはノアの姿もある。
レヴィン「あ……サンキュ…」
タイオン「隣、いいかな?」
レヴィン「ああ、いいよ」
ノアはレヴィンの左隣に膝を折って座る。
二人に挟まれる形になった。
「寂しそうじゃん」
ややつっけんどんな物言いで、ノアが声をかけてくる。
レヴィン「あー、そうなんだよ…アーサーさんいなくて寂しくてさあー。構ってくれよお」
思いの外素直に答えるレヴィンに、ノアは面食らったように目を見開く。
タイオン「教えてよ、剣の振り方」
期待に胸を膨らませるように手を前に出すタイオン。
レヴィン「おお…俺でいいなら」
そう言って、にこりと笑いながら手を差し出す。
ーーー
ノアとタイオンは、わずか30分ほど手合わせしただけで息が切れ、尻餅をついて芝生に寝転んでしまった。
レヴィン「えー、もうばてたのかよお!」
タイオン「やっぱすごいね…レヴィンは」
ノア「化け物だっつーの。本当に同い年かよ」
レヴィン「あ…そういや18歳か、俺ら…でも俺が一番誕生日早いからな」
並び順で自覚したレヴィンは、少し得意げに胸を張り、にやりと笑った。
ノア「知ってたか? 俺たち三人だけなんだってさ、十八歳なの」
レヴィン「えっ! そうなんだ!?」
タイオン「あー……言われてみれば、確かにそうかも」
ノア「周り、年上ばっかだもんな」
レヴィン「はは……確かに」
タイオン「でもさ、不思議だよね」
レヴィン「ん?」
タイオン「レヴィンだけ、年齢不詳なんだよ」
ノア「わかる。年上に見える時もあるし、逆にめちゃくちゃ子供の時もある」
レヴィン「なんだそれ……」
ノア「褒めてんだよ。多分」
タイオン「多分ね」
三人は顔を見合わせて笑った。
レヴィンは少しだけ肩の力を抜き、空を見上げる。
さっきまで胸を締めつけていた重さが、ほんの少しだけ軽くなっていた。
ノア「なあ……レヴィン」
レヴィン「んー?」
ノア「お前の名前、呼びにくいんだよ」
タイオン「そうそう」
気づけば、左右からじわじわと距離を詰められていた。
タイオン「だからさ……」
ノア「なあ? せっかく同い年だし」
レヴィン「?」
「――レンって呼んでいい?」
二人の声が、ぴたりと重なる。
レヴィン「いいよ」
ノア「よしっ」
タイオン「……言うの、ちょっと緊張した」
レヴィン「緊張……? なんで?」
タイオンは少し視線を逸らして、肩をすくめる。
タイオン「いやさ……レヴィンって、ちょっと遠い存在だったし」
ノア「同い年ってのもあってな」
タイオン「なんつーか……勝手にコンプレックス感じてたっていうか……」
レヴィン「……タイオンもそんなこと言ってたな?」
ノアは苦笑して頭をかく。
ノア「まあ……あんだけ強けりゃな」
ノア「俺たちとは、別格って感じするし」
レヴィン「……そういうもんか」
レヴィンはそう呟きながら、少しだけ考え込む。
自分が“遠い存在”だなんて、思ったこともなかった。
レヴィン「……でもさ」
二人が顔を向ける。
レヴィン「俺は、普通に一緒にいられるのが嬉しいだけなんだけどな」
一瞬の沈黙のあと、
タイオン「……それが一番ズルいわ」
ノア「無自覚で言うな」
レヴィンは困ったように笑うだけだった。
ノア「昼飯、ラーメンでもいかね」
レヴィン「いくいくーー!」
タイオン「いいねー、行こう!」
三人は笑いながら、そのまま店へ向かって歩き出した。




