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トラウマ②

ーー執務室


団長は副団長を呼び、依頼を頼んだ。

副団長は思わず眉を顰める。

「ここですか…?」


団長「ああ…まあ、誰かを連れて行っても構わんが…今日は書類が溜まってしまっているので、私は出来んのだ…」


副団長「かしこまりました」


団長はふっと微笑む。

副団長「な、何か…?」


団長「すまない…またレヴィンがかけていて…どうしてあいつはいつもあんなに慌ただしいんだ…? 全く、愛想だけは良い奴だな…」


柔らかく笑う団長を見て、副団長のこめかみに再び青筋が浮かんだ。


副団長はハッとして、悪い笑みを浮かべた。


そしてタイオンとレヴィンを直々に呼びつける。


タイオン「な…なんですか…?」

(注意かな…それとも無茶な依頼…!?)


副団長「君たちに、折り入って頼みたい依頼がある。」


タイオンは心の中で「来た…!!」と目をぎゅっと閉じた。


副団長「これなんだが……」

そう言って差し出されたのは、《依頼書》と記された一枚の書類だった。


タイオンとレヴィンは顔を寄せ、そこに書かれた内容を覗き込む。


――――――――――

場所:アルデラ砂漠地帯

内容:砂漠地下周辺に生息する毒性生物の殲滅

――――――――――


タイオン「……砂漠、地下……?」

思わず声が低くなる。


副団長はその反応を見て、満足そうに口角をわずかに上げた。


副団長「若手の訓練には、ちょうどいいだろう?」


その言葉に、タイオンの胸の奥がひやりと冷える。

――訓練、というには条件が悪すぎる。


レヴィンは依頼書を手に取り、眉を寄せながら突っ込む。


レヴィン「これ……俺たちだけでやるんですか……?まず解毒薬も必要ですし、サーチ用の道具か異能者もいないと。それに、殲滅って……一体何をもって殲滅と判断するんですか?」


副団長の表情が一瞬こわばる。



副団長「!!!!」

言葉が出ず、拳を軽く握りしめる副団長。

その目に、一瞬の動揺が走ったのを、レヴィンは見逃さなかった。


レヴィンは依頼書を副団長に向けたまま、鋭い目で見据える。


レヴィン「これ……本当は、副団長がやるべき内容じゃないんですか……?」


タイオンは目を見開き、一瞬息をのむ。


副団長の顔がピクッと強張る。

(このクソガキ……!!)

拳が軽く震え、内心の苛立ちがにじみ出る。


副団長は口元を引き攣らせ、ぎこちなく言った。


副団長「いやあ……レヴィン、お前になら任せられると思ってね……?」


レヴィンは眉を少しひそめつつも、表情を変えずに副団長を見つめる。

さすがに実戦慣れしているだけあって、緊張せず落ち着いている。


さらに表情を冷たくし、副団長にゆっくりと近付いた。


レヴィン「やらねーよ。こんな依頼……」


言い捨てると、そのままタイオンに振り向き、にっこり手を差し出す。


レヴィン「行こーぜ」


タイオンは一瞬目を見開いたが、すぐにその手を握り返し、迷わずレヴィンの後ろに続いた。


副団長は思わず言葉を失い、書類を握りしめたまま立ち尽くす。


副団長の目がギラリと光る。

副団長(あんんんのクソガキいいいいいい……!!!)



ーーー


団長はタイオンが一人になったのを見計らい、書類を勢いよく投げつけた。


副団長「行け!!! お前一人で行け!!!」


タイオンは書類を受け止め、震える声で答える。

タイオン「ひ…無理です…」


副団長の目が鋭く光る。

副団長「俺に逆らうな!!! 団長に報告されたいのか!!!」


胸がぎゅっと締め付けられる。

尊敬する団長に失望されたくない――その思いだけで、タイオンは泣く泣く返事をする。


タイオン「は、はい…行かせてください…」


書類を抱え、足取り重く、砂漠への依頼へ向かうタイオン。


ーーー


そのことを知らず、聖騎士たちは夕食の時刻を迎えていた。


副団長(む…音をあげて帰って来ると思っていたんだが…あいつ、まだか…?)


「レヴィン…タイオン知らねえ?」タイオンと仲の良いノアがそう尋ねる。

レヴィン「え…!? 知らないけど…」


風呂上がりのホカホカした体で歩いていたレヴィンは、眉をひそめる。


ノア「なんか夕食呼びに行ってもいなくてさ…」

レヴィン「え…?」

「もしかして…あいつ、実家に帰ったのかな」

「副団長に無理な依頼回されるって言ってて…レヴィン、一緒に探してくれよ」


その言葉に、レヴィンは突然立ち上がり、副団長のもとへ駆け出した。


レヴィン「おい!!!」


目を見開く団長と副団長。

団長「な…なんだその口の聞き方…」


レヴィン「お前…! タイオンをあの砂漠に向かわせたのか!!!」


勢いよく副団長を掴み上げるレヴィン。


副団長「離せ…! 団長が見ている…」

レヴィン「うるせえ!!! 答えろ!!!」


すると団長がすっとレヴィンを羽交い締めにし、副団長からするりと引き離した。


レヴィン「!!!」

団長「落ち着け…何があった…」

副団長「…っ俺は悪くない…」


血管が切れそうなほど、レヴィンの怒りが体中にみなぎった。


答えない副団長を睨みつけ、レヴィンは「もういい!!」と怒鳴り放った。


クソ…ハリスに聞いて…砂漠地帯のタイオンの思考を読んで…今から助けに…!!


団長「砂漠地帯に行くのか…ならば私が行こう」

副団長「え…!? 団長自らですか…」

レヴィン「…!」


団長「砂漠地帯の依頼はお前に任せたはずだ…それをなぜ一般騎士のタイオンが向かったんだ…」

レヴィン「今日…副団長に頼まれて、俺とタイオンで行くことになったんです。でも、俺はそこでやらないって言って…」


団長「ふむ…副団長…タイオンを行かせたのか…一人でか…?」


団長の鋭い視線と重々しい声に、副団長は顔色を変え、慌てて土下座した。

副団長「す、すいませんんんん!!!」


団長「はあ…大丈夫だ。待っていろ」


レヴィン「え…?」


そのまま団長は装備を身にまとい、砂漠地帯へと向かった。


わずか30分ほどで、団長はタイオンを連れ戻ってきた。


タイオン「団長…腕が…」

団長「問題ない…」


だが右腕は紫に腫れ上がり、痛々しい姿をさらしていた。

タイオンはぐったりしているものの、息はしている。幸い、致命傷ではないが、酷い怪我であることは明らかだった。


団長「早く治癒をしてもらってくれ…私は解毒を…!」

「はいっ!」王の秘書が応じ、すぐに解毒薬が注入された。


団長は深く息をつき、荒い呼吸を整える。

その瞬間、長く手入れされた団長の髪がばっさり切られ、肩にかかる程度になっていることに気づく。


副団長はその姿に言葉を失い、唖然と立ち尽くした。


治癒の能力者が駆けつけ、手際よくタイオンの手当てを始める。

しばらくすると、タイオンがゆっくりと目を開けた。


レヴィン「タイオン!! ごめんな!? 1人で行かせて…!!」

力強く、ぎゅうっと抱き締めながら、レヴィンは涙を零す。


タイオン「な…泣いてるのか…? レヴィンのせいじゃないよ…断れなかった俺が悪いんだ」


「俺が…俺がついて行けば…こんな目に…っっ!!」

膝から崩れ落ち、顔を伏せて嗚咽するレヴィン。 



レヴィンは膝に顔を押し付けたまま、胸が激しく上下する。

小刻みに震える肩、手足の先まで力が入らず、嗚咽とともに息がうまく吸えない。

「俺が…っっっ」呟きはかすれ、震える声が空気に溶けていく。

それでも、胸の奥にある焦燥と悔しさは消えず、涙が頬を伝って落ち続けた。


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