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ダイヤの原石  作者: mrk
3/5

足が終わった…オレも終わった…

「あ〜、マジでダルいなぁ……今日、何やんの?」


いつものようにピアスぶら下げて、制服のシャツは出しっぱなし。

グラウンドに集まった陸上部員の中でも、ダイヤだけ明らかに浮いている。


「今日は300、200、100の3セット」

柊先輩の声が響く。


「300メートル? なんだそれ、中途半端じゃね?」


「バッカだな、お前…」

成瀬が苦笑いする。


「300はな、スプリントの持久力つけるんだよ。200でスピード維持、100でラストの爆発力確認。1セットでもキツいのに3セットだぞ?」


「ふーん…まあ、オレには関係ねーか。逃げ足だけで言えば、オリンピック級だしな!」


周囲は呆れ顔だが、ダイヤはどこ吹く風。

スタートラインにつくと、やっぱり異様な加速を見せた。


──1セット目・300m


最初の150mはぶっちぎり。

「速ぇ……!」

部員たちがざわつく。


だが、180mを越えたあたりから異変が起こる。


「はっ…はっ…ぐえっ……足が……っ!」


フォームが乱れ、腕もブンブン、足は完全に売り切れ。

ゴールまでたどり着いたが、もはやヨレヨレ。


「うわ……まじかよ。バテんの早すぎだろ」

「爆発力はあるけど、全然持久力ねぇな」


続く200m──前半飛ばして、またも後半ガス欠。

100mはほぼ流しで終わった。


2セット目にはいると、もう体が言うことを聞かない。


「無理……無理無理無理……足が終わった……オレも終わった……」

ダイヤはその場に倒れ込み、空を見上げた。


「ったく、勢いだけじゃ通用しねぇってことだな」

柊は腕を組み、静かに見下ろす。


「…お前、才能はある。でもな、それだけじゃ──」


──そのとき。


柊の視線がふとグラウンドの外へ向いた。


グラウンドの柵越しに、数人の高校生らしき男たちがこちらをじっと見ていた。

制服を着崩し、タバコ片手に、見るからに不良。


「……他校のヤツらか?」


「あいつら、見覚えあるな……北鳳ほくほう工業の連中か?」


柊の目が鋭くなる。

そのうちの一人が、意味深にダイヤを指差し、にやりと笑った。


──不穏な風が吹き始めていた。


「おい、ダイヤ。お前、最近どっかで喧嘩売ったか?」


「え? あー……うーん……どこだっけな?」


「お前、マジでバカだな……」


笑う成瀬の横で、ダイヤはただ天を仰いでつぶやいた。


「オレ……マジで、陸上ってやつ……ナメてたわ」



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