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ダイヤの原石  作者: mrk
2/5

陸上部、舐めてかかるな

「……ってことで、今日からダイヤがうちの陸上部に入る」


そう紹介したのは、あのときダイヤを追い詰めた先輩──ひいらぎ しゅん

2年のスプリンターで、100mの自己ベストは10秒台。部ではエース格だ。


「マジかよ、見た目バリバリのヤンキーじゃん」

「しかも、今日もピアスつけてんじゃん…てかその髪、校則違反だろ」


部員たちの視線は冷ややかだ。

だが、柊だけはにやりと笑っていた。


「走りゃわかるよ、こいつのヤバさは」


その言葉通り、ダイヤは最初の50mの流しから異様な加速を見せた。


「おいダイヤ、お前100m計ってみろ」

「へいへい、計ればいいんだろ」


校庭の脇にあるボロい電光計測機を使い、ダイヤはスタートラインに立つ。

ピッチもフォームも我流だ。ただ全力で前に進む。


──ゴォン!


スタート音とともに地を蹴るダイヤ。

その背中に、部員たちは目を見張った。


「なんだあの加速……!」

「まじで素人かよ…?」


──タイム:11秒20


静まり返る空気。

まだ入部初日、ストリート育ちの素人が叩き出した記録。


「マジかよ、あいつ……」

「高校一年で…しかもノースパイクでこれはヤバすぎる」


だが、本人はケロリとしていた。


「へへっ、別に全力じゃねーし」


その態度に、ある男が近づいた。

短髪で笑顔が爽やかな中距離選手──成瀬なるせ 駿太しゅんた


「なあ、お前名前は? ダイヤ? 面白ぇじゃん、俺は成瀬。中距離だけど、よろしくな」


次に現れたのは、ぽっちゃり体型だけどハードルの天才──山口 レイジ。

「逃げ足だけでこのタイムって…俺たちの仕事奪わないでくれよな、マジで」


少しずつ、ダイヤは「仲間」と呼べる存在と出会っていく。


でも──

練習が終わると、ダイヤはすぐにタバコの自販機横に直行。

制服も着崩し、昼の弁当も食わず、周囲とはあまり喋らない。


「なーんかまだ不良って感じだな、あいつ」


「でも…オレは期待してる」


柊は、ひとりグラウンドでフォームを確認するダイヤの背中を見ながら、静かにつぶやいた。


「ダイヤ、お前が本気で走ったとき──この部は変わる」


まだ始まったばかりだ。

逃げ足だけで生きてきたヤンキーが、世界の頂点を目指すなんて──誰が信じる?


けど、それがダイヤの物語の始まりだった。



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